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2004年05月31日(月) 00時00分

司法ネット “法”を市民の身近に 東京新聞

 弁護士ら法律専門家のネットワークを全国に張りめぐらす計画が動きだす。社会の隅々を法の光が照らし、さまざまな問題が透明で公正に解決されるよう、市民の視点で制度を組み上げてほしい。

 司法制度改革の一環として成立した「総合法律支援法」は、国民が法的紛争の解決に必要な司法的援助を身近で気軽に受けられるようにするのが目的である。中央に「日本司法支援センター」を設け、各地に窓口となる事務所を展開する。

 業務は(1)法律相談(2)被疑者、被告人の国選弁護(3)弁護士費用がなく民事訴訟を起こせない人を援助する法律扶助(4)弁護士過疎地対策(5)犯罪被害者支援−などである。事務所には弁護士が常駐するほか、必要に応じて非常勤の弁護士も対応する。二〇〇六年秋に業務開始予定だ。

 担当業務の多くは、現在、自治体や弁護士会などが独自に、あるいは協力して実施しているが、態勢も資金も不十分だ。国選弁護は被告人に関する制度しかなく、起訴前の捜査中は経済的余裕がなければ弁護士の援助を受けられない。

 センターの事業が軌道に乗れば、捜査段階から弁護士の助けを受け、不適切な取り調べを防いだり疑いを晴らせる可能性が高まる。法律相談や法律扶助の充実で「いつでも、どこでも、だれでも法律家の協力を得られる」社会に歩み出す。

 ただ、センターの業務範囲は現時点では必ずしも明確ではなく、今後の制度設計にかかっている。事業の成否は需要をきちんと把握できるかどうかにかかっている。消費者団体や労働団体、市民運動組織など広範な要望を集めなければならない。

 この点では、住民の意識、要望に通じているとみられる自治体当局の積極的参画を期待する。

 人材養成もカギだ。優れた弁護士を多数、養成するためロースクールが発足したが、経済的成功を目指す弁護士ばかりでは強者だけが法に守られる弱肉強食社会になる。

 刑事弁護、法律扶助が一部弁護士の奉仕に支えられている実情を打破できるよう、弱者に共感する法律家を、ロースクールは育ててほしい。弁護士会は、会員に社会的使命を自覚させ、センター運営を主体的に担うべきだ。

 財政基盤が重要なことは言うまでもない。業務範囲や試算の仕方にもよるが、当面必要なのは二、三百億円だろうか。毎年、会計検査などで発覚する巨額の無駄遣いを考えれば決して多くはない。日本社会にあまねく法の光を当てるための必要経費を惜しんではならない。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20040531/col_____sha_____002.shtml