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2004年07月29日(木) 00時00分

ネットで番組の『質』評価しよう テレビ朝日と慶応大が協力 『リサーチQ』 テレビ番組の感想をパソコンで回答する今田さん=都内で 東京新聞

 「『冬ソナ』視聴率が15%を突破」「女子バレー世界予選が20%超」…。毎日のように話題となるテレビの視聴率。ところで「視聴質」という言葉をご存じだろうか。視聴率操作事件をきっかけに、テレビ番組を「量」(視聴率)だけでなく「質」でも評価しようという動きが出てきた。七年前からテレビ朝日と慶応大が共同で取り組んでいる、視聴質研究プロジェクト「リサーチQ」を紹介する。 (慶応大・政策メディア研究科博士課程 小野田 哲弥)

 「毎日パソコンでメールを確認したりネットにつないだりしているうち、リサーチQに答えるのが習慣になっちゃって…」。東京都内の主婦今田弘子さんは、テレビ視聴質のサイト「リサーチQ」にアクセスし、前夜のテレビ番組の評価や感想を書き込むのが、毎朝の日課だ。「ポイントをためてプレゼントに応募できるのが魅力。番組への意見を書いても、テレビ局が動いてくれるなんて信じてませんもの」と本音もちょっぴり。

 サイトを運営するテレビ朝日に取材したところ、同社内では、リアルタイムでリサーチQの回答結果が見られるだけでなく、毎朝、二日前の集計レポートが関係者全員に配られるという。

 平城隆司チーフプロデューサーは「バラエティー番組ではたいがい初回の視聴率は低く、その後どう伸びるかにかかっている。だから、どのコーナーが視聴者に受けたのかいち早く知りたい。リサーチQは番組放送中からどんどん反応が入ってきて、とても参考になる」と評価。「ミュージックステーション」のプロデューサー西村裕明さんも、リサーチQに独自の質問を加えることでより詳細に視聴者動向を探り、番組づくりに役立てているという。

 リサーチQプロジェクトは一九九七年にスタート。初年度ユーザー数は百人程度だったが、いまでは三万人の巨大サイトだ。一日に五千人から回答が寄せられるが、共同研究者の慶応大環境情報学部の熊坂賢次教授は「五千人ではまだ少ない。このサイトは数十万人がアクセスしてもおかしくない。そうなった時、さらに確かな『質』の検証ができる」と言う。

 昨年八月、木村拓哉さん主演のTBSのドラマ「GOOD LUCK!!」と草なぎ剛さん主演のフジテレビのドラマ「僕の生きる道」とを比較した研究成果が発表された。平均視聴率では前者が30%強で後者が20%弱と前者優位だが、放送回ごとの視聴質で比較すると逆転する可能性があるという結果だった。編成部の檀野竹美さんは「視聴率は必要な客観的データだが、率だけでは測れない部分を視聴質で補完することが大切な時代になってきた」と語った。

 熊坂教授は「同じ三十代の女性でも、仕事、恋愛、子育てなど、ライフスタイルの比重がそれぞれ違う。趣味なども多様化しているのに、視聴率が高ければいいという数の論理だけでは不十分。万人受けしなくても固定層から強く支持されるような番組が、視聴質調査によって生まれてくるといい」とテレビ業界へのインパクトを期待する。

 リサーチQにも課題はある。インターネットを使うので、お年寄りや子どもなど、視聴者の全年齢層をカバーしているとはいえない。しかし、双方向デジタル放送が一般化したり、携帯電話がより進化すれば、もっと手軽な調査方法も可能となるだろう。

 取材を通じて、視聴質が無視できない存在になっていることを肌で感じた。視聴者の意見が番組制作に反映され、スポンサーの利益にも生かされているリサーチQ。テレビ文化をより豊かなものにしてくれることを期待したい。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/dgi/20040729/ftu_____dgi_____001.shtml