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2004年09月30日(木) 00時00分

中国“反日仕掛け人”の素顔 ネットで知った日本に反発 東京新聞

 サッカー、アジア・カップの応援で噴出した中国人の反日感情。それを増幅しているのはインターネット上に開設された数々の反日サイトだ。「打倒日本鬼子」「小日本」など日本への敵意に満ちた過激な発言が、若者の民族主義をあおる。中国当局の対日政策にも影響を与える“反日の仕掛け人”は、どのような人々なのか。 (中国総局・鈴木孝昌)

■最大の影響力

 「あなた方の活動は社会に悪影響を与える。停止してください」。北京市政府当局者が反日サイト「愛国者同盟」を主宰する盧雲飛さん(29)に警告したのは、八月三十日だった。中国鉄道省が在来線高速化のために日本の車両採用を決めたことに対し、「日本が中国の鉄道に参入することに反対する」との署名活動を展開。半日余で六万七千人の署名を集めたところで、当局はサイトを閉鎖した。

 中国に数百もあるといわれる反日的サイトの中で、最大の規模と影響力を持つのが二〇〇二年五月に発足した「愛国者同盟」。昨年八月に黒竜江省で旧日本軍の遺棄化学兵器により住民が死傷した事件では、日本政府の補償を求める百万人のネット署名を突き付けた。靖国参拝問題などでは北京の日本大使館前に抗議デモを仕掛ける。

■“日本びいき”

 同盟は「組織ではなく、事務所もない。いかなる政治的背景も収入源もない」というが、実態はかなり組織的。意思決定機関は三十歳前後の男性八人による「総編集室」で、盧さんら二人が総編集長を名乗る。〇一年に靖国神社のこま犬に「死ね」と落書きし、有罪判決を受けた馮錦華元被告もメンバーだ。その下部に約七十人の「管理団隊」があり、サイトの運営に当たる。意見を発表する登録ユーザーは約八万人で、平均年齢は約二十六歳と若者が中心だ。

 創始者の盧さんは重慶市の出身。専門学校でコンピューターを学び、ネット運営会社の技術担当を本業としている。他の創設メンバーもネット会社の社長、国有企業や銀行のエンジニアらIT(情報技術)時代の申し子たち。思想信条よりも、ネットに日常的に接触する環境が彼らの接点となった。

 盧さんらは日中関係が良好だった一九八〇年代に少年時代を過ごした。中国で放映された「おしん」や「一休さん」「鉄腕アトム」を見て育ち、「山口百恵」や「高倉健」にあこがれた。「最近までは日本に悪感情はなかったし、対日外交関係に関心もなかった」

■自国政府批判

 だが、ネット普及で、以前は知らなかった日本の情報が容易に得られるようになった。

 〇二年四月には小泉純一郎首相が二年連続で靖国神社を参拝。日本政府首脳の相次ぐ「核保有」発言…。「日本政府は中日友好の掛け声の裏で、中国人民の感情を刺激し続けているではないか」。「日本の右翼軍国主義に対し反撃しなければならない」と考えるようになったのが、同盟結成につながった。

 盧さんは、現在も「両国関係はひどい状態。明日、戦争が起きても不思議ではない」と憂える。

 ただ、「すべての日本人を敵視することには反対」との冷静さも併せ持つ。サッカーの騒動でも日本側サポーターに物を投げる行為は支持せず、「遠来の客を友好的に迎えよう」との声明も出した。

 反日と同時に「中国政府は日本に譲歩しすぎ」という不満も抱えている。

 中国では反日行動が反政府行動に転化する可能性があり、当局とは一種の緊張関係にある。当局が愛国者同盟サイトを閉鎖したのは、その影響力を恐れているためだ。現時点で再開のめどはたっていない。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20040930/mng_____kakushin000.shtml