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2005年04月11日(月) 00時00分

サービス外地域でも高速通信したい 手作りでできたブロードバンド 小柴昌俊科学教育賞の優秀賞に選ばれた豊増伸治さん(右)と小柴さん=東京の丸ビルで 東京新聞

 インターネット上に、高速通信を前提として作られたホームページが増えてきた。総務省のまとめでは、光ブロードバンド(高速大容量)の加入者数は昨年九月に二百万件を突破し、世界のトップという。都市部から遠く、光ファイバーのサービスから取り残されそうな市町村では、初期費用が安い無線通信を利用したブロードバンドが注目されている。 (永井 理)

 和歌山県美里町は、紀伊半島の山あいにある人口四千人余りの小さな町。ここに“手作りブロードバンド”がある。

 「採算が取れない」として同町はこれまで、光ブロードバンドやADSL(非対称デジタル加入者線)のサービス地域から外されてきた。地元でも自治体や通信業者に働きかけてきたが、実現しなかった。

 「誰もやってくれないなら自分たちで引くしかない」。そう言って立ち上がったのが、同県立大成高校の美里分校で非常勤講師を務める豊増伸治さん(美里町立みさと天文台研究員)。科学技術振興機構の補助金を得て、担当する授業の中で、昨年度末まで一年をかけて生徒らとブロードバンド環境づくりに取り組んだ。選んだのが設置費用の安い無線方式だ。約二十キロ離れた同県岩出町には、光ブロードバンドが通じている。岩出町の木製品工場の協力を得て、この工場の屋上から電波を飛ばし、山上の中継所を経て、町内の利用者に送る。通信業者ではないため、工場の無線LAN(構内情報通信網)という形だ。

 中継塔の工事は業者に依頼したが、設置場所探しから、基礎工事、通信実験も生徒が取り組んだ。通信装置に約三百二十万円、専用ソフト開発に五十万円かかった。当時三年生で活動の中心となった高良堅人さんは「速くて安定した回線を使いたかった」と話す。

 この無線回線で、毎秒八メガビット程度の速度が出ている。昨年末から家庭で使ってきたが、新年度は分校でクラブ活動などにも使う。

 この試みが先月、ノーベル賞物理学者の小柴昌俊・東大名誉教授の財団が設けた「小柴昌俊科学教育賞」で優秀賞に選ばれた。

 地域を巻き込んだ手製ブロードバンド活動が認められて、同町ではついに本年度から、通信業者とNTTが幹線道沿いにADSLを提供することになった。豊増さんは「さらに光ファイバーが来るようがんばりたい」と笑う。

   ◇   ◇

 福島県の原町市では、市が無線のブロードバンドサービスを展開している。

 「業者に相談したら採算が取れないと断られた。だが指をくわえて見ているわけにもいかなかった」と、同市情報政策室鈴木吉久室長。同市には総延長約三十キロのイントラネット(地域情報網)の光ファイバー網がある。ここから無線通信で、半径約一キロにブロードバンドを提供するのだ。

 無線基地は三十八カ所あり、現在の提供地域は市内の約80%をカバー。本年度中に95%とする予定だ。建設費は最終的に約三億二千万円を見込む。全部が光ファイバーとした場合の十分の一程度になるという。

 利用料は月額五千二百五十円。NTTの戸別サービスより安い。「市内一万六千戸のうち二、三千戸に利用してもらえるのでは」とみる。

   ◇   ◇

 政府はデジタルディバイド(情報格差)の解消を目指すが、山間部や離島などの過疎地域と都市部との差はなかなか埋まらない。総務省では研究会を設けて「ブロードバンド・ゼロ地域 脱出計画」をまとめ、自治体の首長や住民の意識の盛り上げが必要としている。これら無線を使った取り組みは、脱出計画のいいお手本になりそうだ。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/dgi/20050411/ftu_____dgi_____000.shtml