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2005年06月01日(水) 00時00分

『50歳プラス』 を生きる 瀬井 幸則さん(多重債務者救済組織役員・62歳) 東京新聞

■借金地獄『ほっとかれん!』

 机の上に、銀行のATM(現金自動預払機)の利用明細票が何十枚も置かれていた。高金利の消費者金融や信販会社、ヤミ金融などへの借金地獄に苦しむ人の救済を図る「いちょうの会」の事務所。大阪地裁そばの古いビルにある。

 事務局次長の瀬井幸則さん(62)は、「相談に来られた人が、ヤミ金業者から金を取り戻せるよう、作業しているところです」と説明してくれた。

 この日の相談者は、やせた高齢の女性で、元気がなかった。数十社もの超高金利のヤミ金業者から借り、返済していた。女性が銀行経由で業者に支払った額などをチェックしたところ、法的な手続きによって取り戻せそうな金額は数百万円にもなるという。

 瀬井さんは以前、世間から「センセイ」と言われる市議会議員だった。兵庫県の尼崎市役所に就職した後、衆院議員秘書などを務め、一九九三年から八年間尼崎市議を務めた。

 その後、市議に復帰したいという考えもあったが、地元の選挙事情などから一昨年に断念。そのとき、借金地獄にあえぐ人たちを救うボランティア活動に専念することを決めた。借金に苦しむ人を「ほっとかれん」という思いがすべてだった。

 子ども二人は既に独立しており、自分たち夫婦の老後は年金で何とか食べていける。奥さんも「人助けなのだから…」と理解してくれた。

 原点は二十三年前。衆院議員の秘書になり、借金に苦しむ人たちの実情をよく知るようになった。当時の消費者金融会社の貸出金利は年109・5%と今以上に高く、取り立ても過酷。破産制度もほとんど活用されず、解決は難しかった。借金地獄に陥った人たちと「手羽先はぜいたく。野菜は八百屋で余り物を買おう」などと語り合うことが多かった。

 「いちょうの会」のほか、同様な活動団体「尼崎あすひらく会」の書記長も務める。平日は毎日、二つの事務所へ。日曜日も午後一時から五時まで、あすひらく会の事務所に詰める。電話の相談者には、助かる道があることを丁寧に説明し、訪ねて来る人には、特定調停の方法やヤミ金業者の撃退法などを教える。

 「市議のころと比べると、一つの問題に集中している分、充実感は大きい」と話す。今年正月、相談者の一人が自殺したこともあった。どうにも助けきれない場合があるのだ。悲劇は繰り返させたくないので、一層頑張る。

 多重債務者は増え続け、現在約二百万人といわれる。家族も含めると約五百万人もが借金地獄にあえぐ。一方で、消費者金融会社のテレビCMは盛んに流れる。

 「破産や任意整理などの手続きだけでは、多重債務の本当の解決にはならない」と力説する。

 「二度と借金しないという人生観を持ってもらわなければならんのです」

  (白井 康彦)


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20050601/ftu_____kur_____001.shtml