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2005年01月18日(火) 00時00分

自民郵政マニフェスト、悪文です 金田一秀穂・杏林大教授が分析 東京新聞

 郵政民営化問題をめぐる小泉純一郎首相と自民党反民営化勢力の対立が先鋭化している。そもそも、二〇〇三年衆院選の党マニフェスト(政権公約)の内容をぼかし、お茶を濁したのがいけなかった。賛成、反対両派が都合よく解釈している公約の表現を杏林大学の金田一秀穂教授と国語学的に考えた。 (政治部・吉田昌平)

■郵政に関する記述部分

 郵政事業を二〇〇七年四月から民営化するとの政府の基本方針を踏まえ、日本郵政公社の経営改革の状況を見つつ、国民的議論を行い、〇四年秋ごろまでに結論を得る。

 金田一氏はまず「語用論」と「文義」という観点から解説。聞き慣れない言葉だが、例えば、「たばこ、ありますか」といえば、文義的には単にたばこが存在するかどうかを聞いているにすぎないが、語用論的には「たばこをくれ」という意味になる。「文義」とは文章の厳密な意味。これに対し、語用論的意味とは、一般常識的な言葉のとらえ方と理解すればいい。

 金田一氏は、この例でマニフェストについて、「語用論的には、民営化を公約をしたことになり、文義からは、公約していないことになると思う」と分析した。

 その上で「『政府の基本方針を踏まえ、国民的議論を行い』というのであれば、当然、自民党として、民営化に賛成であると推測される」と解説。マニフェストを読む国民には、民営化が党公約と受け止められる表現といえそうで、この説でいえば、首相の方に分がありそうだ。

 ただし、金田一氏は「踏まえ」という言葉によって、意味が大きく変わってくるとも指摘。「これが『前提として』という意味ならば、公約したことになり、『参考にして』の意味ならば、公約したことにならない」。結局は賛成、反対両派の解釈とも国語的に成り立つことになる。

 マニフェストは、国民に示す明確な約束。その表現が、まったく正反対に解釈できるということは、大問題といえる。

 金田一氏は最後に「この文は、非常にわかりづらい悪文であると考えられる」と結んだ。

 きんだいち・ひでほ 1953年東京生まれ。上智大学心理学科卒業後、東京外国語大学大学院日本語学専攻修了。祖父・京助氏、父・春彦氏に続き、日本語の研究を専門とし、国語辞典などの監修にかかわる。94年ハーバード大学客員研究員。現在杏林大学外国語学部教授。著書に「新しい日本語の予習法」など。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sei/20050118/mng_____sei_____003.shtml