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2004年07月02日(金) 00時00分

「食の安全」信頼回復へ履歴明示/明日へID番号などのラベルがはられたトマトが並ぶ野菜売り場=宇都宮市のイトーヨーカドー宇都宮店で朝日新聞・

 「顔が見える野菜。」。宇都宮市宿郷3丁目のイトーヨーカドー宇都宮店の青果売り場には、そんなブランド名の野菜が並ぶ。袋のシールには10ケタのID番号があり、専用ホームページで入力すると、生産者の写真や人となり、栽培へのこだわりなどが表示される仕組みだ。

 6歳の娘がいる同市宿郷2丁目の主婦(33)は「農薬や発色剤を使っていない物を食べさせたいので、栽培方法が分かると安心」と話す。

 食品の履歴を明らかにするこうした仕組みは「トレーサビリティー(履歴管理)」と呼ばれ、県内でも大手スーパーなどで導入が進む。同店食品統括マネジャーの高見建一郎さん(49)は「顔が見えるようにすることで、生産者に食品の安全性に責任を持ってもらっています」と説明した。

 ●「無登録」の衝撃

 牛海綿状脳症(BSE)、産地偽装、無認可添加物……。食の安全を揺るがす事件が全国で相次ぐなか=表=、県内にも02年夏、山形県から広がった無登録農薬問題が飛び火した。

 「無登録とは分かっていたが、よく効くイメージがある農薬で、安かったから……」。那須野農協(黒磯市)管内のナシ農家が、発がん性が指摘され、登録抹消となった農薬「ダイホルタン」の使用を認めたのは8月下旬。出荷がピークを迎える直前だった。

 農協は出荷済み「幸水」40トン余りを回収して焼却し、抜き取り調査を実施。ほかのナシ農家約60戸から「不使用」の誓約書を取り付け、翌日「安全宣言」を出した。

 しかし、取引中止が相次ぎ、価格も半値近くまで暴落。出荷が「豊水」に替わるまで低迷が続いた。生産量日本一を誇るイチゴの苗にも各地で散布されていたことが分かった。

 「無登録農薬を使うのは論外だけど、自分も消費者を全然意識していなかったことに気付いた」。農協梨部会長の農業鈴木一男さん(54)はそう振り返りながら、自宅居間の引き出しからA3判の1枚の紙を取り出した。農薬名、散布日、薄めた倍率など農薬の散布状況を記した細かい手書き文字がびっちりと並ぶ。問題が表面化した後、生産履歴の記帳徹底を部会で申し合わせた。

 履歴は農協が管理して、取引先や消費者に見せている。いずれはトレーサビリティーのシステムに対応させる考えだ。消費者を農園に案内し、農薬使用の状況を説明する交流会も開いた。

 「次に問題が起きたら産地全体が撤退を迫られる。2度目はないんです」。農協営農部の吉田和弘係長(41)は険しい表情で話した。

 ●「消費者」に軸足

 相次ぐ食の不祥事に、政府は03年7月、「縦割り行政」への批判も強まり、「食品安全委員会」を内閣府に設置。食品行政を生産者保護と業者指導から「国民の健康保護」に大きく転換させた。県も今年6月、知事を本部長とする「県食品安全推進本部」を設置した。近く生産者と消費者を交えた懇話会を開き、消費者の意見を生産や流通の現場に反映させる試みも始める。

 宇都宮市消費者友の会は2日、8月21、22日に市内で開く消費者展の初会合を開いた。市内約200人の消費者に食に関するアンケートをする計画だ。

 会長の葭葉(よし・ば)リウさん(82)は「不景気で業者や生産者の目は安全より価格に戻りがちに見える。行政の動きも遅過ぎる」と言う。

 今後も勉強会を開き、消費者の目から「安全」を監視していくつもりだ。(村山祐介、霜田紗苗)
(7/2)

http://mytown.asahi.com/tochigi/news01.asp?kiji=4207