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2005年03月01日(火) 01時42分

3月1日付・読売社説(2)読売新聞

 [たばこ条約]「喫煙大国のままでいいだろうか」

 愛煙家は、ますます肩身が狭くなることだろう。

 喫煙による健康や社会への悪影響の防止を目指し、日本など約60か国が批准した「たばこ規制枠組み条約」が発効した。

 条約は、たばこの広告や密輸を国際的に規制し、健康問題の解決に協力して対応することをうたっている。

 日本は、たばこ事業法に基づき、たばこ広告の規制を強化する方針だ。4月からは屋外に新設できない。年内には既設の広告も撤去を求められ、たばこ店の店頭などを除き、原則禁止になる。

 健康被害を伝える警告表示は、包装面の3割以上に拡大し、内容も、「がんの原因の一つ」などの表現に変える。

 条約の締約国は今後、取り組み状況を具体的に示すことが求められる。「喫煙大国」と言われる日本が、対策に本腰を入れる契機とすべきだ。

 厚生労働省によると、日本人の喫煙率は成人全体で3割弱だが、男性は5割近くと、先進国で最も高い。20代の女性となると、この10年で倍増した。10代の若者の喫煙率も増えている。喫煙開始の年齢が早いと、習慣になりやすい。

 たばこも入手しやすい。自販機は60万台以上ある。2008年をめどに、成人だけに発行するカードがないと買えない方式に改められるが、現在は、子供でも買える。価格も1箱300円前後で、世界保健機関(WHO)によると、主要国で最も安い。

 喫煙による健康への影響は深刻だ。関連する死者数は、年間10万人以上にのぼる。喫煙者だけでなく、煙を吸う家族なども被害者で、これによる医療費と労働力の損失は数兆円に上るとされる。

 だが、これまで政府は、喫煙を「個人の嗜好(しこう)」としてきた。国としての対策も積極性を欠いていた。

 世界では、条約発効を先取りした動きが広がっている。飲食店など屋内での禁煙は大勢になり、ブータンのように国内のたばこ販売を禁じた国もある。

 条約は、最も効果的な対策として、価格の引き上げを挙げている。国内でも同様の提案がある。500円に引き上げれば、半数が喫煙をやめる、という調査結果もある。とりわけ若者の喫煙対策として効果が大きい、と言われる。価格の引き上げを真剣に検討する時期だ。

 影響が広範に及ぶ公共料金とは問題が異なる。個人の嗜好だからこそ、喫煙者には応分の負担が求められる。ただ、海外では値上げに伴い、密輸が急増した例もある。どの程度の値上げなら最も効果的か、知恵を絞りたい。

 喫煙大国のままではいられない。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20050228ig91.htm