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2004年10月20日(水) 00時00分

ポイントカードってなんだ?<中> 進む上客優遇 東京新聞

 ポイントカードの原型は、商店街の「スタンプカード」といわれる。スタンプカードは、店で買い物をすればだれでももらえ、はんこがたまると景品や割引などの特典が与えられる。

 一方、ポイントカードは、利用者が住所や生年月日などの個人情報とともに申し込むことが多い。会員になると「ポイント還元」といった割引サービスが受けられるのが一般的だ。

 私たちが提供した情報は、どのように使われているんだろう。

 意外にも「ポイントカードを発行している商店の九割以上が効果的に使っていない」と話すのは、ポイントカードシステムの老舗メーカー、ゼネラルビジネスマシン(本社・大阪市)の新井弘一社長(67)だ。全国で約三百の商店街が同社のシステムを採用している。

 東京都品川区の中延商店街振興組合もその一つ。一九九七年にカード上で印字マークを集めるポイントカードを導入した。百円で一ポイントが付き、五百ポイントになると六百円分の買い物ができる。約百二十店ある商店の半数がポイントサービスを提供している。

 だが、組合の稲垣慶一ポイント事業部長(60)は「システムの古さもあって、どのお客さんが何ポイント持っているかすらも分からない」と明かす。カードの申込時に、住所や生年月日などを記入するが、その情報は一斉にダイレクトメール(DM)を発送する際に利用する程度だという。

 今月末に現行のカードを廃止し、ポイントの書き換えが可能な新カードを導入する。年齢別の集計や来店回数別のランク分けができるようになり、稲垣部長は「よく来る人だけにDMを発送することも簡単にできる」と期待を寄せる。

 ゼネラルビジネスマシンの新井社長は「神奈川県のあるショッピングセンターでポイントカードの会員を分析したところ、6%のお客さんが売り上げの54%を占めていた。この人たちが来店しないと売り上げは半減する」と指摘。上客を逃がさないカード情報の活用が必要だと強調する。

 あまり買わない客より、たくさん買う客にポイントを多く与える−。そんな上客優遇は、すでに始まっている。

 板橋区や豊島区などに十一店を展開するスーパー「よしや」は、登録料百円でポイントカードを発行し、買い物二百円ごとに一ポイントを付与。二百ポイントで二百円分の金券を発行している。

 一カ月間の買い物額が一万五千円以上でスター会員になり、翌月のポイント加算が二倍に。三カ月間の買い物が二十万円以上だと、金額に応じて別途五百−七千五百ポイントのボーナスポイントを加算する。

 スター会員は、会員約十一万人の25%に上る。同社は「利用が多いお客さまに、より多く還元する考え方です。スター会員は月平均十六回も来店していただいてます」と言い、上客の囲い込みに効果を上げているという。

 だが、日本の現状は「米国の十年後を追いかけている。多くの企業が客を一律に扱い、同業他社との『ポイント還元合戦』に陥った結果、体力を消耗している」と指摘するのは、日本NCR(本社・港区)の大竹佳憲・流通システム本部担当部長(57)だ。

 米国の小売業界はポイントカードでなく、会員カードでよく買ってくれる顧客を識別し、優遇する「フリクエント・ショッパー・プログラム」(FSP)を導入。一九八〇年代の不況を乗り切ったといい、日本でも「西武百貨店や関西のイズミヤなど、FSP型のポイントカードで業績を上げる企業は出始めている」という。

 「個人情報を提供する見返りに、非会員より“お得”な買い物ができる」ことを売り物にスタートしたポイントカード。そのシステムは、コンピューター技術の進歩で顧客情報の分析が容易になり、今や「会員になっただけでなく、たくさんの買い物をしなければより“お得”にならない」という段階に入りつつある。

 文・森川清志

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