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2005年03月29日(火) 01時37分

3月29日付・編集手帳読売新聞

 英国の哲学者フランシス・ベーコンは、内臓を取り出した鶏に雪を詰めて保存する実験をしていて死亡した。寒空の下で風邪を引いたとも、食した肉にあたったとも伝えられている。冷凍食品づくりの先駆者だろう◆その道に携わった人の経験談によれば冷凍の技術よりも、いかにして鮮度を保ちつつ常温に戻すか、解凍の技術に頭を悩ませたという。「政策」という肉も同じかも知れない◆BSE(牛海綿状脳症)騒動のなかで政府が3年半前に導入した肉牛の全頭検査は、消費者のパニック心理を一気に固めてしまう“瞬間冷凍”の緊急措置であっただろう◆内閣府・食品安全委員会の専門家グループが、月齢20か月以下の牛を検査から除外することを認めた。米国が制裁をちらつかせ、全頭検査の見直しを迫るなかでの解凍になる◆相手が米国であれどこであれ、日本人の健康にかかわる事柄でいかなる圧力もかけられるいわれはない。とはいえ日本側にも、世界に類例のない厳格な措置を科学的な根拠を示さぬまま長期間つづけてきた負い目があり、解凍が遅きに失した印象は否めない◆ベーコンは政策に携わる者に戒めを残している。「いわく遅緩、いわく腐敗、いわく傲慢(ごうまん)、いわく軽挙」。軽挙を恐れるあまり遅緩に陥ったきらいもなしとしない。解凍は悩ましいものである。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20050328ig15.htm