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2004年08月26日(木) 00時00分

住基ネット稼働1年 安全、便利さに疑問符 東京新聞

 住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)システムが本格稼働して二十五日で丸一年。大きなトラブルはなかったが、システムの目玉の一つだった住基カードの普及は進まない。横浜市は登録の「選択制」を“堅持”し続け、市民団体にはまだまだ安全性への懸念もある。現状や各方面の声を追った。 (原昌志、金杉貴雄)

■県内の「利用度」

 「いろいろなサービスが受けられます」(県のホームページ)とのふれこみで発行が始まった住基カード。ところが県内三十七市町村のカード発行枚数は今年三月末現在、一万九千百五十四枚。総務省が昨秋、特別交付税の算定のために各市町村から報告を受けた発行見込み数五万七千枚の33・6%にとどまる。

 「いろいろなサービス」が、ほとんどないのが大きな理由だ。発行手数料を伴うカードを持っていて便利になるのは、引っ越しで転出手続きの手間が楽になるくらい。あとは身分証明書代わりといった使い道。

 インターネットを通じて公的な申請や申告をする「電子申請」には住基カードが必要だが、いまのところ電子申請で行えるのは、税の確定申告など一部の手続きのみ。市町村の独自サービスも県内では座間市、湯河原町が印鑑登録証などの機能を持たせているだけだ。

■費用対効果

 座間市は防災や福祉分野での独自サービス拡大も検討したが、「費用対効果を考えると踏み切れない」という。県市町村課も「将来的に電子申請が広がり、多目的利用が拡大すれば、普及は進む」とするが、「当面は大幅の伸びは期待できない」とも。

 住基ネット導入時に、住所地でない市町村でも住民票を入手できる「広域交付」がPRされたが、その評価は“?”といえそう。昨年八月二十五日から今年三月末までの広域交付件数六千三十五件に対し、年間の全交付件数は六百二十三万件。七カ月分で単純計算すると比率は0・001%という数字に、「多い少ないの評価は分からない」と同課。

 さて維持費用。サーバー管理などで県が本年度当初予算で計上したのは二億八千万円。市町村は六億二千万円。全体で九億円をつぎ込んでいる。

■システム問題なし?

 住基ネットに疑問を持つ市民らは、住民票コードの付与取り消しを求めて県に審査請求・再審査請求をしている。住基ネットはプライバシーの侵害で、情報漏えいの危険性があるというのが主な理由だ。

 これまでに三十件が審査され、十六件が棄却・却下。十四件は現在も審査中となっているが、県市町村課は「大きな問題はなく、全体として安定してきた。安全性は確保されている」とする。

 「住基ネットに『不参加』を! 横浜市民の会」共同代表の宮崎俊郎さんは「まだ利用が限定されている中で大丈夫というのは大きな誤り。今後拡大されれば、漏えいの危険性は高まる。また住民管理の道具にされる懸念もある」と指摘。「市民の選択制は次善の策だが、国は認めない。多くの自治体が声を挙げ、認めさせるべきだ」と話す。

■横浜市は『選択制』維持

 「市民選択制」をとっている横浜市は、「住基ネットの安全性が総合的に確認できていない」として、依然として全員参加する状況にないとしている。

 今年七月段階では、外国籍を除く市民約三百五十万人のうち、住基ネットに非通知を申し出ている市民は約八十四万人。24%の割合は一昨年からほぼ変化がなく、四人に一人が不安を感じ自らの意思で非通知を求めている。

 同市は、個人情報を漏えいされた場合の罰則や情報に対するアクセス記録の開示などが整備されてはきたが、(1)各市町村で住基ネットがインターネットに接続されている懸念が消えない(2)個人情報の管理は市町村長の責務とされているが、国の責任が明確ではない(3)住基ネットを将来どうしていくか不透明−などの問題点を指摘。市民の個人情報を守るための担保を高く要求している。

 住基ネットに参加していない東京都杉並区が横浜市と同じ選択制を採用しようとしているが、国は認めていない。同区は国と都を相手取り提訴したが、麻生太郎総務相は「横浜市も違法状態だ」とし、市にも早期の全員参加を求めている。

 これに対し中田宏市長は、「横浜方式は、全員参加を前提としつつ安全性が確認されるまで段階的に参加する。全く違法ではない」と反論。「むしろ国が個人情報保護法を作らないまま稼働させたのに、ほかの市町村はよく参加した、お偉いなと思っている」と皮肉を込めて語り、国が是正勧告など強硬な姿勢で迫ってきた場合にも対抗するとしている。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kgw/20040826/lcl_____kgw_____000.shtml