悪のニュース記事

悪のニュース記事では、消費者問題、宗教問題、ネット事件に関する記事を収集しています。関連するニュースを見つけた方は、登録してください。

また、記事に対するコメントや追加情報を投稿することが出来ます。

記事登録
2004年07月07日(水) 11時56分

<警察庁長官狙撃>オウム真理教元幹部3人と元警官を逮捕毎日新聞

 国松孝次・警察庁長官(67)=当時=が95年3月、東京都荒川区の自宅マンション敷地内で狙撃され重傷を負った事件で、オウム真理教(アーレフに改称)の元幹部2人と、信者だった警視庁元巡査長が関与した疑いが強まったとして、南千住署捜査本部は7日、3人を殺人未遂容疑で逮捕した。また、同庁公安部は別の元幹部を爆発物取締罰則違反容疑で逮捕し、狙撃事件との関連についても追及する。警察トップが狙撃されるという史上例のないテロ事件の捜査が、発生から9年を過ぎて解決に向けて動き始めた。

 逮捕されたのは、殺人未遂容疑が▽教団「防衛庁」元長官、植村(旧姓・岐部)哲也(49)=高知市朝倉▽「建設省」元幹部、砂押光朗(36)=埼玉県八潮市中央3▽元巡査長、小杉敏行(39)=静岡県相良町=の3容疑者。爆発物取締罰則違反容疑が、「法皇官房」元幹部、石川公一容疑者(35)=東京都渋谷区元代々木町。

 調べでは、植村容疑者ら3人は共謀し、95年3月30日午前8時半ごろ、荒川区南千住6の自宅マンション前で、出勤しようと公用車に向かって歩いていた国松長官に向けて拳銃4発を撃ち、腹などに3発が当たり全治1年半の重傷を負わせた疑い。砂押、石川両容疑者はいずれも容疑を否認している。

 捜査本部は、植村、小杉両容疑者は事件当日、現場近くにいたとみている。小杉容疑者が事前に下見をし、植村容疑者は実行役の逃走を助けるためダミー役をしたという。砂押容疑者は現場にはいなかったが、事件の約1時間後、報道機関に電話をかけ、教団に対する捜査を止めるよう間接的に脅迫した。鑑定技術の進歩もあり、砂押容疑者の声と判明した。

 狙撃に使用された拳銃は38口径回転式の米コルト社製「パイソン」とみられる。実行役について捜査本部は「今の段階では明らかでない」として特定せず、逮捕した4人以外に実行役がいる可能性も含め追及する。元教団代表、松本智津夫(麻原彰晃)被告(49)=殺人罪などで死刑判決、控訴中=の指示があったかどうかについても捜査する。

 小杉容疑者は97年1月、捜査情報を教団に漏らしたとして地方公務員法違反容疑で書類送検されたが、後に起訴猶予処分となった。捜査の課程で、小杉容疑者は「私が撃った」と供述していたが、供述がめまぐるしく変わり矛盾点が多いことなどから、狙撃については立件を見送っていた。

 狙撃事件直前の95年3月20日には地下鉄サリン事件が発生。同22日には警視庁が山梨県上九一色村の教団施設などを別の容疑で家宅捜索している。捜査本部は、教団に対する捜査を中止させ、捜査をかく乱するために、植村容疑者らが狙撃を計画したとみている。

 石川容疑者は同年3月19日夜、教団に好意的な論評をしていた宗教学者が以前住んでいたマンションに、捜査のかく乱のため時限式発火装置を仕掛け、ガラス戸などを爆破したとして、爆発物取締罰則違反容疑で逮捕した。

 ◇狙撃実行役の特定が不可欠=解説

 警視庁が狙撃の実行役を特定しないまま、強制捜査に乗り出した背景には、かつて供述が変遷しているとして立件を見送った警視庁元巡査長、小杉敏行容疑者(39)が、事件への関与をはっきりさせてきたことがあるとみられる。捜査幹部は「当時はあいまいな点や矛盾点があったが、現在は関与が明らかになった」と自信を見せた。

 小杉容疑者は96年当時も「1発目から3発目までが当たり、4発目が外れた」「狙撃後、途中で道を間違えそうになった」など、実行役しか知り得ない点を明らかにしていた。

 しかし、教団によるマインドコントロール下にあったと見られ、「銃を捨てた」とする神田川で、拳銃は見つからなかった。他にも▽「狙撃直後に会った」と説明した教団幹部が当時、日本にいなかった▽「寮の部屋で拳銃を構えているところを同僚に見られた」と供述したが、同僚は見ていない——など、矛盾点が多くあった。

 ただ、立件は見送られたが、東京地検幹部は当時から「『シロ』と結論づけたわけではない。警視庁が引き続き捜査を行う」と述べていた。小杉容疑者の捜査をめぐっては、警察庁に捜査経緯を報告していなかったとして、当時の警視庁公安部長が更迭され、井上幸彦警視総監も引責辞任に追い込まれた。この日、逮捕にこぎつけた警視庁幹部は「きちんと証拠収集が出来たのは最近になってから」と説明する。

 しかし、小杉容疑者は、自らの狙撃は「供述を引っ込めた」といい、支援役の立場とみられている。警視庁は小杉容疑者の供述に基づいて、事件を組み立てていくとみられるが、現段階では狙撃役は分かっていない。

 今回の強制捜査について、検察側は「殺人未遂容疑で公判を維持するには、『撃った』ということを立証しなければいけない。未だ起訴できると断言できる証拠はない」と慎重な姿勢を示しており、今後の捜査で狙撃の実行役の特定が不可欠になっている。(毎日新聞)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040707-00001004-mai-soci