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2005年02月07日(月) 00時00分

がん患者の生保買い取り ベンチャー企業、日本で初 東京新聞

 療養が長期にわたり生活資金を必要とするがん患者から生命保険を買い取る事業を、東京のベンチャー企業「リスク・マネジメント研究所」(浜崎研治社長)が始め、埼玉県の男性患者(50)との交渉がまとまったことが六日、分かった。第一号となるこの患者は保険契約者の名義変更を東京都内の生命保険会社に請求したが「取り扱えない」と拒否されたため、「合理的な理由はなく不当」として近く東京地裁に提訴する考え。 

 生命保険の買い取りは米国で広く実施され、金融商品として扱われているが、日本での事業は初めて。企業による買い取り実施と保険会社の対応が議論を呼びそうだ。

 リスク・マネジメント研究所によると、患者の余命期間を査定し買い取り金額を決定、患者側に一括して代金を支払う。契約者名義を変更した上で受取人に同社を指定。毎月の保険料を負担し、患者死亡時に支払われる保険金を同社が受け取る仕組み。がん以外での買い取りも実施する。

 初の買い取り交渉がまとまったのは埼玉県児玉町に住む男性。C型肝炎ウイルスによる慢性肝炎を患い、肝硬変を経て二〇〇二年に肝がんと診断された。収入は妻の内職頼りで医療費や生活費に困窮、死亡時に約二千八百万円が支払われる生命保険を買い取ってもらうことを決めた。

 男性の名義変更請求に対し、保険会社は「被保険者が役員、従業員として帰属しない法人への契約者変更手続きは取り扱っていない」と文書で回答。約款は第三者への名義変更に際し、保険会社の同意権を定めている。

 浜崎社長は「療養中のがん患者に『買い取りを認めてほしければ企業の役員や従業員になれ』というむごい仕打ちだ」と話し、男性も「保険会社には事情をよく説明したのに、なぜ認められないのか」と訴えている。

 保険会社側は「個別の契約内容に関することなのでコメントを差し控えたい」としている。

 同研究所は浜崎社長が外資系保険会社での経験を生かし、昨年四月に数人で設立。七月ごろから生命保険買い取りの営業を始めた。

■米参考に行政対応を

【解説】

 日本の生命保険買い取り事業は、最初のケースが名義変更をめぐって法廷に持ち込まれる見通しとなり、波乱含みのスタートとなった。買い取りを望む患者側のニーズもあり、生保業界だけでなく行政も巻き込んだ対応が必要だ。

 契約者を名義変更する際の要件として、約款で自社の「同意」や「承諾」を定めている保険会社は少なくない。被保険者と無関係の法人が契約者になるのを無制限に認めては、犯罪や不正の温床になりかねず、この規定が歯止めの役割を果たしている側面もある。今回のケースで患者側は、「名義変更によって犯罪につながるリスクがあるかどうかは個別審査で判断すべきだ」と主張。一方、業界には「次々と請求が出てきたら個別審査では対応しきれない」と懸念する声もある。

 一九八〇年代以降、エイズ問題を背景に買い取り事業が年間数万件にまで拡大した米国では、末期患者の生命保険が投資対象になっている。「患者の弱みに付け込んで買いたたくのは問題」との議論もあったが、ニーズに押され発展してきた。

 日本でも長期療養で生活が困窮するがん患者は多い。買い取り企業が現れた以上、生命保険を売りたいと考える人は続くだろう。事業が根付くためには、米国も参考にしながらシステムづくりを考える必要がある。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kei/20050207/mng_____kei_____001.shtml