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2004年09月10日(金) 00時00分

IT使い医療情報を公開 東京新聞

 医療事故が相次ぎ「良質な病院、医師を選ぶための情報がもっとほしい」と患者の声が高まる中、情報開示に積極的に取り組む病院が、少しずつだが増えてきた。国が今春、手術の実績や情報開示度を、診療報酬の加算減算に反映させる基準を初めて作ったことも、開示を促しているようだ。ただ、情報の信頼性やプライバシーの保護など課題も少なくない。 (藤 英樹)

 「携帯電話で、患者さんがご自分のカルテをいつでも見られ、書き込みもできるようにしました」と語るのは、千葉県鴨川市にある「亀田総合病院」の亀田信介院長。

 同病院では一九九五年に電子カルテを導入。二年前からは「プラネット」と呼ばれるネットワークシステムを使い、患者が認証カードと暗証番号を入力すれば、同病院ロビーや地元市役所など十数カ所の端末機や、自宅の読み取り機(現在無料で貸し出し)で、カルテを見られるようにした。プラネットは約千七百人の患者が利用しているが、さらに携帯電話で常時カルテにアクセスできるようになった。亀田院長は「IT(情報技術)を使った情報共有は時代のすう勢。透明性を高めることで、患者さんの満足度も高まる。医師側にとっても最初こそ怖さはあるが実はとても便利だとすぐ気づく」と説く。

 同病院ではほかにも、ロビーの端末機やインターネットのホームページ上で、診療科・疾患ごとの手術実施数や、顔写真付きの各医師の経歴や専門領域、認定資格、所属学会などを開示。患者はこれらを参考に医師を選べる。来春、完成する新病棟には、全個室に端末機が設置される。

 端末機を操作していた女性患者(57)は「病院の姿勢は評価できる。主治医のこともよく分かるので、親近感が増します」と話した。

 ただIT化に伴い、どう個人情報を守るか、という難題も。「対策に数億円かけたが、100%安全ではないと患者さんには申し上げている」と亀田院長は話す。

 一方、東京都葛飾区の「新葛飾病院」(清水陽一院長)では、カルテや手術数の開示に加え、医療事故についても患者に積極的に公表している。

 医療訴訟で患者側証人に立つ機会も多い清水院長は「私の理念は『うそをつかない医療』。人間がやる以上、ミスは必ず起きる。要はそれをいかに小さいうちに摘み取るかです。情報開示に努めることで、医師や職員の緊張感を高め、その結果、病院に対する信頼性も高まる」と力説する。

 情報開示に積極的な病院は徐々に増えてはいるが、連合総合生活開発研究所(東京)が勤労者に、「現在の日本の医療に改善が必要と思う問題点」を聞いたところ「情報不足」を訴える声が多く、必要な情報としては、治療法、薬の効能・副作用などが上位を占めた。

 厚生労働省は四月「特掲診療料の施設基準」を改定。手術の年間件数が一定基準を超え、その情報が院内の見やすい場所に掲示されていれば、診療報酬を5%加算、逆に情報開示が不十分な病院は30%減算するとした。

 この基準は病院を選ぶ一つの目安となるが、医療ジャーナリストの油井香代子さんは「ある大学病院では手術数を実際より多めに報告していた。こうした不誠実な病院をチェックするのは難しい。手術の必要性が低い患者に手術をして件数を稼いでいる病院もある。一口に手術数といっても、難易度や病期の違いで単純に比較できないし、病院全体で数は多くても個々の医師の実績はまちまち」と問題点を指摘し、こう続けた。

 「要は個々の医師の質が問題。情報を積極的に開示している病院なら、良質な医療に出合える可能性は高い。ただ、最後は患者自身が医師本人と直接話して、質を見極めてほしい」


http://www.tokyo-np.co.jp/00/ken/20040910/ftu_____ken_____000.shtml