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2005年06月14日(火) 00時00分

スカイプ 電話を変えるか新通信システム 東京新聞

 料金を考えずに、国内や海外にいる相手と、すきなだけ電話で話をする。それを可能にするのが、インターネットを使った無料通信システムのスカイプ(Skype)だ。なお使い勝手を向上させる必要はあるとはいえ、すでに小規模な企業での活用が始まり、既存の電話通信事業者はその挑戦を受けている。スカイプの現状と将来は。

 「今、話しても大丈夫ですか。実はね…」

 パソコンを前に、ヘッドセットで話す基幹系コンピューターシステム開発会社「アトリス」の安光正則社長(55)。顧客である九州の大学関係者と社内にいるスタッフ二人らで、電話会議をしているのだ。

 「文書のやりとり、同じインターネットのページを見ながら会話もでき、とても便利です」。電話会議を支えるのがスカイプ。一対一の通話もできる。

 正社員十一人と協力会社社員ら約六十人がスカイプユーザーだ。各自のパソコンが起動中かどうか、スカイプ機能で確認できる。相手が在席か不在かを判断でき、不在のために返事を待つというイライラもない。

 アトリスは昨年四月に設立された。「内線電話用の装置は数百万円もかかる。スカイプを使えば、ヘッドセット以外は導入費ゼロ。しかも、スカイプ間なら通話料もゼロで、一カ月五、六万円かかっていた国際電話通信料もゼロになった。電話代は一回線分の月二万円だけ」と安光氏。

■世界3400万人ユーザー

 スカイプそのものが事業の柱という会社もある。兵庫県西宮市の「ハオハオウェブ中国語教室」(前田憲治代表)は、テレビ電話を使って中国語の個人レッスンを行っている。画像はヤフーやマイクロソフトのメッセンジャーと呼ばれる映像送受信ソフトを使い、音声はスカイプを使う。

 「メッセンジャーでも音声会話はできるが、生徒のパソコンの通信環境が違うと(ウイルス対策など)セキュリティー問題から音声がつながらないケースが半数以上ある。スカイプはほとんどのセキュリティーを越えて通話でき、ソフトも通話料も無料。授業料を安く抑えられる」(前田氏)

 とはいえ、日本で実際にスカイプを活用する人はまだ少なく、認知度も低い。

 冠婚葬祭に関する疑問に答える「結納ドットコム」を運営する三重県桑名市の小林結納店の小林憲司専務(43)は今年二月から、連絡先として加入電話、携帯電話、メールアドレスに加えて、スカイプの入力IDを公開した。スカイプによる連絡は今のところ一件もないが、「電話会議がごく手軽にできるのが魅力で、やはり無料はすごい。今後、必ず普及すると思って連絡先としている」と話す。

 スカイプに関しては、ファイアウオールをすり抜ける接続力の高さや、外部へのファイル流出の恐れなど、セキュリティー上の問題も指摘されているが、前出の安光氏は「普通のネットワークで起きる障害ぐらいのことは覚悟すればいい。むしろ、スカイプが映像送受信にまで進めば、独居老人の見守り、隔離病棟に入った子どもと親とのふれあいなど、新たなコミュニケーション手段として有用ではないか」。

 スカイプによる電話通信が世界で急速に拡大している。日本総合研究所の新保豊主席研究員は「世界中で約三千四百万人のスカイプユーザーがいる。最近一カ月で一千万人以上増加している。音質は携帯電話よりよく、固定電話にかなり近い」と爆発的普及を語る。

 米国では、大手通信機器メーカーのモトローラ社が今年二月、携帯電話にスカイプソフトを搭載すると発表した。新保氏は「パソコンを持ち歩く必要がなくなり、普及拡大へのインパクトは大きい」とみる。

