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2004年06月24日(木) 00時00分

確かなあした 「授業料 長期分は慎重に」 学習塾の倒産で前払い金戻らず 東京新聞

 愛知県の主婦(37)は昨年二月、学習塾を運営する新日本教育(名古屋市)と契約した。小学五年生の長男が週四日、四教科の個別指導を受ける内容で入塾金やテキスト代、同三月から今年二月まで一年分の授業料など計百五十五万円を払った。

 主婦は、かなり高額だと思ったものの、担当者に「未消化の授業料は国の機関に預けてあり、保護されるので倒産しても大丈夫」と言われて安心していた。

 期待に反して長男の成績が下がり始めたため、昨年十二月、解約を申し込んだ。会社側は、前払い金から中途解約料などを引き、約二カ月分の授業料二十万四千円を返すという。だが、なかなか振り込まれない。四月下旬、同社の代理人弁護士から「経営不振のため業務を廃止し、破産手続きに入る」という手紙が届いた。

 新日本教育の学習塾事業は、この主婦の長男が通い始めた直後の昨年五月、同社の元役員が設立したA社が塾と生徒ごと引き継ぎ、運営を続けている。このため、経営破たん後も、生徒はこれまで通り授業を受けられる。

 だが、A社によると、A社は前払いの授業料は引き継いでいないので、新日本教育と契約した生徒が解約した場合、返金義務は新日本教育が負うという。この主婦は同社から前払い金が保護されるとの説明を受けたというが、代理人弁護士の事務所は「保護していた事実はない」と説明。この主婦は一般の債権者と同じように、破産の手続きで財産の分配を待つ必要がある。

 学習塾は、長期にわたるサービスを前払いで契約する場合、特定商取引法(特商法)で「特定継続的役務」の規制対象となり、消費者を保護するための規制=メモ=を受ける。

 だが、業者が倒産すると、前払い金を取り戻すのは難しい。こうした場合に備え、前払い金を業者の資産と分けて管理、保護する「保全措置」を業者に義務づけるのが望ましい。規制対象にする際、保全措置の導入が国会で議論されたが、「規制緩和と逆行する」などの理由で見送られた。

 代わりに、消費者が経営状況を判断できるよう業者の財務書類を閲覧したり、写しを請求したりできる権利が同法に盛り込まれた。しかし、一般の消費者が、塾との契約の際に権利を行使して財務内容を調べる、というのは非現実的だ。

 全国約八百の学習塾が加盟する社団法人全国学習塾協会は、自主基準で五万円を超える前払い金を徴収する場合は、その保全措置の有無を契約書に明記する−と特商法より一歩踏み込んだルールを設けている。

 同協会副会長の伊藤政倫さんは「保全措置は実務的に難しく、実際に保全をしている協会加盟業者は二社程度。保全をしていないなら、事前にきちんと消費者に伝えることが大事」と説明する。

 日本消費者連盟事務局の古賀真子さんは「前払いは、消費者の負担が重く、拘束力が強い。業者が倒産した場合は何ともしようがない。月謝などできるだけ短い単位で支払っていく方がよい」と指摘している。

■少子化で厳しい経営

 民間信用調査会社によると、新日本教育は学習塾のほか家庭教師の派遣や教材販売も手がけ、一時は名古屋のほか関東や長野県にも展開。1996年には約12億8000万円を売り上げたが、最近は大手学習塾との競合で生徒数が伸び悩んでいた。代理人弁護士によると、今月14日に名古屋地裁に自己破産を申請した。

 少子化で学習塾の経営環境は厳しさを増しており、市場は長期的には縮小傾向にある。ただ、矢野経済研究所(東京)の推計では、2002年度の市場規模は前年度比3%増の9920億円となり、01、02年と2年連続で拡大した。

 これは、02年4月から改訂学習指導要領で完全週5日制や学習内容の3割削減が実施されたことへの不安から、一時的な「補習特需」が生まれたのが理由で、特に個別指導が人気という。だが、03年からは市場規模は横ばいから下降気味と予想。さらに競争の激化で授業料単価が下がり、収益を減らす業者が相次いでいるという。

■一定額支払えば中途解約できる

 契約後八日間以内なら無条件で解約できる。さらに学習塾の場合、それ以降でもサービス開始前なら一万一千円、開始後は既に受けたサービスの費用に加え、一カ月分の費用か二万円の低い方の額を払えば中途解約できる。つまり、前払い金から、それらの額を引いた残額が返ってくる。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20040624/ftu_____kur_____000.shtml