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2005年01月13日(木) 00時00分

放送番組介入 憲法のイロハを無視 東京新聞

 気に入らない番組の放送中止や内容変更をテレビ局に迫る政治家は、日本国憲法の大原則を無視していると言わざるを得ない。「与党国会議員は何でも許される」と勘違いしているのではないか。

 NHKが二〇〇一年一月に放送した「裁かれた戦時性暴力」は、市民団体が開いた女性国際戦犯法廷を基にした番組だ。法廷は旧日本軍の従軍慰安婦制度の責任者を民衆が裁く形だった。

 その番組の放送前、中川昭一・現経済産業相、安倍晋三・現自民党幹事長代理がNHK幹部を呼びつけて「偏った内容だ」と変更や放送中止を求めていたことがわかった。出来上がっていた番組は二人の介入後、幹部の指示で大幅修正された。

 主催団体側が「法廷の趣旨に忠実な番組にする約束を破った」と起こした訴訟で、NHK側は「修正は自主的判断」と主張したが、二人の圧力に屈した疑いが強まった。

 当時、両氏とも閣僚ではなかったとはいえ、政権党幹部が放送内容に事前に注文をつけたのは検閲に等しい。政治に弱いテレビだがこれほど露骨な介入は珍しい。

 放送法三条の二は放送に政治的公平、論点の多角化を求める。半面、同三条には「放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、または規律されることがない」とある。

 肝心の三条を無視して公正原則だけを強調する二人こそ不公正のそしりを免れない。第二一条で「一切の表現の自由」を保障し、検閲を絶対的に禁止した憲法のイロハも理解していないのではないか。

 中川経産相は一九九九年、所沢産野菜のダイオキシン汚染報道をめぐり、放送には何の権限もない農相だったのにテレビ朝日に農民への賠償を執拗(しつよう)に迫った。「権限と行政は法に基づく」との観念が欠如していると見られても仕方あるまい。

 まず相手の表現を受け止めてから批判や反論をするのが民主主義の原則だ。相手の表現をあらかじめ自分の意に合わせるよう強要することは許されない。

 表現、報道の自由が封じられ、悲劇的結末を防げなかった苦い経験を繰り返さないよう、表現の自由は最大限尊重されなければならず、メディアは自由を守り抜く責任がある。

 予算、決算が国会の審議対象であるNHKは、ともすれば政治家に迎合する傾向があるように見える。同じような例がほかにもあるのではないかとの疑いも浮かぶ。これを機に、外部メンバーによりNHKと政治の関係を洗い直し公表すべきだ。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20050113/col_____sha_____001.shtml