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2004年07月07日(水) 17時30分

米大統領選:ネット戦略を進化させる両陣営WIRED

 先月末の土曜日、ジョン・ケリー候補は、キティー・マーティンさんがサンフランシスコの自宅で開いた資金集めパーティーで短い演説を行なうこともできたはずだ。しかしケリー候補はその日、全国の1200ヵ所以上のホーム・パーティー会場に集まった何万人もの支援者に向かって電話会議システムで話しかけた。残念ながら、マーティンさんの家のリビングルームに電話会議用のセッティングをするのは無理だった。

 しかし、誰もそんなことは気にしていないようだった。家族や友人、仕事仲間など50名以上が、ケリー候補の選挙費用に合計900ドルを寄付した。なかにはパーティーが終わってから居残る人さえいた。マーティンさんによると、「政治に関する会話が盛んに飛び交っていた」という。

 ケリー陣営のインターネット戦略・運営責任者のジョシュ・ロス氏は、まさにこのような効果をねらっている。米民主党の全国大会まであと1ヵ月を切り、ケリー候補のオンライン戦略の重点は、資金集めよりも、支持者の結集や新しい支援者の開拓に移っている。党の大統領候補の指名を受けたあとは、ケリー候補は7500万ドルの公的資金だけで選挙戦を戦わなければならない。

 ロス氏は次のように述べている。「全国大会が近づくにつれ、草の根の組織化に、より多くの時間を割くことになるだろう。何万というボランティア人材を確保しようと考えたとき、そういう人を見つけ出そうというやり方では不可能だ。ボランティアにはどうしても、自ら手をあげ協力の意思を示してもらう必要がある。インターネットのおかげで、このような参加と意思表示が具体的に可能になった」

 より多数の参加者を募るため、 http://www.johnkerry.com/ ケリー候補の公式ウェブサイトでは先頃、 http://www.wired.com/news/images/0,2334,64066-13237,00.html オンラインのボランティア・センターに新機能を追加し(スクリーンショット)、支援者たちによるイベントの自主計画、ボランティア募集、独自のウェブページ作成、草の根の寄付金パーティー開催などの手助けをするようになった。さらに、投票者獲得プログラムや、ボランティアが新聞・雑誌の編集者宛に簡単に手紙を送れるようにするアプリケーションもまもなく登場する予定だ。「われわれはツールを提供しているだけで、ボランティアが熱意を提供してくれる」とロス氏は説明している。

 大統領選挙でウェブが選挙本部の延長として利用されるのは今回が初めてだ。ケリー、ブッシュ両陣営とも、インターネットを利用して大きな成果を挙げたハワード・ディーン候補の戦略を模倣している。ディーン候補が集会を組織したのと同じように、ケリー候補とブッシュ大統領はホーム・パーティーを開催している。ディーン候補の支持者はウェブログを作り候補者を応援した。ケリー候補のウェブサイトにはブログがある。ブッシュ陣営のサイトにもブログはあるが、コメント機能はない。ディーン候補はウェブで寄付を呼びかけた。ケリー候補とブッシュ大統領はオンラインを通じて寄付金を集めている。

 ディーン候補は、民主党予備選挙前の数ヵ月間にオンラインを通じた寄付によって4000万ドル以上を集めた。ケリー候補はこれを上回る記録を残している。ケリー候補は3ヵ月間で40万件の寄付を受け、およそ5000万ドルを集めた(平均募金額は108ドルだった)。さらに6月中頃に民主党の候補指名を確実なものとして以来、1億ドル以上を集めた。「誰の予想をも超えていた」とロス氏。

 これとは対照的に、 http://www.wired.com/news/politics/0,1283,63942,00.html ブッシュ大統領の選挙事務所はオンラインによる寄付を760万ドルしか集めていない(平均募金額はやはり100ドル程度)。しかし再選を目指すブッシュ大統領は資金獲得に際して、それほどインターネットに頼る必要はなかった。入手できる最新の数字によると、5月末現在、ブッシュ陣営は2億1340万ドルの資金を確保しているという。

