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2004年08月03日(火) 00時00分

郵政民営化 暮らしの損得どうなる 経済財政諮問会議に臨む小泉首相(左)と日本郵政公社の生田総裁(右端)=2日午後、首相官邸で 東京新聞

 郵政民営化に向けた政府の経済財政諮問会議による集中審議が始まった。政府側は今週中に「半分以上の争点で方向性を見いだしたい」と息巻くが、国民にはまだ心の準備はできていない。さてこの機会に、郵政民営化が国民に何をもたらすのか、「利用者」と「納税者」の立場に分けて論点を整理した。 (経済部・花井勝規)

■サービス拡大か

 「民営化したら郵便局はもっと便利になる」。竹中平蔵金融相は、郵政民営化がもたらすメリットを力説する。

 政府で検討されている“郵便局変身作戦”はこんな感じだ。

 日本郵政公社を民間会社に移行した後、郵便や郵貯、簡保、郵便局窓口ネットワーク会社を設立。全国二万四千七百の郵便局は、窓口ネットワーク会社が管轄する。

 郵便局の窓口はこれまで通り郵政三事業の商品・サービスを扱うほか、民間金融機関の保険、投資信託など各種金融商品を販売する。

 現在、一部の銀行に限られている口座への送金もすべての銀行で可能となる。

 コンビニエンスストアとの提携を進め、各地にコンビニ併設型の郵便局が誕生。郵便局長の兼業は自由化され、二十四時間営業や飲食店との併設局が各地にできる。

■地方切り捨てか

 一方、民営化後の新会社が採算性の低い郵便局を統廃合する可能性も。議論では、郵便について全国一律のサービスの維持で合意。だが郵貯、簡保の一律サービスまで法律で義務付けする案について反対論が続出。郵貯、簡保を取り扱わない郵便局が出現する可能性は依然、残った。

 国鉄民営化で多くの路線が廃線の憂き目を見た北海道。五月に旭川市で開かれた郵政民営化の地方懇談会では、参加者から懸念の声が噴出した。

 農村部の警戒心も強い。岐阜県郡上市の主婦(67)は「足腰の弱った年寄りばかりの町で郵便局がなくなったら大変やわ」と嘆く。農協の統廃合が進み、郵便局をたよるお年寄りは増えている。

 論議では、郵便局は「国民に不可欠な生活インフラ」という認識では一致している。ただ民営化後も都市、地方分け隔てなくサービスを享受できるのか不透明だ。

■新会社、政府出資でリスクも

 国民は郵政事業の「利用者」であると同時に「納税者」でもある。納税者ならば、だれもが間接的に負担している「見えない国民負担」がある。

 国営の日本郵政公社は法人税など各種税金のほか、預金保険機構への保険料支払いなども免除されている。それらの「見えない国民負担」ともいうべき“郵政コスト”は、約一兆一千億円に上る。一世帯当たりだと約二万三千円だ。民営化後はこうした負担は解消され、納税者にはメリットだ。

 さらに民営化時に政府が新会社へ100%出資する計画が検討されている。政府は持ち株を徐々に市場で売却する方針。新会社の経営が軌道に乗り、株が高い値段で売れれば、国庫に巨額のお金が戻ってくる。

 公社の時価総額からみて「株式の価値は四十兆円を超える」との試算もある。逆に、新会社が事業に失敗し経営破たんすれば、国庫は出資の分だけ穴があくことになる。納税者にとって新会社は「リスクのある」存在となる。

 一方、郵貯と簡保を合わせた三百五十兆円の巨額な資金は、“無駄遣いの宝庫”だった。郵貯二百三十兆円のうち百八十兆円については別に管理し使途を制限する。

 採算無視の非効率的な国の“豪華施設”など、郵政マネーが生んだ無駄が、週内の議論で一掃される可能性は低そうだ。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20040803/mng_____kakushin000.shtml