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2005年02月01日(火) 00時00分

時代に合うNHK受信料制度とは 東京新聞

 「受信料の公平負担にさらに努力します」。先月二十九日に放送されたNHK特集番組で、橋本元一会長はこう宣言した。だが、ちょっと待ってほしい。そもそも受信料を払う義務を視聴者はなぜ負わされているのか。衛星放送など、見たい人が見たい番組だけ払う料金体系が浸透しつつある現在、一律負担に疑問も出ている。時代にあった公共放送の受信料制度とは−。

 「受信料は見ている人から取るべきで、逆に払わない人には見せないという態度をハッキリ示せばよい」

 本紙ファクスモニターの東京都の主婦、落合恵美さん(41)は、今の受信料制度に不満げだ。他のモニターからも制度への疑問の声が上がる。

 「スポンサーをつけて民営化をすべき時代が到来しているのではないか。受信料中心の経営方式にあぐらをかいた放漫経営。だから受信料を湯水のごとく不正に流用したりするのではないか」と批判するのは神奈川県の大学生、山崎奨一さん(19)だ。埼玉県の桐生政也さん(25)も「民営化または公社化する方法により、政治との接触を断ち切ることを進めてほしい」という。

■会長は現行維持重要課題と説明

 だが、橋本会長は二十九日放送の特集番組「NHKの再生をめざして〜十七年度改革予算から」で、「視聴者のみなさまがNHKの放送をご覧になって、気持ちよく受信料をお支払いいただけますよう、努力を重ねていくこと。これがNHKの再生に向け、最も大きな柱と位置づけ、取り組んでいきたい」と現行の制度維持が最重要課題と説明した。

 NHKの受信料収入は本年度六千五百五十億円にも上る。全事業収入の96%が受信料だ。受信料制度の始まりは一九二五(大正十四)年までさかのぼる。

 この年、NHKの前身、社団法人東京放送局が日本で初めてラジオ放送を開始した。当初は「聴取料」という名称で、月額二円の予定だったが、すぐに一円に改定され、翌年一月から徴収が始まった。牛肉百グラムが二十銭の当時としては、安くない額で、契約数は五千五百件足らずだった。

 意外にも「ラジオが普及するきっかけは戦争だった」と立教大学の服部孝章教授(メディア法)は話す。「戦線が拡大する中で戦地にいる肉親の情報を得ようとラジオを買い求めた」(同教授)というわけだ。

 聴取料は戦後の五〇年に制定された放送法によって「受信料」に改められ、支払いも義務化された。同時にNHKは特殊法人になった。当時は民放が育つ経済環境になく、受信料で運営される公共放送となったようだ。東京五輪後の六七年にはテレビ受信契約が二千万件を超え、翌六八年にはラジオ受信料が廃止された。

 現在の受信料は一九九〇年以来、据え置きだ=表参照。昨年十一月現在の契約数は三千八百二十三万件。

 時代とともに歩んできたNHKだが、現在はテレビを取り囲む状況が変わってきている。料金を払って見たい番組を見る「ペイテレビ」が、国民の生活に定着しつつある。九一年に営業放送を開始した衛星放送WOWOWの加入者は昨年末現在、二百四十九万二千一人いる。同社のBSデジタル放送の視聴料は月額二千四百十五円(月間プログラムガイド付き)だ。

 同社広報担当者は「放送を始めて十四年経過し、国民全般に見たい内容にお金を出すシステムに対してアレルギーがなくなってきている」と話す。

 もうひとつの変化はBS、CS放送の開始で多チャンネル化時代を迎えていることだ。これらに危機感を持った海老沢勝二前会長は二〇〇〇年四月の定例会見で、「放送と通信の融合が急激に進んでおり、公共放送として新しい技術をサービスで還元するのが使命」と多角化経営を表明した。

■受益者負担の仕組み確立せよ

 多チャンネル化と同時に「放送」から「通信」へ進出した。同年にホームページで無料ニュース配信を開始、昨年のアテネ五輪では、携帯電話向けに速報や競技結果を無料配信した。橋本体制になっても拡大路線は維持される見込みだ。一連の多角化に受信料ばかり食う「肥大化」などの批判が出ている。

 NHK問題に詳しい経済ジャーナリスト町田徹氏は「衛星放送やケーブルテレビも含めた『受益者負担』型の有料放送がどんどんできて、NHKを見ない人にとっては受信料の負担強制はおかしいと不満を持っている」と視聴者の気持ちを代弁する。

 その上で「NHKも受益者負担の仕組みをきちんとつくるべきではないか。地上波も含めて放送のデジタル化が進むと、受信に必要なICカードを活用することで、見る番組やチャンネルに応じて料金を払う仕組みが導入できるようになる。そうした徴収の仕組み次第で、運営が立ちゆかなくなるほど収入を減らさずに、受信料制度はなくせる」と指摘する。

 情報セキュリティ大学院大学の林紘一郎副学長も「多角化の道を歩むなら、民営化しかないだろう。通信部門への進出で不公平感をなくすには、(見た分だけ払う)ペイパービュー・システムが良策だ。問題になっている政治介入も防げるし、民放のようにスポンサーの影響を受けることもない。視聴者にとっても明朗会計だ」と話す。

 制度の見直しが進まなければどうなるか。町田氏は「受信料の負担強制を続けたまま、肥大化することへの不満は視聴者からも高まるだろう。公共放送を名乗るのであれば、例えば、教育チャンネルと衛星一チャンネルだけを残し、ほかは切り離すべきだという議論が起こってもおかしくない」と組織縮小の議論が出てくるとみる。

■行政の手で災害放送の運営も

 実際、大東文化大学の岡村黎明講師(メディア論)は「今最も必要なのは、公共放送として必要ない部分を切り落とす覚悟だ。通信事業はもちろん、BS放送もNHKとは別の事業体をつくって、利用する人がコストを負担するシステムにすべきだ」と主張。さらに「多チャンネル化が進んでいけば、災害放送もNHKの専売特許とは言えなくなり、行政が災害放送を運営する可能性も出てくる。十年単位で先を見れば、民営化も選択肢の一つではないか」と提案をする。

 これに服部教授は「見る人だけが負担するという原則をNHKに導入したとき、視聴率抜きの番組ができなくなる恐れがある」と懸念する。その上で全国くまなく電波が届く公共放送の存在意義を認める一方で、現在の受信料制度を維持するのなら、組織のあり方に注文を付ける。

■「制度残すなら信頼回復必要」
 
 「英BBCの場合、独立性をもった経営委員会が組織や番組の監視役を果たし、政治的な圧力もはね返す防波堤でもあった。こうした中で英国民のBBCに対する信頼感が生まれ、受信料を負担している。これに対し、NHK経営委員会は権限が弱く、国民の代表という意識もなく、受信料も『特殊な負担金』としてしか説明されてこなかった。制度を維持していこうとするなら、NHKは組織のあり方そのものを問い直し、国民の信頼を得なければならない」


http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20050201/mng_____tokuho__000.shtml