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2004年07月27日(火) 00時00分

白骨温泉騒動 “いい湯”につかりたい 東京新聞

 名高い白骨温泉で、こっそり入浴剤が使われていた。温泉好きの国民をがっかりさせる出来事だ。業界も行政も、国民が温泉に何を求めているのか、真剣に考え直す時である。

 白骨温泉(長野県安曇村)は、含まれる石灰分で湯が乳白色になるので有名だ。ところが一九九六年ごろから公共野天風呂の湯が透明になったため、入浴剤を入れ白濁させていた。ほかに複数の旅館でも、入浴剤使用が発覚した。

 わが国有数の温泉県・長野県の中で、同温泉は中里介山の小説『大菩薩峠』にも登場、泉質のよいことで専門家や温泉ファンに評価が高い。それだけに、今回の騒ぎは実に残念である。

 団体客に頼り、家族・個人客を無視した一部の温泉観光地は、バブル経済崩壊とともに衰退した。だが厳しい経済動向や自然破壊の中で、心身のやすらぎをと国民の温泉志向は近年強まり、真に「いい湯」が求められてもいる。これに対して、業界が十分に応えているとはいえない。

 白骨のほかにも昨年八月、愛知県吉良町の吉良温泉で、約二十年前から源泉が枯渇していたのを隠し、天然温泉の効能を宣伝していた不当表示が発覚した。二〇〇二年夏、宮崎県日向市の第三セクター経営の循環式温泉施設で、無責任な管理によるレジオネラ菌の大規模集団感染が起き、死者七人を出した。温泉をめぐる不祥事は続発している。

 不祥事の根を絶ち、国民の温泉に対する期待に応える第一歩は、正確で利用者にわかりやすい表示の採用である。環境省や一部自治体、日本温泉協会などこれまでも動きはあったが、この際根本的な情報公開に踏み出すべきだ。

 温泉法が義務づける成分表示は源泉のみで、しかも一度利用を許可されると、その後の検査は必要ない。だが利用者が知りたいのは、実際に利用する施設、浴槽の湯の成分だ。それも定期的に再検査を繰り返した最新の情報が求められる。

 源泉の湯をそのままかけ流し利用するのか、加水・加温するのか、浴槽の湯を循環、ろ過し再利用するのかなど、湯の管理方法も公表すべきだ。源泉が乏しい所では循環式も避けられないが、レジオネラ菌対策を塩素滅菌に頼るか、湯を入れ替え清掃を徹底するかで経営者の見識が試される。

 行政は利用者の視点で、施設の表示や衛生管理に厳しい姿勢で臨むのは当然だ。しかし、レジオネラ菌増殖の心配がない源泉かけ流し施設にまで、塩素投入を強いる硬直した形式主義も、この際改めるべきだ。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20040727/col_____sha_____003.shtml