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2004年10月16日(土) 17時11分

マルチアングル・被害減らないオレオレ詐欺山形新聞

 このところ、頻繁に“出没”して世間に迷惑をかけるようになったのがクマ、台風、オレオレ詐欺といったあたりか。

 クマについては専門家などの話をまとめると、餌となる木の実が台風で落ち、小動物に食べられてしまったためという。このほか、クマの生息環境が悪化して慢性的な餌不足の状態にあるなど、さまざまな分析があるようだ。

 そのクマの出没原因ともなっている台風は今年9個が列島に上陸、観測史上最多となっている。本県でも農作物を中心に大きな被害が出た。またまた新たな台風が列島に近付いている。

 クマや台風はいわば天災の部類だが、このコラムで本題とするオレオレ詐欺は人間が引き起こす犯罪。オレオレ詐欺の記事が本紙に最初に掲載されたのは昨年6月。庄内で高齢者が息子を装った男に、交通事故の示談金を名目に現金をだまし取られたという内容だった。

 以来、県内では多くの被害が発生している。そのたびに新聞、テレビで手口などが報道されてきたが、被害は減らない。

 県警察によると、昨年は25件の発生で被害額は2000万円だった。今年は9月末現在で未遂を含め33件発生、被害金額は3600万円と昨年1年間を上回っている。

 最近の記事から県内でのケースを見てみよう。68歳の女性が警察を名乗る男から「だんなさんが交通事故を起こした。示談にするため、相手の同乗者の治療費と車の修理費、合わせて220万円を振り込んでもらいたい」と電話で言われ、振り込んだ。

 また37歳の女性が山形署の警察官を装った男から「だんなが事故を起こした。示談にするには192万円が必要」と言われ、銀行の現金自動預払機(ATM)で振り込み、だまし取られている。

 警察庁によると、最近は警察官や弁護士、保険会社関係者を装ったり、あらかじめ入手した名簿などで名前を確認してから親族を名乗るなど、手口が一段と巧妙化しているという。また被害者の7割以上が女性で40—50歳代の女性が全体の3割以上を占める。決してお年寄りだけが被害者になっているわけではなさそう。

 事件の背景には社会を覆う不安感がありそうだ。詐欺の口実となっている交通事故、その可能性は誰にでもある。犯人は「だんなさんが交通事故を起こした」と相手を驚かせてパニック状態にし、考える暇を与えない。「大変だ、お金で済むなら…」といった気持ちにさせられるのだろうか。

 オレオレ詐欺のニュースを見聞きしながら対岸の火事と思っている人でも、いざ自分がその場に立たされると、冷静になれるか、どうか疑わしい。多分、被害者になった人たちがオレオレ詐欺の存在を新聞やテレビで知っていたはずだ。なのに…。この犯罪が今でも続いている理由がこの辺にもありそう。

 また何十万、何百万というお金を犯人指定の口座に振り込んでいる。ATM機のボタンを押すだけで、実際の札束を見たり手に持ったりはしていない。例えば220万円を振り込む際、目の前に札束を積み上げ手に持ったら、もっと別の考えも出てきたのではなかろうか。

 小道具として使われる携帯電話といい、ATMでの決済システムといい、現代社会の便利なシステムが、逆手に取られているように思えてならない。

 警察は、電話を切った後で、必ず身内などに相談し事実を確認する—よう呼び掛けている。

http://www.yamagata-np.co.jp/kiji/20041016/0000003370.html