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2004年12月10日(金) 00時00分

県内は155病院・診療所朝日新聞・

 肝硬変や肝がんを引き起こすC型肝炎に感染する恐れがある薬「フィブリノゲン製剤」が納入された可能性がある医療機関名が9日公表された。県内では155の病院と診療所(現存は122)。しかし、多くの医療機関で当時のカルテや納入記録が残っておらず、使用状況ははっきりしない。県や医療機関は「まず検査を」と呼びかけている。

 厚生労働省が公表した医療機関名は、フィブリノゲン製剤の製造元である三菱ウェルファーマ社(旧ミドリ十字)の1980年以降の納入記録に基づいたもの。医療機関側の納入記録の有無やその期間、カルテの有無、患者への告知、診療科、コメントも公表された。

 法律では、フィブリノゲンが多く使われた昭和期は、医療機関側に納入記録保持の規定はなかった。カルテの保存期間も5年間。カルテが残っている県内の医療機関は17、納入記録は13にとどまり、多くの病院は問い合わせ窓口を設けるものの、実際に同製剤を使用したかどうかはわからないのが実態だ。土浦協同病院の場合、「まず検査を受けてもらい、陽性なら記録を調べる」という考え方だ。

 県も相談窓口を庁内2課と12保健所に設置し、患者らからの質問に答えることにしている。

 検査は、各保健所や病院で受けられる。感染後3カ月ほどでできる抗体の有無を調べる。通常の血液検査と同様に、血液を採取する。

 県保険予防課によると、病院で検査を受ける場合、自覚症状があれば「肝炎の疑い」として保険診療の対象となるが、初診料や検査に伴う診断などを含めると5千〜6千円以上かかる。病院によっては、C型肝炎だけの検査なら2060円で済む保健所を紹介するところもある。

 各保健所では検査できる日や時間帯が限られるが、匿名で受けられる。市町村の老人保健事業でも、40歳以上は検査対象になっている。

 県立中央病院は、同病院での同製剤使用の可能性が否定できない人に対し、検査費の患者の自己負担分も病院が負担し、実質的に無料にする。大倉久直院長は「現実的にこのような対応をせざるを得ない」と話す。

 だが県は、検査費用の一部負担などを「検討していない」としている。同製剤でのC型肝炎感染では、患者らが国と製薬会社を相手取った訴訟が続いており、裁判が決着しないうちは「責任をなぜ県民が負わなければならないのか」という議論になりかねないからだ。

 県は、医療機関名や問答集を薬務課のウェブサイト(34http://www.pref.ibaraki.jp/bukyoku/hoken/yakumu/fibrinogen/index.htm(22))に載せている。



 薬害肝炎訴訟の原告の1人で、県南に住む50代の女性は「あの薬を使っていなければ、もっと違う生活があった」と、C型肝炎になってからの生活を振り返る。

 87年、妊娠中に出血。手術後、血栓が出来る症状のため別の病院に運ばれ、約1カ月半後に退院した。だが肝機能が悪くなり、5年ほどたってからC型肝炎と診断された。当時のカルテが残っており、同製剤が投与されていたことがわかった。

 インターフェロンの治療は当時、半年間。週3回、注射を受けた。午前中に打つと夕方から発熱する。家の階段を上がるのもつらくなった。甲状腺の機能が低下したり、全身が乾いたりした。治療には保険が適用されたが、自己負担は月に二十数万円にもなった。

 偏見もあった。長女は中学の健康診断時、家族の既往症を書いた紙を後ろから見られ、「病気がうつる」と言われて泣きながら帰ってきた。握手やくしゃみ、食事や入浴、トイレなどの通常の生活ではうつらない。「大丈夫」と語りかけるしかなかった。

 当時の「治療」は安静にすることぐらいしかなく、子どもを公園など外で遊ばせることも少なかった。長女は乳児期、だっこやおんぶを求めてこなかった。「幼心にわかっていたのでは」と思う。「次世代に同じことが起こらないようにしたい」との夫の考えもあり、原告に名を連ねることを決意した。

 現在も症状の進行を止めるため、週に2度注射を打つ。「治るのだろうか。これから先はどうなるのか」と不安が募る。「国は研究を早く進め、治療も安くできるようにしてほしい」


(12/10)

http://mytown.asahi.com/ibaraki/news02.asp?kiji=8345