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2005年02月15日(火) 00時00分

小泉武夫の食味学 … 水炊き読売新聞


鶏肉を入れたあと、順々に野菜を加える

 水炊きといえば博多、博多といえば水炊きというぐらい有名な鶏鍋料理である。それ故に「博多煮」という人も多い。それが今では、博多を本場として全国各地に普及したが、もともとは中国風味の鶏肉の薄塩煮(鶏湯(チータン))である。はじめは長崎で明治初期に発達し、そこの料理人が博多に移って看板を掲げたのが繁昌したという。今は水炊き専門の料理屋もあるが、福岡県や長崎県辺りの家庭料理としても広く賞味されてきた。

 とにかくこの鶏鍋料理の特徴は、地鶏の骨付きぶつ切りとガラ(骨)をふんだんに使うところにある。一回の鍋にガラ二羽分も使うというのだから圧巻だ。基本はガラを二羽分、水から炊くことにあり、吹き上がったら弱火にしてアクをとりながら2〜3時間、コトコトと炊く。この間、ガラからはうま味の成分であるアミノ酸やイノシン酸、ペプチドなどが溶け出してきて、いわゆる出汁(だし)となる。また同時に、多量のゼラチン質やコラーゲン、エラスチンなども溶出してくるが、これらの成分はこってりとしたコク味(み)の主体となるばかりでなく、疲れた胃内壁を補強したり、足や腰の骨を強化したり、また肌艶(つや)を良くしたりという効能が知られている。

 また、大量の骨付き肉を使う分だけ、野菜を中心とした具をたっぷりと加えることもこの鍋の特徴で、白菜、春菊、長ネギ、水菜、ニンジン、シイタケ、エノキダケ、豆腐、糸コンニャクなどである。これらの具のどの材料を見ても、その主体は食物繊維の塊(かたまり)ばかりであるところに注目してほしい。肉だけを体にいっぱい入れることは、腸内細菌のバランスの不均衡や栄養成分の偏りなどを引き起こし、臨床病理学的には甚だよろしくないが、このように大量の繊維とともに肉を食べることにより、その問題は解決されるのである。さらに、体内に入った繊維は胆汁酸の分泌を多くして、脂肪の分解促進や、血中コレステロールの過剰を抑える効果も解明されている。とにかく博多名物「水炊き」は実に健康的な「滋養鍋」なのである。

旅行読売2005年3月号より

http://www.yomiuri.co.jp/tabi/gourmet/fudoki/fd050303.htm