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2005年01月03日(月) 10時31分

振り込め詐欺防止 与党法案の全容判明産経新聞

振り込め詐欺防止 与党法案の全容判明

 ≪携帯の本人確認義務化/悪用防止に回線停止も≫

 「オレオレ詐欺」など高額の現金を口座に振り込ませる「振り込め詐欺」の封じ込めのため、与党が年明けの通常国会に議員立法で提出を予定している「携帯電話本人確認及び不正利用防止法案(仮称)」の全容が2日、分かった。携帯電話の契約時や譲渡時に事業者に本人確認を義務付け、虚偽申告者には50万円以下の罰金を科す。譲渡時などに本人確認に応じない場合は、回線を停止する。本人確認を徹底することで匿名性を排除し、プリペイド式携帯電話などの犯罪への悪用を防止する。

 法案は、目的を「携帯電話事業者による契約者の管理体制の整備促進と携帯電話の不正利用の防止を図る」と規定。

 事業者には、運転免許証の提示を受けるなどの方法で、契約締結時や譲渡時に氏名、住所、生年月日による本人確認が義務付けられる。本人確認記録の作成と保存も併せて義務付ける。保存期間は契約の終了から3年間。虚偽申告者には50万円以下の罰金を科す。

 親族以外へ譲渡する場合も、あらかじめ事業者の承諾を得る必要がある。事業者の承諾を得ずに業として譲渡すると、2年以下の懲役か300万円以下の罰金となる。

 また、携帯電話が詐欺や恐喝といった犯罪に使われた疑いがある場合には、警察が事業者に対し、契約者の本人確認をするよう求める権限も盛り込んだ。

 譲渡時や警察の要請に基づく事業者の本人確認に応じない場合、事業者は回線を停止できる。本人確認を行わずに携帯電話がレンタルされた場合も、事業者は同様の措置を取ることができる。

 本人確認に応じない利用者にレンタルすると、2年以下の懲役か300万円以下の罰金。他人名義の携帯電話の譲り渡し・譲り受けも禁止され、違反すると50万円以下の罰金となる。インターネット上などでの広告にも罰則が科される。

 与党は通常国会の冒頭に提出を目指しているが、野党とも調整中のため時期は流動的。原則として、公布から1年以内に施行される。

 ≪ビジネス化する振り込め詐欺 進む低年齢化 月給、歩合制も≫

 昨年1月から11月末までに「振り込め詐欺」(恐喝型を含まず)で警視庁に検挙された97人の平均年齢は23・5歳(前年24・9歳)で、うち少年が21%(同11%)を占めるなど低年齢化が進んでいることが、同庁捜査二課のまとめでわかった。犯行グループは明確に役割分担して巧妙な“ワナ”を仕掛ける一方で、インターネットや携帯電話だけで連絡を取り合い、互いに顔さえ知らないことも多い。

 振り込め詐欺の最近の特徴は、「警察官」「弁護士」「修理屋」「保険会社」などが電話口で入れ代わり立ち代わり登場する「劇場型」となっている点だ。交通事故の示談金名目で数百万円をだまし取るケースが多く、最近では宮城県警の現職巡査長が交通事故の示談金をだまし取る事件も起きた。

 昨年11月に警視庁が摘発したグループは、主犯格の元ヤミ金融業者がネットを通じてプリペイド式携帯電話、名簿などを調達。電話をかける役、演技の指導役、振り込まれた現金の引き出し役とそれぞれが明確な役割を担当していた。電話のせりふはマニュアル化され、脚本のように細かく記したノートも押収されている。

 だまし取った金は、月給方式で分配するケースや、成功する度にボーナスを出す歩合制をとるグループもあり、詐欺犯罪が“ビジネス化”している実態も浮かんだ。

 最近は中学生、高校生の関与も目立っている。11月に数千万円をだまし取ったとして警視庁に逮捕されたグループには、中学生2人が含まれていた。こうした中学生らは現金の引き出し役に使われるのがほとんど。少年らも小遣い稼ぎ感覚で参加している。

 また、ほとんどの犯行グループは、主犯格がインターネットの求人サイトでメンバーを募集していた。名簿、プリペイド式携帯電話、銀行通帳を渡されて犯行に及ぶ傾向が顕著になっている。

 犯行グループといってもメンバーが互いに顔を見ることなく、携帯電話だけでつながっているため、「末端の引き出し役だけを逮捕しても、主犯格や背後にいる暴力団まで捜査がなかなか行き届かないケースが少なくない」(警視庁幹部)という。

 ▽必須ツール 身元割れぬ口座と携帯

 「振り込め詐欺」犯行グループの“必須ツール”となっているのが、身元の割れない「口座」と「携帯電話」だ。このうち口座については、現金の振込先に悪用される口座売買を禁止する「改正金融機関本人確認法」が昨年12月30日に施行された。携帯電話についても、本人確認を義務化する新法が国会に提出されることで、警察庁は「抑止効果が期待できる」と歓迎している。

 本人確認が不徹底で転売や譲渡も容易に行われていたプリペイド式携帯電話は、匿名性を武器に、振り込め詐欺のほか、誘拐や薬物の密輸・密売事件などに悪用されてきた。

 警察庁が昨年1−6月に認知したオレオレ詐欺について調べたところ、犯行に使われて発信元が判明した携帯電話の92・6%がプリペイド式だった。

 携帯電話各社と総務省は11月末、プリペイド式の契約者に対し、譲渡や転売も含めて来春をめどに本人確認を強化すると発表。「携帯電話本人確認及び不正利用防止法案」が施行されるまで時間がかかることから、ほぼ同じ内容の自主規制をすることにした。

 こうした業界の動きについて警察庁は一定の評価をしているものの、「法律では罰則があり、自主規制とは全く違う。制裁が科される法律による抑止効果に期待している」と話す。

 昨年1−10月の全国の振り込め詐欺の被害総額は約222億円。

 改正金融機関本人確認法では、正当な理由なく預金通帳やキャッシュカードの売買・譲渡を禁止し、違反者には50万円以下の罰金。売買や譲渡を業とした場合には2年以下の懲役または300万円以下の罰金が科される。

 さらに、携帯電話でも罰則付きで本人確認が徹底されることになり、警察庁幹部は「捜査面でも摘発しやすくなる。検挙によって抑止させていく循環をつくっていきたい」と意欲を見せた。

 【2005/01/03 東京朝刊から】

(01/03 10:31)

http://www.sankei.co.jp/news/050103/sei016.htm