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2004年09月07日(火) 00時00分

タコ飯(兵庫県明石市)読売新聞


大里さんたちが腕をふるったタコのフルコース。左上から時計回りに、タコチップス、タコ飯、タココロッケ、酢の物、湯引き、やわらか煮、天ぷら、シーフードサラダ

 今回は、旨さで知られる明石ダコを使った郷土料理「タコ飯」のご紹介。明石ダコは、明石市の沿岸部と淡路島に挟まれた、潮の流れの速い明石海峡に育ち、身が引き締まり味がよいとされ、全国にその名が知られている。この明石ダコを使った本場の「タコ飯」を求めて、明石市は西二見の漁村を訪ねてみた。

旨味が凝縮した干しダコを使う タコ飯は明石に伝わる漁師の料理

 「タコ飯いうたら生ダコちごて干しダコ使わんならん」。西二見にある漁業組合婦人部の大里千枝子さんがこう説明してくれた。水分がとんで、旨味がぎゅっと詰まった干しダコを使うことで、独特の香ばしさや風味、歯応えが生まれるという。

 兵庫県はタコ類の水揚げ量が約3400トンと、北海道の約2万4000トンに次いで全国2位(平成14年近畿農政局調べ)。その約3分の1を明石市が占める。しかも、「明石のタコは立って歩く」と言われるほど足が太く短く、歯応えがよい。また、鹿之瀬(しかのせ)と呼ばれる明石沖の砂でできた浅瀬では、プランクトンが多く発生し、それを求めて集まるカニやエビなどをエサにして育つので、味もよいとされる。タコ飯が明石の浜の郷土料理として伝わってきたのには、そうした背景がある。



西二見の漁村では今も見られる干しダコ。新鮮なタコの内臓とエラ、スミをとり、頭と足の部分を開いて、竹串をはめ込み、1日〜2日間ほど天日で干す

 そのタコ飯は、作り方も独特。干しダコというのは一言で言えばタコの干物。新鮮なタコの内臓やエラ、スミをとり、頭と足の部分を開いて竹串をはめ込み、1日〜2日間ほど天日干しにする。それを調理する前に、直火であぶって柔らかくする。

 あぶりだすと数分で、台所には香ばしい香りが漂う。「この匂いでご近所さんにタコ飯作ってることがバレてみんな集まってくるんよ」と大里さん。焼きあがった干しダコをはさみで刻み、米、醤油、酒、味醂などと一緒に炊飯器で炊き上げる。

 ちなみに干しダコは、手間がかかるため、最近では作り手が減っている。市場では高いものだと1枚5000円もする。「本物のタコ飯を食べてもらいたい」と大里さんが考案した「たこめしの素」には刻んだ干しダコに、秘伝のタレが付いているので、家庭でも気軽に作れると人気だという。

 出来上がったタコ飯を口に入れると、干しダコからでたダシの旨みと、ほのかに醤油と酒の香りが広がってくる。干しダコは、噛めば噛むほど旨みが染み出てくる。思わず何杯でもお代わりしたくなるほど。

 このほか大里さんの食卓には、ショウガ醤油で食べる湯引き、酢の物、やわらかくて甘い天ぷら、子供のタコを使ったやわらか煮、パリパリとして酒のつまみにぴったりのタコチップス、タコの足がたっぷり入ったタココロッケなどが並んだ。おいしいだけでなく、タコにはタウリンという滋養強壮の成分が多く含まれ、栄養価も高いという。

 「タコ飯に干しダコ使うのは、おいしいいうこともあるけど、夏場とれたタコを干しとけば保存が効くから、冬場の栄養源にもなってたんやろなあ」と大里さん。地元特産品で、保存食としても利用される干しダコを上手に使った、旨くて栄養満点のタコ飯は、まさに浜のおふくろの味である。 (文/中 文子 写真/酒井羊一)


旅行読売2004年10月号より

http://www.yomiuri.co.jp/tabi/gourmet/fudoki/fd041001.htm