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2004年07月27日(火) 10時51分

河川に医薬品成分 排泄後に下水経由、生態系への影響も朝日新聞

 首都圏の河川水や下水から、解熱消炎鎮痛剤や殺菌剤など、医薬品や身体ケア製品に含まれる化学物質の検出報告が相次いでいる。人間が服用したあと体内で代謝されず排泄(はいせつ)されたり、皮膚に塗ったものが洗い流されたりしたと考えられている。生態系への影響や、抗生物質が効かない耐性菌の出現を懸念する声もあり、国立環境研究所(茨城県つくば市)が、優先的に調べる物質の選定と分析方法の検討に入った。

 横浜国立大の益永茂樹教授(環境管理学)、清野敦子さんらのグループが、時期や採取場所を変えて神奈川県内の河川水や下水処理場放流水を調べたところ、抗てんかん薬カルバマゼピンが計25回の採水すべてで検出された。最大濃度は91.5ppt(pptは1兆分の1)で、欧米での同種調査と同じ程度だった。

 抗不整脈薬プロプラノロール(25回中24回)や解熱消炎鎮痛剤イブプロフェン(同22回)も検出されたほか、合成抗菌剤や抗生物質も高頻度で複数種類見つかった。医薬品成分は、下水処理場放流水で最も高く、都市河川の多摩川や鶴見川がそれに次ぎ、農業・畜産河川の金目川が最も低かった。

 高田秀重・東京農工大助教授(環境有機地球化学)らは、東京都内の4カ所の下水処理センターへ流入する水と、処理後の放流水を調べた。その結果、流入水ではイブプロフェンや解熱鎮痛剤のアスピリンが数百〜数千pptと比較的高濃度で検出された。放流水の濃度は10分の1程度に下がっており、下水処理である程度除去されていた。

 だが、殺菌剤のトリクロサンやかゆみ止めのクロタミトン、解熱消炎鎮痛剤のメフェナム酸は、処理後の放流水でも濃度があまり下がらず、数百pptだった。

 医薬品起源の化学物質については、90年代から欧州で水環境からの微量検出が続いて関心が高まり、米国でも環境保護庁が生態系への影響の有無を調べている。

 検出された濃度は、環境中で同じように検出される農薬の濃度に比べると低いが、内分泌撹乱(かくらん)化学物質(環境ホルモン)と同程度。研究者らは「いろいろな物質が存在するはずで、未知の複合的作用がある可能性もある」「抗生物質の環境流出で、薬剤耐性菌の発生などの影響が出るかも知れない」などと話す。

    ◇

 藤原寿和・化学物質問題市民研究会代表の話 以前にも河川に流れ出した医薬品による生態系破壊を警告した研究者がいたが、調査されなかった。医薬品には環境ホルモン作用や発がん性が指摘されるものがある。生態系ばかりでなく、下流で飲料水になるので人間に影響する恐れも考えられ、流出している成分や量などの実態調査をきちんとするべきだ。(07/27 10:51)

http://www.asahi.com/science/update/0727/003.html