 両陣営が今目指しているのは、ディーン候補がなしえなかったこと、つまり選挙戦で勝利をおさめることだ。『 http://www.pewinternet.org/ ピュー・インターネット・アンド・アメリカン・ライフ・プロジェクト』のコンサルタント、マイケル・コーンフィールド氏は次のように指摘している。「従来は運動資金集めが、最優先の仕事だった。しかし今は、実戦部隊を組織する手段としてインターネットを利用する仕事が、これに置き換わっている。投票してもらえなければ、たとえ世界中の金を集めたとしても役に立たない」

 ケリー、ブッシュ両候補は、ディーン候補のインターネット戦略を取り込むだけでなく、お互いの戦略を自陣営のために利用している。ケリー候補側が、ブッシュ大統領の選挙運動側が日々行なった発言に反論する機能『ディーバンカー』(D-bunker)をサイトに追加したところ、ブッシュ側はすぐに『ディーバンカー・バスター』(D-bunker Buster)でこれに対抗した。ブッシュ陣営のサイトは昨年秋、手紙作成用アプリケーションを追加している。ケリー候補のサイトでも今後数週間のうちに同様のアプリケーションを公開する予定だ。

 ケリー候補のウェブサイトでは組織的な投書作戦『メディア・コア』(Media Corps)を展開している。全国のボランティアが手分けして、地方紙の編集者宛に手紙を書くというものだ。ロス氏によると、近く登場するソフトウェア・アプリケーションを使えば、支持者は編集者に手紙を書いたりラジオのトーク番組に電話をかけたりすることが容易にできるようになるという。支持者は、郵便番号を入力するだけで、地元の新聞社やラジオ局の連絡先リストを入手できる。このプログラムは効果的な手紙の書き方について、ヒントも与えてくれる。

 しかしこの点に関しては、 http://www.georgewbush.com/ ブッシュ候補の公式ウェブサイトが一歩先を行っている。ブッシュ候補の電子選挙対策責任者、マイケル・ターク氏によると、同サイトの投書用プログラムは、郵便番号地域ではなくピンポイントの地点に対応している。選挙本部は、『マップクエスト』で使われているのと同じようなマッピング・ソフトウェアを利用して、住所にもとづいて支持者の居住地を特定し、同じ郵便番号地域内というだけでなく、支持者の家に最も近い新聞社やラジオ局を伝える仕組みになっている。

 ケリー候補のウェブサイトは最近、支持者による草の根活動を支援するための新しいツールをいくつか導入した。さらに今後は投票者獲得プログラムも追加するという。ボランティアはこのプログラムを使って、友人や家族宛に、オンライン選挙人登録用紙へのアクセス方法や郵便投票の方法を説明する電子メールを送付できる。

 ブッシュ陣営は、マッピング・ソフトウェアと投票者獲得行動を合体させようとしている。ボランティアは、自分の家の周辺でまだ選挙人登録をすませていない、あるいは誰に投票するかまだ決めていない有権者が住んでいる場所を示す地図をダウンロードできるようになる。ブッシュ陣営は、アイオワとニューハンプシャーでの共和党予備選挙の際、投票所でこのソフトウェアのテストを行なった。「あらゆる政治は地方にある、という諺があるが、われわれのウェブサイトはまさに、政治の舞台を地方にもたらすだけでなく、有権者の隣近所のレベルで展開しているわけだ」とターク氏は語った。

 選挙が近づくにつれ、両陣営が電子メールのリストをどのように活用して、有権者から投票を獲得するかが大きな問題になるだろう、とジョージ・ワシントン大学 http://www.ipdi.org/ 政治・民主主義・インターネット研究所の責任者、キャロル・ダー氏は述べる。ケリー陣営のリストには100万人以上の支持者の電子メール・アドレスが含まれている。いっぽうのブッシュ陣営は、600万人以上だ。

 「どちらのウェブサイトもよくできている。問題はウェブサイトの完成度ではなく、それをどうやって支援の核とするかだ」とダー氏は語った。

[日本語版:藤原聡美/湯田賢司]

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(WIRED)

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