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2005年05月30日(月) 00時00分

住基ネットから削除命令 プライバシー侵害 東京新聞

 住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)は、憲法が保障するプライバシー権や人格権を侵害し違憲として、石川県の住民二十八人が、住基ネットに提供された個人情報の削除と国などに一人当たり二十二万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、金沢地裁の井戸謙一裁判長は三十日、県と地方自治情報センターに原告住民の個人情報を削除するよう命じた。 

■金沢地裁違憲性を指摘

 住民が住基ネットからの離脱と国などに賠償を求めた訴訟は全国十三地裁で提訴され、判決言い渡しは金沢地裁が初めて。住基ネットを基盤に政府が進める情報技術(IT)戦略・電子政府構想へも影響しそうだ。

 判決は「自己のプライバシーの権利を放棄せず、住基ネットからの離脱を求めた原告に適用する限り、住基ネットは憲法一三条に違反する」と指摘。離脱を求める住民への適用は違憲とした。

 また「県などは法令の根拠なく原告らの個人情報を管理していることになる」として、プライバシーの権利に基づく住基ネットの差し止め請求権も認めた。

 判決理由で井戸裁判長は「憲法一三条が保障するプライバシー権には自己情報コントロール権が重要な一内容として含まれる」と指摘。「住基ネットは自己情報コントロール権を侵害しているが(この権利も)公共の福祉のためには相当の制限を受ける」と述べた。

 その上で「住基ネットはプライバシー権を犠牲にしてまでの必要性を認めることはできない」とした。

 また自己情報コントロール権に含まれるとした本人確認情報のうち「氏名、住所、生年月日、性別の四情報は秘匿を要する程度は高くないが、住民票コードとその変更情報は、各種の個人情報を集めることができるため、秘匿を要する程度が相当高い」と指摘。「住民が行政機関の前で丸裸の状態で、人格的自律が脅かされることは容易に推測できる」と述べた。

 住基ネットの安全性については「安全対策の不備で、住基ネットへの不当なアクセスや情報漏えいの具体的危険があるというのは困難」とし、全国の市区町村で個人情報の保護措置が確実に実施されているかは疑問だとも述べた。

 損害賠償については「住民基本台帳法の違憲性が誰の目にも明らかである場合に限られる」と述べて退けた。

 国側は「自己情報コントロール権は憲法で保障された権利とはいえない。情報保護の措置も十分で、プライバシーの侵害もない」と反論していた。

◆金沢地裁判決骨子

一、県は国などに対し、原告らの本人確認情報を提供してはならず、住民基本台帳ネットワークの磁気ディスクから削除せよ

一、憲法一三条は人格権としてプライバシー権を保障しており、自己情報コントロール権はその内容に含まれる。住基ネットは自己情報コントロール権を侵害しているが、この権利は公共の福祉のためには相当の制限を受ける

一、便益とプライバシー権のどちらを優先するかは、各個人が自らの意思で決定すべきだ。プライバシーを優先する原告らに適用する限り、住基ネットに関する法律の各条文は憲法一三条に違反する

 ◇メモ <自己情報コントロール権>

 個人がそれぞれの価値観に基づき、自律的に個人情報を管理する権利。プライバシー権には、自分の情報がどのように利用されているかを知り、不当に使われた場合に訂正や削除を求める権利も含むとする考えに基づく。個人の尊厳を定めた憲法13条を根拠とし、情報化社会の進展に伴い提唱されるようになった。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sei/20050530/eve_____sei_____005.shtml