悪のニュース記事

悪のニュース記事では、消費者問題、宗教問題、ネット事件に関する記事を収集しています。関連するニュースを見つけた方は、登録してください。

また、記事に対するコメントや追加情報を投稿することが出来ます。

記事登録
2004年10月02日(土) 00時00分

郵政公社の事業拡大 『民業』の反応は 『コンビニは集客勝負』 東京新聞

 郵政民営化の基本方針によると、二〇〇七年までは移行期で、民営化スタートの同年、郵便、郵貯、簡保と窓口ネットワークの四事業に分社化される。その日に向け、日本郵政公社は財政状態を改善するため、事業拡大で攻勢に出ている。迎え受ける「民業」は、圧迫と受け止めて対立、あるいは、チャンスとみて提携する。宅配便のヤマト運輸とコンビニ大手ローソンの対応をみた。

 赤いテレマークが目印の郵便局に、青い「LAWSON」のロゴ。東京都渋谷区の代々木郵便局は二〇〇三年八月、郵便局の中の空きスペースにローソン店舗を開設した第一号だ。郵便局内にあり名前が「ポスタルローソン」となっている以外は、通常のローソンと何ら違いはない。酒、たばこも売っている。しかも二十四時間営業だ。

 郵便局のATMで払い戻しをした後、ローソンで菓子を買った近所の女性会社員(28)は「最初は郵便局にローソン? と思ったけど今は普通に利用している。店が狭いから、立ち読みできないけど」と笑った。

 公社とローソンの業務提携で昨年一月から、全国のローソン約七千八百店のほとんどにポストが設置された。「ポスタルローソン」でも、郵便局内にもかかわらず、レジ前にはポストが据え付けられている。

 今年十一月中旬からはいっそう密着が進む。全国のローソンで郵便小包「ゆうパック」の取り扱いが始まるからだ。

 これに「クロネコヤマトの宅急便」のヤマト運輸が激怒した。ローソンから「取扱店契約破棄通知を一方的にたたき付けられたからだ」(ヤマト運輸関係者)。

 八月下旬、全国紙、地方紙にくまなく意見広告を出し「宅配便業界は民間業者が努力を重ねて市場を拡大してきた。公社は税制面などでさまざまな優遇を受けている。民間が切り開いた市場で競争を仕掛けるのはフェアプレーか」と宣戦布告。

■ヤマト側自信「国民は理解」

 さらに、九月二十八日には「不公平、不公正な競争条件での宅配便業界への参入」で独占禁止法違反だとして、郵政公社を相手どり、ローソンとの取引停止を求める訴訟を起こした。訴えの趣旨は意見広告と同じだ。

 ゆうパックは、ほぼ日本全域でヤマト運輸の宅急便より料金が安い。遠隔地間ではほぼ半分の場合もある。だがそれは税制優遇などのゲタを履いた上での勝負だ−というのが同社の主張だ。

 ヤマト運輸広報部は「意見広告の後、一千通を超える意見をいただいた。八割は当社に賛同する意見で、国民の理解はある」と自信をみせる。

 ヤマト運輸全体でみれば、ローソンの宅配便取扱量は0・5%にすぎない。公社の宅配便シェアも6%。目くじらを立てるほどのことではないとの見方もあるが、「シェアの問題ではない。公社は官業として優遇を受けており、同じ土俵では戦えない」(山崎篤社長)というのだ。

 ほかにも宅配便業者はいるのに、なぜヤマト運輸だけが公社と対立しているのか。「それはヤマトだけが公社と利益が直接ぶつかるからだ」と話すのは同社OBでコンサルティング会社「サードエイジスタイル」社長の久留一郎氏。
 
 「ヤマト運輸は創業から、郵便小包と競合する宅配便を主力として市場を切り開いてきた。一方、佐川急便は繊維関係の物流、日本通運は倉庫業務と、もともと郵政公社とぶつからない分野が本業。日通は公社と業務提携しているぐらいだ。だから業界が一致して郵政省(当時)や公社に敵対することはなかった」
 
 ヤマト運輸は一九八三年、重量二キロまでの「Pサイズ」の宅急便の新設のため、運輸省(当時)に運賃の認可を申請したが認められず、発売延期のおわびとともに「運輸省の認可遅れで延期となった」とする新聞広告を掲載し、同省とバトルを演じた経緯がある。
 今回、ヤマト運輸はスジ論を展開する。
 
 「サービスに自信があるなら並行取り扱いしてもらい、その上で郵政公社をたたきつぶせばいいという意見もあった。しかしそれでは不公平な競争を認めることになり、やはり当社の考えとは違う」(同社広報部)
 
 一方、ローソンは、ゆうパックとヤマト運輸の宅急便を同時に取り扱いたい意向だった。「どの商品を買うかは客の自由だ。客が買いたい商品を調達するのが小売り」(ローソン関係者)
 
 ローソンと公社の関係は深い。切手やはがきをコンビニエンスストアで販売し始めたのもローソンで、「切手があるのになんでポストがないの」という顧客の要望からローソンポストにまで発展した。現在ではポストに入りきらないほど郵便物がたまる店もある。

 同社関係者は「正直言ってローソンではがきや切手を売り、ポストを置いていても、公共料金の収納業務と一緒で直接のもうけはほぼゼロだ。ただ、ポストに投函(とうかん)しに来た客が、じゃあついでにジュースを買うか、ということが期待できる。いかに店に来てもらうかがコンビニ各社の勝負のポイントだ」と話す。
 
 ゆうパックの取り扱いもこの延長線上か。
 
 東洋大学経済学部の松原聡教授(経済政策論)は「ローソンは来客数の増加を狙ったのだろう」とし「ただ、ヤマト運輸が降りるとは思っていなかったのでは。その意味ではプラス、マイナスゼロではないかと思う」。
 
 流通業界に詳しい経営コンサルタント秋山登志夫氏は「コンビニは飽和状態」とし、ゆうパックでの提携について「手数料は百円くらいローソンで取れるはず。量を扱うことができれば、手間が少なく、収入になる」と利点をあげるが、「コンビニ業界の戦いというより、ヤマトとゆうパックの窓口の取り合いだ」。
 
■特定郵便局のコンビニ化も?

 松原氏は公社側の事情について「分社化される事業のうち、郵便事業は公社スタート時に五千億円の累積赤字がある。〇七年の民営化までにゼロにするには、一年度で約千億円の黒字が必要だが、返済できる状態でない」と指摘。「ゆうパックは料金値下げ傾向で、独占事業ともいえる信書も料金を上げる状況にない。収益を確保しないと、民営化後の会社経営が成り立たない。それで小包分野でローソンと提携した」と指摘した。
 
 経済ジャーナリストの宇治野憲治氏は「民営化後、過疎地の郵便局で不採算局の行く末が不安視される中、その部分の肩代わりをコンビニに期待しているという面もあるのでは」と話す。特定郵便局のコンビニ化−。その布石がローソンとの提携なのか。
 
 松原氏は「ローソンとの提携は、郵便事業を考えた提携で、あくまで取扱窓口の拡大が目的でしょう。ただ、分割される事業のうち、窓口ネットワークは、物販や旅行代理業などの業務がある。その意味でコンビニ化はあるかもしれない」。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20041002/mng_____tokuho__000.shtml