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2004年12月08日(水) 18時10分

ブログで会社をクビに——米国で解雇例が続出WIRED

 テキサス州の客室乗務員、ワシントン州の派遣社員、ユタ州のウェブデザイナーに共通するものといったら何だろう? 実はこの3人は、いずれも自分のウェブログ(ブログ)に掲載した内容を勤め先にとがめられ、それを理由に解雇されたのだ。

 この数年間のブログの台頭は、必然的に、新しい現象を引き起こすことになった。『 http://www.blogger.com Blogger』(ブロガー)や『 http://www.livejournal.com ライブジャーナル』といった作成ツールを使用するオープンなオンラインフォーラムに気軽に参加し、仕事についてあれこれ書きたてる社員について、各企業が対処せざるを得なくなっているのだ。

 米サン・マイクロシステムズ社や米マイクロソフト社のようにブログに好意的な企業もあるものの、ブログに対する自分の会社の姿勢を知らない社員や、明確な方針を示していない企業で働いている社員が、仕事に関連する記事や写真をブログに掲載すると、結果として、突然ショッキングな事態に陥ることにもなりかねない。この問題の解決には、会社の規定に多少調整を加える必要があるだろうと、専門家は語っている。

 テキサス州の客室乗務員、エレン・シモネッティ氏は今年の秋、米デルタ航空から無給の停職処分を言い渡され、その後福利厚生費等も停止され、結局解雇されたという。シモネッティ氏の訴えによると、解雇の理由は、事実とフィクションを織り交ぜた自分の http://queenofsky.journalspace.com ブログに、制服姿でポーズをとる自分の写真を掲載したことだという。しかし、勤め先としてデルタ航空の名前を具体的にブログで言及したことはなく、写真の件で同社から連絡があってすぐにサイトから写真を削除したとシモネッティ氏は述べる。

 シモネッティ氏は http://www.eeoc.gov/ 米雇用機会均等委員会(EEOC)に不当解雇の訴えを起こしたと話し、デルタ航空に職場復帰を求めるつもりだという。ブログに関する社内方針があるとは知らなかったし、制服の使用指針に違反したことで自分を解雇しようというのなら、他にも解雇すべき社員はたくさんいるとシモネッティ氏は主張している。

 「私は公平な扱いを求めているだけだ」とシモネッティ氏。

 同じような解雇経験を話してくれた他の2人と同様、シモネッティ氏は、どんな結果を招くかを知っていたら、決して写真を掲載しなかったと語る。

 デルタ航空は、同社にブログに関する方針があるのか、さらにはシモネッティ氏が同社の社員だったのかどうかさえもコメントできないと話している。

 「この件に関して言えるのは、社員に関する会社内部の問題について、われわれはコメントしないということだけだ」とデルタ航空では述べている。

 シモネッティ氏と同様の経験をしたマイケル・ハンスコム氏についてマイクロソフト社に問い合わせたときの反応も、デルタ航空と同じようなものだった。ハンスコム氏は今年の10月、米ゼロックス社と契約した派遣社員として、ワシントン州レドモンドにあるマイクロソフト社の敷地内で働いていた。ある日、当時最新のマシンだった『Power Mac G5』(パワーマックG5)が数台、会社に到着した。これを見て、マイクロソフト社が米アップルコンピュータ社のハードウェアを使おうとしているとは面白いと考えたハンスコム氏は、写真を撮り、自分の http://www.michaelhanscom.com ブログに掲載した。

 「あの時点ではそれほど大変なことだとは思わなかった」とハンスコム氏は述べる。

 だが、この事態を見とがめた人物は確かにいた。ハンスコム氏は4日後に上司のオフィスに呼ばれ、問題の写真がハンスコム氏自身のサイトに掲載されている以上、会社は削除するようにと命令することはできないが、ハンスコム氏がマイクロソフト社の敷地から立ち去るように命令することはできると告げられ、すぐにその通りになった。

 ハンスコム氏によると、写真を削除して仕事を続けるという選択肢は与えられず、どのようにしてブログへの掲載が見つかったのか、この件がどのくらい上層部まで伝わっているのかなどはわからないという。

 ただし、ハンスコム氏は上司から、この写真がセキュリティーの侵害とみなされていると告げられたという。写真を撮影した場所、および自分の職場との位置関係について、同じページにやや詳しい記述をしていたことが問題となったのだ。

 マイクロソフト社では、「人事に関する問題にはコメントしない方針なので、お話できることはあまりない」として、ハンスコム氏が解雇された事情については多くを語ろうとしない。

 しかしマイクロソフト社は、社員の多くがブログを立ち上げており、同社の機密保持協定に従うかぎり、会社側もブログ運営を支持していると話している。

 ブログが理由で解雇された社員の有無については、今回の事例がブログにからんでいるかどうかを明言できない以上、マイクロソフト社としては答えられないという。さらに、派遣社員のハンスコム氏が同社の敷地内で働いていた時点で、同社の社員規則の対象になるのかどうかについても、明確な回答はなかった。

 電子フロンティア財団(EFF)で言論の自由の問題を扱う知的所有権専門の弁護士、ウェンディ・セルツァー氏は、企業は一般にどのような理由でも、あるいは理由がなくても社員を解雇できると話す。

 「ある日の従業員の話し方が気に入らなかったといった理由でも、そうしてはいけないという明確な協定でもない限り、企業はその人物をその場で解雇できる」とセルツァー氏は述べる。

 セルツァー氏は、企業は自社の従業員がブログを運営している可能性があることを認識し、ブログに関する明確な方針を作成するべきだと提言している。

 「今、この時点で、コンサルタントたちがブログをマーケティング活動に織り込むよう、企業の説得を始めていたとしてもおかしくないほどなのだから」とセルツァー氏。

 ルイジアナ州立大学のコミュニケーション学助教授で、ブログ学研究者を自称するケイ・トラメル氏も同じ意見だ。トラメル氏はブログを研究しており、博士論文も有名人のブログに関するものだった。

 トラメル氏は、大企業や、ハイテクに明るい社員が多い企業では、すでに問題に対処しているか、少なくとも対処を始めているはずだと述べる。

 「ブログに関して、新たに独立した規定を作らなければならないというものではないと思う。現行の方針を拡大して、適用範囲にブログを含めればいいだろう」とトラメル氏。

 両氏が提言するようなはっきりした規定があれば、ヘザー・アームストロング氏も救われていたかもしれない。ユタ州のウェブデザイナーだったアームストロング氏は、2002年に一緒に仕事をしている人たちの性格について自身のブログに何回か書き込んだところ、その噂が当時の雇用主の耳に入り、まもなくその書き込みを理由に解雇された。

 企業はブログの世界で何が許され、何が許されないかを社員に対して明確にする必要があると、アームストロング氏は述べる。

 「社員に発言する権利があるということを企業が無視し、しかも正式な方針を企業側が打ち出さないかぎり、同様の問題はこれからも起こるだろう」とアームストロング氏は語った。

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(WIRED) - 12月8日18時10分更新

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