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2004年12月23日(木) 00時00分

確かなあした 多重債務救済で意見書 東京新聞

 大量の破産、自殺、夜逃げ、犯罪などの原因になっている多重債務問題を研究している「多重債務者問題研究会」が意見書をまとめ、関係省庁などに提出した。「現状は対策がまるで不十分。救済体制の整備や金銭教育の推進を急ぐべきだ」。学者、金融業界関係者、司法書士、教師などさまざまな職業のメンバーが議論を重ねて作成しており、問題解決への第一歩となる可能性もある。意見書の背景と内容を紹介する。 (白井 康彦)

 今月十八日午後、研究会メンバーの大半が横浜市中区の神奈川県司法書士会館に集まった。来年一月八日に開く市民フォーラムで行う紙人形劇のリハーサルのためだ。

 紙人形はメンバーが用意。多重債務者問題の実態を描く三編のシナリオも手分けして書いた。「この場面では、せりふに合わせて紙人形をばたばた動かした方がいい」といったアドバイスが飛ぶ。そんなことまでするのは「問題の深刻さをどうしても世間にアピールせねば」と考えているからだ。

 座長の西村隆男横浜国立大教授は、消費者教育や消費者問題が専門で多重債務者についても研究を深めてきた。NPO法人「女性自立の会」理事長の有田宏美さんや司法書士、消費生活相談員らは連日のように多重債務者の相談に乗っている。

 記者もメンバーの一人。本紙生活面に二年前からたびたび多重債務に関する記事を書いてきた。読者からの反響の電話や手紙、ファクスは通算すれば一千件をはるかに超す。多重債務が原因で肉親が自殺した、家族が夜逃げしてしまった、といった深刻極まりない話も寄せられた。

 そうした経験を踏まえ、問題の現状と、意見書の提言内容をいくつか挙げてみる。

 【相談体制】多重債務の相談は現在、都道府県ごとにある弁護士会や司法書士会が受け入れている。無料相談会を定期的に開く市民団体も各地にある。

 相談して自己破産を申し立てる人はここ十年で五倍以上に増え、年間二十万件を超す。個人再生や任意整理、特定調停などの法的手続きで、ほとんどの多重債務者は返済負担が軽くなる。多重債務になりかけた時点でも相談するのが賢明。相談した方がいい人は全国で四、五百万人はいる。しかし、現実には「どこに相談したらいいか分からない」「体面があり相談しづらい」「費用がかさみそうなので相談できない」と考えている人が多い。

 そこで、研究会は「多重債務者ホットライン」の設置を提言した。専用の電話番号をマスコミに繰り返し報道してもらったり、自治体の広報誌に載せてもらったりして、住民によく知らせ利用しやすくする。

 スタッフは、電話してきた人の債務や家計、その地域の状況などに応じて、適切な相談先を紹介する。相談先の援助で法的手続きが終わったころに、スタッフが家計管理のアドバイスをすることも可能とする。

 ホットラインの設置者として、主にNPOを想定しているが、都道府県など自治体が設置することも考えられる。

 【貸付制度】消費者金融会社や信販会社からの借金は、利用しやすく便利だが、借金癖がつきやすく、高金利であるため多重債務に陥りやすい。意見書は「低利で借りられる柔軟な貸付制度の整備」を盛り込んだ。

 具体的には、社会福祉協議会が扱っている生活福祉資金貸し付け事業の改善を求めた。この制度は、ほとんど知られていない上、借り入れの相談から貸し付けが実行されるまでの期間が長いなど非常に利用しにくい。この期間の短縮や相談体制の充実などを求めた。

 【生活支援】研究会メンバーの意見は「法的手続きをしただけでは多重債務者は救われない」という点で一致している。破産した後でも、家計の管理がまずくて借り癖が改まらないと、再び多重債務に陥る。暴力的な取り立てをする超高金利のヤミ金融に手を出してひどい目に遭う人が後を絶たない。

 意見書では、多重債務者に家計管理の仕方などを教え生活立て直しを助ける「生活支援アドバイザー」という資格制度の創設とアドバイザーの全国配置を提言した。

 【金銭教育】現状は、国民がクレジットやローンの仕組みを習う機会が少なく、子どものうちに金銭管理の感覚を身につける経験も少ない。それが、高利の借金に安易に手を出す人が減らない一因となっている。

 そこで、金銭管理の習慣を幼少期に身につけてもらうための教材を開発して保護者向け研修会も開く▽学校教育のカリキュラムに金銭教育を位置づける▽社会人に多重債務者にならないよう呼びかける機会を増やす−など、金銭教育を強力に推進するよう求めた。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20041223/ftu_____kur_____000.shtml