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2004年10月19日(火) 00時00分

ソフトバンク、ライブドア、楽天 球界参入なぜIT企業 東京新聞

 「やはり」か「いよいよ」か、ソフトバンクの孫正義社長が十八日、プロ野球球団の福岡ダイエーホークスの買収に名乗りを上げた。親会社のスーパー・ダイエーの再建問題とからみ、実現へのハードルはあるが、ホークスのファンは球団存続へ希望を持てる。それにしても、新規参入を表明しているライブドア、楽天とともに、いずれもIT(情報技術)関連企業なのはなぜ?

 「ソフトバンクのプロ野球参入は、ほかのセラミック関係大企業などとともに一年以上前から噂(うわさ)としてはあり、買収表明は予想の範囲だ」とスポーツジャーナリストの二宮清純氏。ダイエー本体が産業再生機構を活用する方針が明らかになるのを見計らい、新たな参入者が手を挙げるシナリオは、球界関係者の間でささやかれていたという。

 全国に四百万人以上のユーザーを持つインターネット・プロバイダーのヤフーBBを経営し、すでに十分に有名な孫社長だが、そのイメージは一般庶民には遠い。

■『孫社長発表 最高の一手』

 CM総合研究所の関根建男代表は「有名ではあるが、ニュース性のある有名さではなかった。当面、マスコミはソフトバンクの動向を報道し、孫社長自身の露出も増える。このタイミングでの表明はまさに最高の一手」と手腕を評価し、「今回の買収表明で、孫社長は金で買えない効果を得ている。それは企業経営者としての若々しさ、新鮮さだ」と続けた。

 ライブドアの堀江貴文社長、楽天の三木谷浩史社長など、孫社長より一回り若い新興IT企業経営者が登場し、よくもあしくも世間の耳目を集めた。「孫社長は昔日の自分を思い返し、歯をぎりぎりさせて悔しがっていたのでは。有名になりたいとの意欲は人一倍持っていると聞くから」

 孫社長は十八日の記者会見で、自分は佐賀県鳥栖市の出身、ソフトバンクは福岡市で創業、同市内の雑居ビルで「木箱を机にして仕事をしていた」などと地元への思い入れを吐露し、ホークス買収、経営への正統性をアピールしている。

 九州滞在中の二宮氏は「地元の反応はおおむね好意的だ。九州のファンはかつて西鉄ライオンズが身売りされ、球団が福岡から出たことが忘れられない。ホークスはプロ野球空白時代を救ってくれた球団。孫社長が現状のまま買収するなら歓迎というムードがある」と現地の様子を分析する。

 さらに、買収が実現した場合の将来像については「一つの会社だけで一つの球団を持つというスタイルは、その会社が問題を抱えたとき球団側にしわ寄せが来る。Jリーグの浦和レッズが三菱自動車一社だけのスポンサードしか受けていなかったら、今ごろチームは消滅している」とし「地域密着型とした上で、複数企業で支える形がこれからの球団経営モデルとなるはず。孫社長も一社だけで長期保有する気はないのでは」とみる。

 球団経営に名乗りを上げているソフトバンク、楽天、ライブドアの三社は、いずれもIT関連の企業だ。二宮氏は「鉄道や映画など、その時代、時代で勢いのある企業が野球に参入してきた。IT系が参入するのはプロ野球の歴史にも合っている。アメリカではメジャーリーグのうち三人がIT系企業の社長だ」と強調する。

 だが、ライブドアがいかがわしいサイトにリンクされていることが既存球団側に問題視され、新興のIT系企業に対し「ベンチャーだか便所だか分からない」(渡辺恒雄・前巨人オーナー)といった“偏見”がある。

 ソフトバンクについても、IT業界に詳しいジャーナリスト谷岡康則氏は「毎年度、約四百億円規模の社債償還の負担があるなど、その事業展開には、不動産会社が土地を買って、それを担保に借金してまた土地を買い、資産を膨らますのと似通った部分がある」と話しており、不安視する指摘は消えない。

 経営評論家の梶原一明氏は「モノづくりの会社と違って製品をつくらないので、評価のものさしが、まだできていない」として「球界参入は、IT企業も経営者も、世間体を意識して、一人前になろうと思った、という表れだろう。日本経済で中核を占めるには、経営者も財界人としての存在感を増すことが不可欠だからだ」と言う。

 孫社長は球団買収の狙いを「消費者の認知度を上げ、企業イメージを大幅に向上させて、ブロードバンド(高速大容量)コンテンツの強化も目指したい」と話した。その知名度アップの「成功体験」が、一九八八年に阪急ブレーブスを買収して球団経営に乗り出したオリックスだ。

 「当時、リース業といっても社会的に認められていなかった。社名もまだオリエント・リースで、社員旅行に出かけると案内板が『オリエント・ソース』になっていたという悲哀を役員から聞かされた。ところが球団買収と八九年の社名変更をきっかけに、あっという間に全国区」(梶原氏)

 宮内義彦オリックス会長は、政財界活動の場も広げ、日本経団連・評議員会副議長、政府の規制改革・民間開放推進会議議長を務める。

■ヤフーBBスタジアム『来季 継続して』

 ソフトバンクの子会社ヤフーは二〇〇四年三月期末、企業のすべての株式を買い取るのに必要な金額、企業の市場価値のことをいう東京株式市場の時価総額のランキングで第七位となり、ホンダ、ソニーといった日本を代表する企業を抜いた。

 十二月から、ソフトバンクは傘下の日本テレコムとともに、基本料が割安の新固定電話サービスを始める。ADSL(非対称デジタル加入者線)サービスのヤフーBBのシェアは業界トップ。〇六年に、携帯電話会社を変更後も、これまでの電話番号をそのまま使える制度が解禁されるのを視野に、携帯電話事業参入も表明している。

 梶原氏は言う。

 「孫氏も、堀江氏、三木谷氏も、企業の知名度アップやブランド力強化だけでなく、本当は野球が商売として十分に成り立つと思っている。旧態依然の球団経営者と違い、自分たちであれば球団を二、三年で黒字転換させられるとアイデアをめぐらせているだろう。企業の敵対的買収などの風土がない日本では、IT業界の球界参入を『歓迎』するかどうかといった平和な議論をしているが、力のある新興勢力が球界に割り込んでいこうとしているのが真実」

   ◇  ◇

 ソフトバンクの動きの波紋は、オリックス・ブルーウェーブの本拠地だった「ヤフーBBスタジアム」を管理する神戸市にも。

 昨年三月、ソフトバンクは同球場の命名権を二年間二億円で購入、「グリーンスタジアム神戸」から改名した。孫社長は十八日、「福岡一本に絞りたい」とし、オリックスと近鉄の合併新球団の準フランチャイズ球場化する同球場の命名権契約を更新しないと語った。

 市の担当者は「公共施設球場の名前がころころ変わることに対する市民の反応が怖い。来季も継続を…」。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20041019/mng_____tokuho__000.shtml