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2005年05月19日(木) 00時00分

金融機関が損害補償を 預金不正引き出し 東京新聞

 キャッシュカードの偽造や盗難によって預金が不正に引き出されたら、被害者はどう救済されるべきか−。政府や国会がルールづくりを進める中、被害者団体や弁護団は「預金の引き出し方法がどんな形であっても原則として金融機関が損害を補償する」という趣旨の法律制定を求めている。世論の高まりを受け「不十分な救済ルールでは納得しない」と、利用者保護の徹底を目指す。 (白井 康彦)

 今月十二日、被害者団体「ひまわり草の会」や「預貯金過誤払被害対策弁護団」などが東京都内で「預金者保護法の制定を求める緊急集会」を開いた。

 同会は昨年九月の設立。会員の被害体験がテレビや新聞に取り上げられ、カード不正使用問題がクローズアップされたことで、被害者救済や被害防止の世論が急速に高まった。

 集会には、この問題の調査報道を続けた作家の柳田邦男さんをはじめ、民主、公明、共産各党の国会議員らが出席。被害者らは「銀行は補償する姿勢を見せず、終始、冷たい対応だった」と強調。柳田さんは、キャッシュカード被害者の救済が欧米諸国に比べて大幅に遅れている日本の現状を説明した。

 同会や弁護団が集会で強調したポイントは四つある。

 一つ目は、預金者の保護を図るために新たな法律を制定すること。金融機関が預金に関する約款を見直す方式では、被害者救済が進みにくいとしている。

 二つ目は、預金が不正に引き出された場合は、原則として金融機関が補償責任を負うことを法制化することだ。

 同会会員らは「これまでは不正引き出しの損害はほとんどの場合、預金者が負ってきた。金融機関は痛手を受けなかったので、防犯に力を入れてこなかった。被害の責任を金融機関に負わせれば状況が変わる」と話す。

 三つ目は、預金の不正引き出しを狭く定義しないこと。金融業界は昨年から「偽造カード問題」として対応を検討してきたが、同会は一貫して盗難カードも含めた「預金不正引き出し問題」ととらえ、偽造と盗難の被害者を同じように救済すべきだと主張してきた。

 同会の盗難カード被害者の中には、用心して分かりにくい暗証番号にしていた人も多いが、それでも暗証番号は何らかの方法で割り出されてしまっているのが現実だ。

 同会は「キャッシュカードシステムの弱点を巧みにつく犯罪者集団が存在する」として、こうした状況では偽造・盗難に大差はないと強調している。

 カードによる預金不正引き出しが問題になる前に一九九八年ごろから、盗難された通帳で預金が不正に引き出される事件が多発し、被害者が金融機関に補償を求める裁判が次々起こされた。

 一連の裁判で代理人を務めた預貯金過誤払被害対策弁護団の弁護士らが、カードによる不正預金引き出しの被害者救済にも取り組んでおり、同会と弁護団は「盗難通帳も救済の法制化の対象にすべきだ」と訴える。

 インターネットを使って銀行と取引する「ネットバンキング」の預金者も、不正に預金が引き出されたときは同様に保護すべきだとしている。

 四つ目は、法律制定前に被害者になった人も金融機関が救済すること。被害者らは「取るべき対策を取らずに放置してきた銀行に責任を取ってもらいたい」と訴える。

 金融庁の「偽造キャッシュカード問題に関する研究会」は今月十三日、盗難カード被害の救済策を発表。原則として金融機関と預金者が損害を50%ずつ負担する案を示した。同研究会は偽造カード被害については原則として金融機関が損害を100%負担するとしている。

 預金不正引き出しに関するルールづくりが、金融機関の約款見直しという形で決着すれば、研究会の救済策に沿って金融業界が約款改定をすることになるとみられる。

 ただ、民主党が預金者保護の色合いが強い法案を既に国会に提出している上、与党側も法案提出の構えを見せており、事態は流動的。被害者団体の意見や世論も国会の議論に影響しそうだ。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20050519/ftu_____kur_____001.shtml