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2005年03月05日(土) 23時37分

<個人情報保護法>4月全面施行 医療カルテ開示義務化毎日新聞

 4月に全面施行される個人情報保護法が、医師と患者との関係を変えそうだ。患者本人の請求があれば、医療機関はカルテや看護記録、レセプト(診療報酬明細書)などの医療情報を原則開示しなければならない。医療事故が多発する中、開示の義務化は医療の信頼性を高め、患者本位の医療につながるとの期待が高い。その一方で、医療事故の舞台では、肝心の医療情報が改ざんされているとの批判もある。全面施行を間近に控え、開示を巡る課題を追った。【玉木達也、宇城昇】
 ■開示は患者の「権利」に 全医療機関で
 現在でも、厚生労働省の「診療情報の提供等に関する指針」(03年9月)で「患者が診療記録(カルテなど)の開示を求めた場合、(医療機関は)原則として応じなければならない」とされている。だが罰則はなく、事実上、医師の裁量に任せられている。
 これに対して、保護法で、開示は医師のサービスではなく、患者の権利として明確に位置づけられている。開示すると患者本人の治療に重大な影響があるなどの例外を除き、非開示は認められない。むやみに非開示とすれば、患者の苦情を受けて厚労相が開示を勧告・命令し、従わない場合は刑事罰が科される。
 保護法の対象は5000人分を超す個人情報を持つ事業者だ。ただ、厚労省は良質で適切な医療のため、保有する情報の規模にかかわらず、すべての医療機関が守るべきだとするガイドラインを作った。保護法で死者の情報は原則として開示の対象外だが、ガイドラインは患者本人が亡くなった場合、遺族の請求も認めている。日本医師会もこのガイドラインを順守すると表明している。
 ガイドラインに法と全く同等の強制力があるわけではないが、もしも非開示を巡る争いが民事裁判に持ち込まれれば、患者側に有利に働くとみられる。法の全面施行で、医療情報の開示は一気に進みそうだ。
 ■改ざん続々 疑い例109例
 しかし、いくら開示されても、中身がでたらめなら意味はない。
 大阪弁護士会の石川寛俊弁護士らのグループは、93年以降に医療過誤訴訟を担当した全国の弁護士約700人を対象にアンケートを実施して昨夏、結果をまとめた。96人から寄せられた回答を分析すると、カルテ改ざんが疑われる例が少なくとも109件あり、判決で改ざんが認められたケースも9件あった。
 兵庫県内で係争中の裁判では、弁護士が証拠保全で入手したカルテと、患者が直接入手したカルテ、裁判で病院側が証拠提出したカルテの間で、血圧のグラフが違ったり、病名が違っているなど明らかに不自然な点があった。「間違いを訂正したため」と病院側は弁明したが「どれが本物のカルテか分からない」と証言したという。
 その他の例でも「医師の申し送り事項が修正液で塗りつぶされていた」「看護師が見回った事実はないのに『3〜4回見回った』という紙が差し込まれていた」「裁判で問題になっている時間帯の分娩(ぶんべん)監視記録の記録紙が行方不明」「肝臓がんの見落とし事件で、『慢性肝炎』を『肝硬変』と書き換えて症状が悪化していたように見せかけた」——など、抹消や加筆、抜き取りといったさまざまな手口があった。
 しかし「カルテが改ざんされた」と裁判で患者側が主張しても、立証は極めて難しい。診療記録などは病院が握っているのに、立証責任は原告である患者側に負わされるからだ。裁判で改ざんが認定されるのは、病院側から内部告発の証言がある例などに限られる。
 ■隠ぺい対策「刑事罰を」 指針は努力義務
 改ざん防止に取り組んでいる病院もある。大阪府枚方市の市立枚方市民病院は03年4月、医療事故対策マニュアルの運用を始めた。事故が起きた場合は、病院長に報告すると同時に、カルテの写しを患者側に渡すことも盛り込んだ。不都合なカルテの改ざんや隠ぺいを防ぐためだ。院内で起きた医療過誤の反省から創設された医療事故等防止監察委員協議会の提言に基づいて明文化した。
 社団法人・日本看護協会は、看護記録を訂正する際、改ざんを疑われないよう、修正液の使用や誤記部分を塗りつぶさないとする指針をまとめた。改ざん行為をしないよう戒めてもいるが、指針はあくまで努力義務だ。
 改ざんを防いで医療情報をより透明にする方策は——。石川弁護士らのアンケートに答えた弁護士の53%は「刑事罰」の創設を求めている。現在の刑法で、改ざんが証拠隠滅罪に問われるのは、他人の刑事事件に関するカルテを改ざんした場合に限られる。医師が自分で書いたカルテを改ざんしただけでは処罰できる法律はない。
 石川弁護士は「個人情報保護法は患者側が自らの情報にアクセスする権利を保障するが、密室で行われる改ざんを防ぐ手立てにはほど遠い。患者の個人情報を勝手に書き換えることを『人権侵害』と攻めることはできるが、カルテの改ざんや隠ぺいは犯罪行為であると認識すべきで、きちんと処罰するためには法整備が必要だ」と話す。
 ◇ことば=個人情報保護法
 行政機関や民間企業が個人を識別できる情報をずさんに取り扱ったり、悪用しないよう、守るべきルールを定めた法律。個人情報の取得時に利用目的を本人に明示し、本人からの請求に応じて、情報を開示、訂正するなどの義務が課されている。目的外の使用や不正取得が分かれば、本人は情報の利用停止や消去などを求めることができる。03年5月に成立。対象は現在、国や自治体に限られているが、全面施行で企業などの事業者も対象となる。
(毎日新聞) - 3月5日23時37分更新

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050305-00000105-mai-soci