悪のニュース記事

悪のニュース記事では、消費者問題、宗教問題、ネット事件に関する記事を収集しています。関連するニュースを見つけた方は、登録してください。

また、記事に対するコメントや追加情報を投稿することが出来ます。

記事登録
2005年06月06日(月) 16時41分

障害者自立支援法案:国会で審議 「自立」阻む受益者の負担増 /北陸毎日新聞

 ◇ギリギリの生活さらに厳しく−−募る不安、見直し訴え
 障害者に介護サービスで原則1割の自己負担などを求める「障害者自立支援法案」の廃案や見直しを訴える運動が全国で活発化している。03年に障害者自らが必要な福祉サービスを選ぶ「支援費制度」がスタート。北陸3県の利用者(各サービスの受給者数合計)は福井が約5000人▽石川が約6100人▽富山が約3900人に上る。国は財政難のため、昨年10月に大幅な改革案「今後の障害保健福祉施策について(改革のグランドデザイン案)」を提示。さらに、それを法的に裏付ける支援法案を、今年2月、国会に提出した。「新制度では負担が増え、生活できない」。不安を訴える障害者たちの現状を聴いた。【樋口岳大】
問題点 障害の種別や程度、施設や団体によって指摘する問題点は違うが、主なものとして次の項目が挙げられる。
 (1)サービスの自己負担が現行の収入に応じた「応能負担」から利用量に応じて原則1割を自己負担する「応益負担」になる(2)市町村に置く、学識経験者らによる「審査会」が障害程度区分を決める。この区分によって利用できるサービス量が決まるが、誰が審査会に入るのか。生活実態が個々に違う当事者をどんな基準で“区分”するのか(3)障害程度区分ごとに国庫補助金の上限が設けられ、重度障害者は必要なサービスを受けられなくなる(4)入所施設での食費などが自己負担になる(5)精神障害者の通院医療の自己負担が現行の5%から10%に引き上げられる——など。
重度障害者は 福井市で1人暮らしをしている26歳の男性。脊髄(せきずい)の病気の後遺症で全身にまひがある1級障害で、1日24時間の介護を受け、うち20時間を支援費でまかなっている。1カ月では計620時間で、福井県内では最も多い支援費利用者の1人だ。
 新制度では国が補助上限を設け、全身性障害の場合は月125時間が上限になるとの情報もある。国は重度障害者に対し「包括的にサービスを提供する」としているが、具体的内容は明らかにしておらず、男性は「現在の介護が受けられなくなる」と不安を募らせる。
 男性は、食事やトイレ、入浴など日常生活全般の介助に加え、自分で体温調節ができないため、夜間も含め24時間介護が必要。利用時間が制限されると「ヘルパーがいない時間は何が起こってもおかしくない」というリスクを背負うことになり自立生活はできない。
 支援費制度ができた03年、1人暮らしを始めた。それまでは親元で暮らしていたが、両親の高齢化や「年相応の生活がしたい」との思いからだった。男性は「介護を受けられる時間が減らされれば、家に引きこもるしかなくなる」と語気を強める。
施設利用者 福井県あわら市の社会福祉法人「ハスの実の家」は、知的障害者約60人が利用する施設を運営。「理解力の点で弱さを持っている利用者たちに、支援法のことを何とか知らせたい」と学習会を重ねてきた。職員が段ボールを使って「お金」「障害者」などを示す教材を作り、丁寧に説明した。
 利用者の女性(36)は、グループホームで生活しながら、日中は通所施設で働く。2級障害で月収は年金を含め計8万2000円。支出はグループホーム利用料などの計6万3500円。現在、手元に残る1万8500円で、健康保険や医療費の支払い、日用品の購入などをまかなっている。ギリギリの生活だ。
 ハスの実の家の試算では、この女性の場合、新制度では支出が2万円増えて、収入をオーバー。現在、女性の仕事を支援する人の人件費などは、支援費でまかなっているため自己負担はゼロ。しかし、1割負担になれば、減免措置があっても1万5000円かかってしまう。さらに、通所施設での昼食費5000円も自己負担に。女性は「今でもギリギリなのに、負担が増えたらどうやって生活すればいいのか」と頭を抱えている。
広まる反対運動 5月12日、東京・日比谷公園。支援法の見直しを求める全国集会の約6000人の輪の中に、この女性もいた。女性は、不安を訴える全国の障害者たちの姿に「自分と同じ思いをしている人がたくさんいる」と励まされたという。
 福井県内では、ハスの実の家などが名を連ねる「きょうされん福井支部」が先月15日、福井市で緊急集会を開催。同市の自立生活センター「Com—Support Project」も支援法廃案を求め、学習会や街頭活動を重ねている。
 先月23日、県が当事者たちの意見を聴取した際、同県武生市の視覚障害を持つ20歳代の男性は自筆のアピール文を読み上げた。「障害者は『家族に負担をかけまい』と支援費を使って自立しようと頑張っている。所得保障もない中で『1割払え』はあんまりだ。これでは『自分のせいで家族が幸せになれない』とますます思いつめてしまう」。こうした叫びに国は耳を傾けてほしい。

6月6日朝刊
(毎日新聞) - 6月6日16時41分更新

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050606-00000241-mailo-l18