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2005年01月30日(日) 03時07分

<介護保険>指定取り消し180件 後絶たぬ悪質業者毎日新聞

 00年度にスタートした介護保険制度。厚生労働省は近く、制度の改正法案を通常国会に提出する方針で、本格的な制度の見直しが始まることになる。ポイントの一つが急増する悪質な介護サービス業者をどう排除するかだ。制度開始以降、昨年12月までに都道府県から指定を取り消されたのは180業者(事業所数では287カ所)にも上る。制度改正でどこまで不正が防げるのか。国会論戦を前に、不正の実態や改正案の内容を紹介する。【玉木達也】
 ◇詐欺などで告訴
 訪問介護や通所介護などで不正請求があったとして、昨年3月に指定取り消し処分を受けた福岡県のNPO法人の場合、「架空請求が行われている」との内部告発で不正が発覚した。県がヘルパーや利用者ら約70人から事情を聴いたところ、実際は訪問介護サービスを全くしていないか、週1回程度なのに毎日行ったなどとして水増し請求していた。さらにサービスの内容を記録したケアプランも全くなかった。同法人主催のヘルパー養成研修の受講者に依頼して家族を要介護認定させ、サービスをしていないのに訪問介護先として申請までしていた。
 県の指導に対し、法人側は「サービス関連の記録はすべて盗難にあった」として、調査にも非協力的な対応に終始した。結局、00〜03年分の計約1億9530万円の返還請求を行ったが応じておらず、北九州市などの保険者は県警に詐欺などで告訴した。
 ◇名義貸しで発覚
 北海道の医療法人は、決められた医師の標準数に足りていないのに、満たしているようにうその書類を作成し、介護サービス費を不正請求していた。医師の名義貸し問題を調査していた大学などの情報から、道が不正の事実をつかんだ。昨年5月、指定取り消し処分となり、返還請求額は00年〜03年分の計約1億5180万円。法人側はすべて返済し、ベッド数を減らして診療所として再出発している。
 この法人の場合、169床のうち、54床を介護保険適用の療養病床としていた。病床数や入院患者数などで決まる医師の標準数は、00〜03年は8〜6人だったが、実際は4人前後しかいなかった。医師が標準数の一定割合を下回った場合には、介護報酬の一部が減額されが、同法人は、標準数に達しているように虚偽申請して減額を免れていた。
 ◇記録改ざんを指示
 介護サービスはせず、実質的には送迎などの“タクシー業務”しかしていないにもかかわらず、介護サービス費を不正に請求したなどとして03年7月、東京都から指定取り消しを受けた株式会社。同社の記録はどこまで移送したかだけが書かれ、本来、しなければならない介護サービスの内容は全く書かれていなかった。移送先には介護保険の対象外である通勤先もあった。内部告発が端緒で、不正が分かった。
 中には、同一のヘルパーが、同じ時間に別々の場所で違う利用者にサービスをしたとして、二重に不正請求して受領していたケースも。都が指導に入ると、移送や訪問介護の時間を故意にすり替え、記録の改ざんの指示もしていた。00〜03年で計約2345万円の返還請求を求めているが、現在、所在不明状態が続いている。
 ◇厚労省 不正防止へ更新制度導入へ
 厚生労働省によると、不正発覚のきっかけは、内部告発か利用者からの情報提供が多い。しかし、立ち入り調査権がある都道府県に比べ、事業所の身近にある市町村はこれまで書類上の審査しかできず、情報が寄せられても実態を把握しにくかった。このため、今回の改正案では市町村にも立ち入り調査権を認め、確認できる道を開く。
 都道府県レベルでは、指定の要件も見直す。指定を取り消された業者は一定期間、再指定できないようにする方針。また、更新制度も導入し、指定に有効期間(5年程度)を設け、事業内容に問題がないかを定期的にチェックできる仕組みを作る。
 また、現行は「指定」か「取り消し」しかないが、業務の改善勧告や改善命令、停止命令など、段階的な行政処分も新設し、細かい指導を可能にする。厚労省はガイドラインを作成し、運用に混乱が生じないようにする方針。一連の不正防止策は06年4月から施行したい考えだ。
 今回の改正案について、ある大手の介護事業者は「チェック機能の強化策は、将来的により精度の高い介護保険として成長させていくうえで当然必要だ」と評価している。
 ▽「利用者の処遇改善が大切」伊藤・鹿児島大教授
 伊藤周平・鹿児島大法科大学院教授(社会保障法)の話 悪質業者を排除するため、都道府県に新たに業務改善勧告や改善命令などの行政処分を認めるのはむしろ遅すぎるぐらいだが、評価できる。指定の在り方も基準を満たしているかどうかを書類審査で調べるだけでなく、実施調査の導入など、もっと見直すべきだろう。ただ、厚生労働省が不正防止策を強化する背景には、増大する介護保険給付費を抑制する狙いがあると思う。利用する高齢者の希望に応じた処遇改善や、軽視されがちな権利擁護を進めることがより大切で、その視点から改善することが重要だ。
(毎日新聞) - 1月30日3時7分更新

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050130-00000013-mai-soci