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2004年09月23日(木) 00時00分

確かなあした 商品先物取引 法改正で規制強化 東京新聞

 商品先物取引で一般消費者が多額の損を出して生活が破たん、商品先物会社とトラブルになるケースが増えている。商品先物の市場は本来、実際に商品を売買する企業のためにあるのに、参加者は個人の方が多い。トラブルの背景には、個人を対象にした先物会社の強引な勧誘や取引手法がある。今年四月に成立した改正商品取引所法が来年五月に施行され、規制が強化されるが、こうした現状は改善されるだろうか。 (西尾 述志)

■背景に強引な勧誘

 「二百万円で取引を始め、ここまで追い詰められるとは…」。会社員の男性(40)は昨年十二月、商品先物会社の営業マンの一時間以上にわたる電話勧誘をきっかけに取引を始めた。

 皮切りは灯油とガソリン。「二週間で四百万円の利益が出て営業マンを信用してしまった」。勧められるまま銀や白金、大豆などに投資すると、次々と損が出た。損が膨らむと「追加証拠金」を納めなくてはいけない。預貯金を使い果たし、親せきに借金し、消費者金融にまで手を出した。

 損失額は二千万円で、うち、千百万円が売買の損失。商品先物取引は預けた証拠金の十倍以上の額で売買するため、損失は巨額に。残る九百万円は手数料で、五カ月間で百四十回以上もの売買を繰り返した結果だ。

 男性は今夏、損害賠償を求めて会社を訴えた。営業マンは取引の仕組みを十分説明せず、「利益が出る」「損を回復できる」と断定的に話して勧誘し、無意味な売買を繰り返した上、取引の中止を拒んだ−などと主張。会社側は、こうした主張を否定して争っている。

 日本の七商品取引所の昨年の取引金額は二百十九兆円。五年で三倍に膨らんだ。一方、各地の消費生活センターへの相談も増え続けている。昨年度は七千六百五十件で五年で二・五倍になった。

 相談の中で消費者が訴えるのは、先物会社が▽長時間の勧誘や脅迫的な勧誘をした▽危険性の説明はせず、必ずもうかると言われた▽無断で売買された▽取引の終了を拒否された−など、一般に「客殺し」と呼ばれる行為が多い。また、取引の知識や資金の余裕がない人への勧誘も目立つ。

 消費者保護の強化を盛り込んだ改正商品取引所法は、拒絶の意思を示した顧客への再勧誘、迷惑を覚える仕方での勧誘、会社名や勧誘目的を隠して勧誘する−など現在は施行規則で禁止している不当な勧誘行為を法律本体による規制に格上げした。

 知識、経験、財産が少なく取引に向かない人は勧誘しない「適合性の原則」違反には、取引の受託許可取り消しを加えるなど、行政処分の内容を厳しくした。先物取引の危険性を顧客に説明することを義務づけ、説明しなかった場合に生じた損害を賠償することも盛り込んだ。

 しかし、本人が望んでいないのに電話や訪問で勧誘する「不招請勧誘」の禁止や、先物会社の不正を助長すると批判が強い売買方法「バイカイ付け出し」の禁止は見送られた。

 改正について、日本商品先物振興協会常務理事の秋田治さんは「勧誘規制の強化は業界にとって恥ずべきこと。このまま苦情や相談が減らなければ、不招請勧誘の禁止まで法制化されかねない。(自主規制で)個別の指導を強化しなければ」と危機感を募らせる。

 商品先物に詳しい弁護士の大田清則さんは「ある程度評価できる法改正だが、実効性を持たせるためには、現在作成中の省令やガイドラインの中身が重要。抜け道があってはならない」と指摘している。

■市場へ参加、大半は個人

 商品先物取引では、将来の一定期日に、灯油や白金、大豆、トウモロコシといった商品を売買することを約束し、その価格を現時点で決める。約束の期日に商品を売買するか、期日前に当初と逆の売買をして、差益や差損を現金で決済する。

 現在、国内の商品取引所は七カ所あり、石油や貴金属、農産物など二十三品目を対象とする。商社や生産者など実際に商品を売買する業者が将来の価格変動リスクを避けるためや、公正な価格形成のために必要な市場とされる。

 だが、日本では市場参加者の大半が一般の個人といわれ、経済産業省商務課も「取引高なら少なくとも七−八割は個人。人数では、もっと多い」とみる。農林水産省が農産物の先物取引について一九九七年にまとめた調査では、参加者の75%が損失を出している。

■バイカイ付け出し

 取引所で売買値段が決まった後で、先物会社が売り買い同数の注文を取引所に届け出て、その値段で成立したことにできる取引方法。通常、希望の値段で売買できるかどうかは、取引所に注文を出さないと分からないが、この方法だと値段を見てから売買できる。

 先物会社は顧客の注文を仲介するだけでなく、自らの資金による売買もする。自社の顧客を相手方にし、確定した値段を見て自社に有利な売買をすれば、顧客に損をさせて利益を出せる。日弁連は、バイカイ付け出しの禁止を求めていた。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20040923/ftu_____kur_____000.shtml