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2004年07月08日(木) 00時00分

長官銃撃事件 解明へ慎重な詰めを 東京新聞

 粘り強い捜査は評価できるが、事件を防げなかった不手際、捜査のもたつきで警察に対する国民の信頼は揺らいでいる。信頼回復へ最後の詰めを慎重にし、一連の事件への対応を検証すべきだ。

 警察庁長官銃撃事件の捜査がやっと動きだした。宗教団体が絡んだとみられる難しい事件に取り組んだ捜査員の苦悩は大変なものだっただろう。努力が実ったとはいえ、警察関係者は警察の威信が既に大きく傷ついていることを肝に銘ずべきだ。

 治安の最高責任者に対する狙撃を許してしまったことだけでも不名誉きわまるのに、容疑者逮捕の難航ぶりは目に余る。おまけに、逮捕された容疑者たちが事件に関与したことが事実だとしても、現段階では実行犯を特定できず、凶器の拳銃も見つかっていないのだから事件の解明はまだこれからだ。

 発生翌年の一九九六年春、警視庁は今回逮捕された小杉敏行元巡査長の「自分が撃った」という供述に振り回され、結局、事件を解決できなかった。新局面を迎えた捜査では失敗が絶対許されない。供述に頼りすぎず客観証拠を積み重ねる慎重な捜査を進めなければならない。

 それと同時に行われなければならないのは一連のオウム真理教(現アーレフ)事件の捜査をすべて洗い直し、どこに問題があったのか国民に明らかにすることである。長官狙撃が教団の組織的犯行だとすれば、なおさらその作業は重要になる。

 数々のオウム事件では警察がもっと敏感に対応していれば防げたものがある、と指摘されている。警察庁は捜査が一段落した九六年、科学捜査の充実や広域組織犯罪の捜査力強化などを打ち出したし、長官銃撃事件では、警備が不十分だったとして警視総監らが処分された。

 しかし、個々の事件で捜査にどのような問題点があり、何をなすべきだったのかという警察側の自己批判を国民は聞いていない。

 警視庁は小杉元巡査長が信徒であることに気づかず、一時はオウム事件捜査本部のメンバーに加えていた。当然、情報は教団側に漏れた。弁護士一家殺害事件の初動捜査つまずき、松本サリン事件の見込み捜査の誤り、地下鉄サリン事件の先駆けといわれる霞ケ関駅へのボツリヌス菌入り噴霧器放置など、検証すべき事項は数多い。

 刑法犯の増加、治安悪化などを理由に警察力の強化を求める声が上がっている。しかし、その前になすべきは、過去の捜査はどこに問題があり、何が足りなかったのかを分析して国民に提示することである。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20040708/col_____sha_____002.shtml