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2005年02月15日(火) 00時00分

CNNに勝った?ブログ 東京新聞

 米CNNテレビのニュース部門最高責任者、イーソン・ジョーダン氏(44)が11日、突然、辞任した。折しも、米軍をめぐる同氏の発言を、ジャーナリストらがインターネットのブログを舞台に追及中だった。昨年、米CBS放送の誤報を暴いたブログの記憶は新しい。ブログは再びマスコミに勝利したのか−。日米のブログ事情を考える。

■『極右の勝利』疑問の声も

 「やったね。正義が勝ってよかった」「われわれはブログ世界のすごい力を今実感している」

 ジョーダン氏の辞任が発表された十一日以降、同氏を追及してきたブログ「イーソンゲート・コム」には「勝利」の興奮がにじむコメントが寄せられている。

 その一方で「ファシストの勝利だ。(ナチスを意味する)茶シャツを着てパレードだ」という皮肉、「ジョーダン氏の発言内容が虚偽との証拠があるのか」という疑問の声も交じる。

 この騒動の発端は先月二十七日、スイスのダボスで開かれた世界経済フォーラムの討論会。出席者が米ニューヨーク・タイムズ紙に証言したところによると、CNNのイラク報道責任者であるジョーダン氏はこの席で「ジャーナリストは(イラク側と米軍の)両方から狙われている」と発言。その後、「政府がジャーナリストを狙ったり傷つけたりするとの方針を持っているわけではない」と修正を図ったという。

 この発言を漏れ聞いて反発する人々が二月初めに開設したのがブログ「イーソンゲート・コム」だ。「兵士は毎日命を懸けているのに、影響力のある人が証拠もなしにそんな発言をするのは不適切」とし、過去も含めたジョーダン氏の発言に関する情報を収集し、CNNに氏に対する懲戒、同フォーラムに発言テープを公表するよう求める働きかけなどを始めた。大手メディアがほぼ沈黙する中、同氏の発言に関する出席者らの証言がブログ上に次々と明らかにされていった。

 二十三年間、CNNで勤務したジョーダン氏は辞任理由について「イラクで多数のジャーナリストが死んでいることについての私の発言が論議を呼び、CNNが不当に傷つけられるのを防ぐため」としている。

 辞任報道で、米ワシントン・ポスト紙は「ブログ世界は、先鋭的な正義感でより多くの犠牲者をより早く葬ろうとしているように見える」「ワンストライクでアウトにするインターネット裁判」と批判した。

 昨年九月、米三大ネットの一つ、CBSテレビが行ったブッシュ大統領の軍歴疑惑報道が誤報と判明、幹部四人が辞めた。この際も最初に疑問の声を上げたのはブログだった。

 放送プロデューサーのデーブ・スペクター氏は「CNNにはヨーロッパコンプレックスのようなものがある。反米がおしゃれで知的のように思われるヨーロッパでの会議で、ヨーロッパ受けを狙った発言だったのではないか」とし「CBSの一件は完全なミスで、ブログがない時代でも大問題になっただろう。今回はリベラルなメディアが辞任まで、ほとんど報道しなかったことの方が問題だ」と指摘する。

 米国のブログ事情に詳しい明治大学政経学部の竹下俊郎教授(マスコミ論)は今回の辞任劇について「新聞やテレビは不特定多数に発信するが、従来は直接にフィードバックを受ける機会はなかった。とくにブログを作っているのが、情報源ともなる政治に強い関心を持つ人々やジャーナリストなど半ば身内のような存在だ。それにたたかれたことで想像以上の影響力を持ったのではないか」とし、ブログの強さというより、マスコミの弱腰を指摘。「今後、マスコミがブログとの付き合い方を学習していくと思う」と話す。

 「ネットは新聞を殺すのか」の著書がある国際社会経済研究所の青木日照主席研究員は「日本よりネット社会の成熟が早かったアメリカでは、かなり質の高い議論がブログで行われている。信頼も高い。ウォールストリート・ジャーナル紙の記者は技術系ブログをチェックし、その中からネタを取ったりしている。昨年の大統領選ではボストンの民主党大会をブロガーがリアルタイムでリポートしていた」と話す。

 アメリカでも日本の「2ちゃんねる」のような掲示板が議論の場となっていた時期があった。だが、誹謗(ひぼう)中傷が飛び交うような内容は淘汰(とうた)されていき、発言の場の主流がブログに移行した後は、現在のような取材力や専門知識を戦わせるような状況となったという。

 青木氏は、アメリカでは学校教育で論理的なディベートを習う文化的な下地があること、訴訟社会のため根拠のない発言は訴えられる危険性があることなどをあげて「ネットは実社会を反映している」と話す。

 では、日本のブログの現状はどうか。現役の新聞記者や通信社記者がブログを開設しているが、実名を公開しているブログは少ないし、批判的コメントが殺到する「祭り」によって閉鎖されるケースもある。

 メールマガジンとブログを並行して作っている元公安調査庁職員でライターの野田敬生氏は「トラックバックは自分がまったく接触のない世界からもリンクが張られるので『こういう人が見ているのか』と参考になるし、うれしいね」と言うが、ブログに読者がコメントを書き込む機能を付けていない。「コメント機能を付けるとブログが無茶苦茶(むちゃくちゃ)に荒らされると聞いたので」

 武富士盗聴事件の被害者でフリーライターの山岡俊介氏のブログも野田氏同様の理由でコメント機能は付けていない。「雑誌などが扱わないような話を書くのにブログは適している。ブログの読者からはメールで反応が返ってくる。それは取材に役立っている」として「ブログや掲示板など匿名で書かれている内容は裏付けが取れず、取材では参考にならないのでほとんど見ない」と続けた。

 こうした中、日本の新聞社では初めて、神奈川新聞社は一日から自社記事をブログ形式でホームページに掲載した。同社メディア局は「これまで一日あたり十五万件程度だったページ閲覧数が、一日は二百四十万件。正直言って注目度の高さに驚いている」と話す。

 同社の狙いは読者に発言の機会を持ってもらい、双方向性を持ったコミュニティーを中心としたホームページとすることで、四月からはコメント機能も使えるようになる。つまり、新聞記事に対して読者がコメントを付け、それが公開されることになる。画期的な試みだが、当然、「祭り」の危険性はある。

 元検事の視点でブログを書く落合洋司弁護士は「コメントをもらうことで別の見方を知ることがある。自分の考え方を書くことで整理できる」とブログの効用を指摘しつつも「現状ではネットでの発言が建設的な議論になっていない」として、こう提言する。

 「匿名でのコメント発言も無責任な議論をあおるだけの場合が多い。人格攻撃などに陥らず、建設的な議論ができる資質をネットユーザーが持てるように、ネットに関する教育から変えていくべきではないか」

■メモ

 <ブログ> 個人やグループが情報発信者となって定期的に更新するインターネットのウェブサイト。ウェブ(網)とログ(日誌)を合わせたウェブログを略してブログという。内容は日記風のもの、ニュース、専門的トピックを扱ったものなどさまざま。情報発信者が得た情報や主張などをマスメディアを介さず流すことができ、それに対して読者がコメントを書き込んで、他のサイトで論評される。これら関連する内容のサイトとリンクされる(トラックバック)など、新しいメディアとして活用されている。日本の調査(2003年)では、ブログを開設する理由として「楽しむため」「書くため」「世界とつながるため」などが多い。米国の調査では、ブログから情報を得るという人が04年に激増しており、インターネットユーザーの半数以上に上る。数十万人の読者を持つブログもあるという。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20050215/mng_____tokuho__000.shtml