悪のニュース記事

悪のニュース記事では、消費者問題、宗教問題、ネット事件に関する記事を収集しています。関連するニュースを見つけた方は、登録してください。

また、記事に対するコメントや追加情報を投稿することが出来ます。

記事登録
2004年09月24日(金) 00時00分

ネット高校 未来ゲット 『アットマーク国際高』30日開校 東京新聞

 国の教育特区を活用し、インターネットによる通信制高校「美川特区 アットマーク国際高等学校」が三十日、開校する。「アットマーク・ラーニング」(品川区、日野公三社長)が設立。全国初の株式会社による通信制高校。二十四時間サポートを特徴にし、メールで担任に相談したり、質問できるユニークな学校だ。

 品川区のアットマーク・ラーニング社にある自習コーナーで、若者が熱心にメモを取っていた。

 特区による今回の高校に先駆け、同社が二〇〇〇年に設立した無認可のネット高校「アットマーク・インターハイスクール」の生徒、飯田貴大さん(18)。静岡県からスクーリング(面接指導)に来ていた。

 スノーボードのインストラクター志望で本場カナダへ修業に行き来する本格派。地元高校を「自分に合わない」と中退し、インターネットで見つけた同校に転校。「自分のペースで授業を受けられ、僕に合ってます」と笑う。

 同校は米国の通信制高校と提携し、米国の高校卒業資格は得られるが、日本の高卒資格はなく、国内の大学はほとんど受験できない。父母から「日本の高卒資格を取れるようにしてほしい」と要望され続け、日野社長はネット制の認可高校の設立を検討してきた。

 「無認可校の生徒は十六歳から四十代までと幅広く、(認可高校を運営できる)自信がついた。不登校や帰国子女、障害のある人など現行の教育制度に適合できず悩んでいる人に応えられる」と考え、昨秋から文部科学省などと折衝を始めた。

 だが、認可されるには学校法人であることや千二百平方メートル以上の校舎など設置基準をクリアしなければならず、ハードルが高かった。そこで、規制緩和を受けられる構造改革特区の活用案が浮上。教育産業の誘致を検討していた石川県美川町が受け入れ、具体化した。

 同町はサイバータウン教育特区に認定され、九月一日に「アットマーク国際高校」を認可した。

 日野社長は「建築士や理容師など国家試験には高校卒業資格が必要なので、その点でも認可高校をつくらなければと考えた」と説明する。

 美川町の北野信行農林水産課長(特区担当)は「株式会社の教育参入なんて怖くて手が出せないと思ったが、四年間の実績と、竹内信孝町長が日野社長と会って教育に取り組む意欲を確認できたので具体化が進んだ」と振り返る。地元有識者らによる学校審議会をお目付け役にして同校の質向上を図る態勢を整え、毎日のように問い合わせてきた政府の懸念を払拭(ふっしょく)したという。

 小松空港から車で二十分の美川町の中学校に拠点を置き、三年以内に同町に本部事務所と研修所を建設する。授業はカメラ付きパソコンによるネット通信で行う。

 同町でのスクーリングは年二日以上登校する義務がある。三年間で七十七単位が卒業に必要。約六割は外国語や数学、国語など基本科目で残りは学校が独自に設定する。目玉は、芥川賞作家の大道珠貴さん、少女雑誌Popteenの新野麻子編集長など「高校生が会いたい人」(日野社長)を招く特別授業。金沢大や信州大との提携授業やIT企業での研修も行う。

 講師の一人、マイクロソフト日本法人元社長の成毛眞さん(インスパイア社長)は「豪州や米国では日本よりはるかにネット高校が普及している。職業意識に気づくチャンスが広がれば、成功すると思う」と話す。

 一方、教育評論家の尾木直樹さんは「これだけインターネットが広がれば、教育のサポートに活用するのは当然だ」とした上でこう指摘する。

 「ネット高校は不登校には有効だが、部活動などリアリティーのある高校活動がない。教師や生徒間の人間関係で培う生活力、生きる力をどうつけるか。開拓者として手腕が問われると思う」

 パソコンがあればどこでも“教室”になる便利さはあるが、意志が弱いと卒業は難しい。ネット高校の可能性は生徒自身の自覚にかかっている。

  ×  ×  × 

 アットマーク国際高校の定員は計三百四十人。転・編入学試験は随時。授業料はコース別で年二十五万円から九十三万八千円。問い合わせは0120−593187。

 文・林倫郎

◆紙面へのご意見、ご要望は「t-hatsu@tokyo-np.co.jp」へ。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/thatu/20040924/mng_____thatu___000.shtml