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2004年10月17日(日) 01時43分

10月17日付・読売社説(1)読売新聞

 [BSE対策]「畜産族議員が再び押した横車」 

 専門家の判断が、骨抜きにされてしまった。

 政府がBSE(牛海綿状脳症)の新たな対策をまとめた。現在の全頭検査を改め、生後二十か月以下の牛について、検査を免除する方針を打ち出した。内閣府の食品安全委員会の報告書に基づいた、当然の対応である。

 問題は、全頭検査の継続を望む地方自治体に対し、費用の全額を、政府が三年間にわたって補助することが付け加えられたことだ。

 大半の自治体が検査を続けたいと希望するのは確実だ。事実上、国内の全頭検査が継続されることになる。国産と輸入品で安全対策が違う「二重基準」を政府が作り出すことを意味する。

 二十か月以下の米国産牛肉の輸入解禁が、いずれ日程にのぼる。輸入が再開された場合、同じ二十か月以下の牛肉でも検査済みの国産と、未検査の米国産が混在する事態が生じよう。全国の食肉売り場が混乱する恐れが出てきた。

 全頭検査にこだわる自治体が、費用を負担して独自に実施するならば、やむを得ない。だが、全額補助となれば、全頭検査の継続に、国がお墨付きを与えるようなものだ。

 国際的にも誤解を与える、こうした過剰対策は、直ちに撤回すべきである。

 全頭検査見直しは、食品安全委が時間をかけて検討し、決めたことだ。

 日本では、過去三年間に実施した三百五十万頭の全頭検査で、十四頭のBSE感染牛が見つかった。その中で生後二十一か月が最も若い牛だった。欧州では、生後二十四か月から三十か月以上を検査対象にしている国が大半だ。

 BSEの原因である異常プリオンは、脳や脊髄(せきずい)などに集中的に蓄積するため、これら危険部位を除去すれば、ほかの肉などは安全というのが国際的認識だ。

 日本では、すべての牛から危険部位を除いており、この措置は全頭検査見直し後も続けられる。食品安全委の決定は、こうした現実を総合判断した結果だ。

 食べ物の安全に関する「リスク評価」は食品安全委が行う。その評価を実行する「リスク管理」は、厚生労働省や農林水産省が担当する。三年前のBSE発症を教訓に役割分担が決まったはずだ。

 自民党の族議員が畜産業界の意向を受け、横車を押した。BSE発症時の行き過ぎた業界対策が、補助金不正受給という不祥事を招いたことを忘れたのか。

 全頭検査見直しで、安全への懸念を訴える消費者が少なくないのは事実だ。担当者は丁寧に理由を説明し、不安解消に努めて欲しい。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20041016ig90.htm