 「日本でのユーザーは約百四十万人」(新保氏)だが、今後、国内でも広く普及する可能性はあるのか。

 大手IP電話事業者のフュージョン・コミュニケーションズは今秋から、自社の電話をスカイプ利用のパソコンへ転送するサービスを始める。部分的だが、従来できなかった固定電話や携帯電話からの発信をスカイプ利用パソコンで受信することが可能になる。新保氏は「五百万人程度までスカイプユーザーが増えるのではないか」と予想する。

 「海外への通話料金は大手IP電話業者の約十分の一。企業にとってメリットは大きい」(新保氏)とみられる。スカイプ用のソフト開発会社「アリエル・ネットワーク」の徳力基彦氏は「個人より、ビジネス用で広がる」とするが「ヤフーBBなど会員同士の無料電話が以前からある日本の個人顧客にとって、スカイプのインパクトは欧米の顧客よりは小さい」とも。

 スカイプ普及に力を入れている一人に、ライブドアの堀江貴文社長がおり、駅などの公共スペース、飲食店、地域などにインターネット接続場所をつくる公衆無線LAN事業に意欲をみせる。この分野で旋風を起こすのか。徳力氏は言う。

 「無線LANは日本では整備されていない。スカイプと組み合わせた事業の展開を狙っているのではないか。電力系の通信会社などと組んで、コストと時間をかければ、スカイプ普及につながる無線LAN整備も可能になるが…」

 通信系各社は激しい料金競争を展開している。利用する携帯電話会社を変えても同じ電話番号を使えるナンバーポータビリティーが来年に導入される。低料金で他社との差別化を図るしかなく、そのための設備投資が行われている。

 だが、スカイプが普及すれば「通信各社のばく大な投資を無駄にする可能性も否定できない」(徳力氏)という。新保氏も「スカイプが数百万単位に増えてくれば、固定電話や携帯電話の収入に影響が出る。事業計画の見直しも必要になってくる」と予想する。

 これに関し、IP電話事業大手のソフトバンクBBの広報担当者は「(電話番号を持たないスカイプと違い)IP電話には固定電話と同じ利便性という強みがある」と強気だ。NTT東日本の広報担当者も「将来的にも普及していくのかどうか。状況を見つつ対応していく」と話している。

 通信各社が強気でいられるのも、欧米と違い、日本ではスカイプには電話番号がなく、認知に時間がかかるとみているからだ。電話番号は総務省が管理する。「050」のIP電話の割り当てには規制がある。

 だが、総務省もスカイプの行方を注視しているようだ。担当者は「スカイプユーザーが大多数になれば、利用者数を把握して管理する必要性が出てくる。従来の見方を変えなくてはいけない」と、スカイプが“趣味の道具”にとどまらないとの認識を示唆した。

 スカイプへの電話番号付与には、利益を侵される既存の電話事業者から抵抗も予想される。「電話事業には品質や音質の安定度が求められている。既存勢力からは『スカイプは電話番号を与える条件を満たしていない』という反発が出てくるだろう」と徳力氏。

 新保氏も「シェアが高くなれば、通常の電話会社に求められている社会的義務も課される。個人情報管理などのセキュリティー面や広く公平なサービスへのコスト負担などだ。この方面から既存勢力につぶされる要素もある」と指摘する。

 <スカイプ> インターネットを利用する音声通話ソフトで、ルクセンブルクのスカイプ・テクノロジーズ社が無料提供している。パソコンに搭載して同社に登録すれば、同様の手順を経て高速・大容量通信でインターネットに接続されているパソコンとの間で、マイクとヘッドホンなどを用い無料通話できる。5人の同時通話が可能。有料のスカイプアウト機能を使えば、固定電話や携帯電話へも発信でき、国際電話は格安となる。受信もスカイプイン機能により可能だが、現在は米、英、スカンジナビア諸国、香港などだけ。日本ではインターネット技術を使ったIP電話に割り振られる050番号を得られないため使えない。機能が充実し、周辺機器開発が進められ、スカイプを搭載した携帯情報端末(PDA)などが普及すれば、従来の電話に代替する領域が拡大するものとみられる。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20050614/mng_____tokuho__000.shtml