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2004年11月20日(土) 00時00分

摘発6% 『おれおれ詐欺』  職業演じ分け“迫真”の声色 東京新聞

 「おれおれ詐欺」の被害が後を絶たない。子や孫を装い「おれだよ、おれ」と高齢者に電話して金を振り込ませる手口からこう呼ばれるようになった。最近では、警察官や弁護士などさまざまな人物が登場する「劇団型」が主流だ。携帯電話や架空口座を使い、匿名性を悪用したかつてない“非面接型の犯罪”だけに捜査は難航している。なぜ歯止めがかからないのか。その背景を探った。 (社会部・茂木紀夫、越守丈太郎)

■親心につけ込む

 「お父さん、車で事故を起こした」

 十月下旬、埼玉県の五十代男性の携帯電話が鳴った。若い男の声に続き、暴力団員風の男が「示談金が二百万円必要だ。今から〇〇駅に来い。金がないならサラ金から借りろ」と強要した。

 二十代の息子と連絡が取れず半信半疑でいた男性は、駅へ急ぐ途中で交番に飛び込んだ。「だまされているのでは」と警察官。男性は通報で駆け付けた捜査員と駅に向かったが、男の姿はなかった。

 男は銀行口座を伝えて、駅前の現金自動預払機(ATM)から金を振り込むよう指示して電話を切った。その後、男からの連絡はない。

 男性は被害に遭わずに済んだが、埼玉県警の捜査員は「犯行グループはすぐには口座番号を教えない。途中でうそがばれて通報される危険を避けるためだ」と言う。相手をATMまで来させるのが手口だ。

■匿名性を悪用

 最近の犯行形態は、子や孫に加え、警察官や弁護士、保険会社員を演じる人物が入れ替わり電話口に出て、相手に考えるすきを与えない。「子どもを誘拐した」と身代金を要求する「おれおれ恐喝」も急増している。

 警視庁の捜査員は「最後まで相手に顔を見られることなく犯行が行われるのが最大の特徴だ。これまで詐欺や恐喝といえば目の前にいる相手が対象だった。おれおれ詐欺は、非面接型で過去に例はない」と指摘する。

 摘発された犯人には、情報技術に精通した十代から二十代が目立つ。

 犯行に使われる携帯電話はプリペイド式に加え、国内からかけても外国から発信したような通話の痕跡しか残らない代物もある。口座はインターネットで不正売買されている第三者名義のものがほとんど。口座を開設するのに身分証を偽造するケースもある。

 ATMから引き出した現金の仲間内での受け渡しに、宅配便などを利用する手口も見られる。仲間同士でさえ互いに顔を合わせないよう警戒する周到さだという。

■難航する捜査

 今月四日、夫が交通事故で相手を死なせたと警察官になりすまして電話し、岡山県内の六十代主婦から葬儀代名目で約二百万円を詐取した疑いで、東京都世田谷区内のマンションをアジトに活動していた男女四人が警視庁に逮捕された。

 犯行が発覚したきっかけは、近所の住民からの「不審な男女が出入りし、室内で入れ代わり立ち代わり電話しているようだ」という通報だった。

 こうした事例はまれで、口座を端緒に犯人を割り出すしかないのが実情だ。捜査当局は、背後に暴力団などがいるとみているが、たどり着くのは容易ではない。

 警察庁によると、今年一−九月のおれおれ詐欺件数は、未遂を含めて約一万一千件。摘発されたのは六百九十四件、二百一人にとどまる。だます口実は、交通事故示談金(58%)▽消費者金融などからの借金返済(27%)▽妊娠中絶費用(6%)などだ。

 筑波大の海保博之教授(認知心理学)は「自分はだまされないと思っても、名前などの個人情報を使った迫真の演技で家族がトラブルに巻き込まれたと思い込んでしまう。本人と連絡を取るのが一番いいが、大金を支払うときに誰かに伝えるなどする。自分が被害者になりうるという当事者意識を育てるのも必要」と警告している。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20041120/mng_____kakushin000.shtml