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2004年06月08日(火) 00時00分

暮らしにジワリ 原油高騰の影 東京新聞

 ガソリン代、電気料金、国際航空運賃…。原油価格高騰の影響が、「値上がり」という形で国民生活を侵食し始めている。石油輸出国機構(OPEC)が臨時総会で決めた原油生産枠引き上げも、「効果は限定的」との見方が強い。景気の腰折れ要因になりそうな“原油ショック”の深刻度を診断してみると−。 (経済部・鈴木宏征)

■ガソリン、航空運賃に“転嫁”

 東京都足立区に住む個人タクシーの運転手(63)は怒る。「安売り競争は終わった。ガソリンがわずか一カ月で十円も上がった。ひどすぎる」。いつも使うガソリンスタンド(GS)で、五月初めに一リットル=百十三円だったハイオクガソリンが、「今は百二十三円になった」と嘆く。

 ある石油元売り業者は、「一カ月で十円も上がった例はまれだろう」と言いながら「赤字覚悟の安売りが減り、ガソリン卸値の上昇分をきちんと転嫁するGSが増えてきたのは確か」と指摘する。

 原油高騰で、石油元売り各社は、六月出荷分のガソリン卸値を一リットル当たり三・七−四円アップした。この直後、首都圏の各GSは、一斉に店頭価格を同二−六円と大幅に引き上げた。

 一九九六年のガソリン輸入自由化後の安売り戦争激化で、GSが得る利幅(マージン)は、採算ベースとされる一リットル当たり十円を割り込むケースも多い。卸値アップを上回る店頭価格の引き上げも「以前かぶっていた分を取り戻しただけ」(都内のGS店長)という理屈もある。だが、消費者の立場からは「便乗値上げでは」という疑念が晴れない。

 原油高騰の影響は広がる一方だ。燃料価格アップを理由に、日本航空システム(JAL)や全日本空輸(ANA)などは、七月搭乗分から国際線の旅客運賃を平均5%値上げする。

 石油化学製品の基礎原料であるナフサ(粗製ガソリン)価格上昇を受け、石化メーカーは今年に入って二回目という異例の値上げを取引先に要請した。包装フィルムなどに使われるポリエチレン、自動車の内装や家電に使うポリプロピレンなど、影響分野は幅広い。

 電力料金への跳ね返りの恐れもある。東京電力の場合、原油が一バレル当たり一ドル上がると、火力発電の燃料費が二〇〇四年度通期で二百二十億円膨らむと見込む。燃料費調整制度により、四−六月のコスト増は十−十二月の電気料金に上乗せされる仕組みだ。

■40ドル水準続けばGDP押し下げも

 日本エネルギー経済研究所の小山堅・総合エネルギー動向分析室長は「今の原油高は中東不安、米国のガソリン需給逼迫(ひっぱく)、先物市場への投資資金流入など複合的な要因で起きている。だから、OPECの増産だけで解決するのは難しい」とみる。さらに「当面、一バレル=四〇ドルを中心に上下三ドルぐらいで推移するだろう」と高止まりを予測する。

 原油高が長引くにつれ、民間シンクタンクの試算も深刻さを増す。

 一バレル=四〇ドルの水準が続いた場合の影響として、第一生命経済研究所は「製造業全体の〇四年の増益分がほぼ吹き飛ぶ」と予測。電力中央研究所主任研究員の林田元就氏は「個人消費の落ち込みなどで、実質国内総生産(GDP)を〇四年は0・2%、〇五年は0・5%押し下げる」とみる。

 ニッセイ基礎研究所シニアエコノミストの矢嶋康次氏は「まだ消費力が弱い。原油高によって物価が急激に上がると、上向きつつある消費意欲が一気にしぼんでしまう」と危ぐしている。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20040608/mng_____kakushin000.shtml