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2004年05月31日(月) 23時06分

<ウィニー>開発者起訴 法廷でネット社会の著作権論争も毎日新聞

 違法コピーに使われたファイル交換ソフト開発の是非が、初めて法廷で争われる。「Winny(ウィニー)」を開発した東京大助手、金子勇被告(33)=31日、著作権法違反ほう助の罪で京都地裁に起訴=の事件は、さまざまな波紋を広げている。捜査当局は開発の「意図」を重視したが、開発者よりも違法コピーした利用者側の民事責任を問うのが主流の米国では、異例のことと受け止められている。日進月歩のデジタル技術と利用者の爆発的な拡大に、法整備はなかなか追いつかない。ネット社会の著作権保護のあり方が問われている。【沢木政輝、酒造唯】

 ◇ソフト技術者ら有志が支援組織

 「ネット上でデジタルコンテンツが取引されるのはやむを得ない。ビジネスチャンスととらえず、警察の取り締まりで既存の体制を維持しようとする企業の方が問題だ」

 「著作権の概念を変える必要がある」

 昨秋以降、京都府警の任意聴取に、金子被告は既存秩序を否定する刺激的な供述を繰り返していたという。捜査当局が重視したのはソフトの開発行為自体というよりも開発の意図だった。「被告自身、ウィニーを違法コピーにしか使っていなかった。著作権侵害の意図は明らか」。京都地検の高田明夫・次席検事は31日、こう話し、ソフトのやり取り数十万件のうち、適法なものは2%にすぎなかったと明かした。

 ウィニー開発の真意はどこにあったのか。経済産業省のプロジェクトで金子被告と面識がある竹内郁雄・電気通信大教授(計算機科学)に被告は「理想にあふれた研究者」と映った。そして「(被告は)コピーを自由にできる代わりに、正当な対価を自動的にコピー元に支払えるシステムの構築を夢見たのかもしれない」と推測する。既存秩序の先に、新たな秩序を思い描いていたのではないかというのだ。

 法廷で被告自ら真意を明かし、ネット社会の著作権を巡る論議に一石を投じるのか。弁護団は「ホームページに『違法ダウンロードをしないように』と注意書きをつけており、違法行為を広める意図はなかった」と著作権侵害の意図自体を争う姿勢だ。

 有志のソフト技術者らは「金子勇氏を支援する会」を設立し、ホームページで支援を呼びかけている。弁護団によると、1879件1507万円もの支援金(31日現在)が集まった。

 ◇弁護団「ほう助罪認定は乱暴」

 金子被告の開発行為は著作権法違反の手助けに当たるのか。利用者による違法コピーという犯罪を被告が予見できたか否かや、故意の有無などが争点となりそうだ。

 著作権法に詳しい小倉秀夫弁護士(東京弁護士会)は「(被告が)個々の利用者レベルの具体的な使用を明確に認識していたかが問題。不正使用を助長するかのような掲示板への一連の書き込みとは別次元の話で、それを元にした逮捕・起訴は解釈を広げ過ぎている。これでは150キロで走れる車を製造した会社は、速度違反に問われた運転手のほう助になる。産業界全体の商品開発にも波及しかねない問題を含んでいる」と指摘する。

 検察側は「著作権侵害ほう助の意思が開発者にあり、ウィニー自体もほう助するシステムだ」と立証に自信を見せる。弁護団は「(利用者と)意思の連絡がなく、ほう助罪を認定するのは乱暴」と全面的に争う方針だ。

 ◇急増するファイル交換ソフトの利用者

 自分のパソコンにある音楽、映像などをインターネットを通じて交換し合う「ファイル交換ソフト」の利用者は、ここ数年で急増している。

 コンピュータソフトウェア著作権協会と日本レコード協会によると、利用・経験者は昨年1月で185万人と、前年から40万人も増えた。特にウィニーは暗号化されたデータが管理者なしで自動転送されるため、利用者が特定されにくく人気を呼んだ。昨年1月には約22万5000人が使ったことがあると答えた。

 違法なファイル交換に対し、米国では民事上の解決が一般的だ。リサーチ会社「ガートナーG2」のアナリスト、マイク・マクガイア氏は「刑事事件としてソフト開発者を摘発するのは極めて異例だ」と指摘する。

 全米レコード工業会(RIAA)は99年、音楽ファイル交換サービス会社「ナップスター」を著作権法違反で提訴。サンフランシスコの連邦地裁は00年、業務停止の仮処分決定を出し、同社は閉鎖に追い込まれた。

 RIAAは、ナップスターとは違って利用者同士が直接やりとりするソフトの開発企業も提訴したが、ロサンゼルスの連邦地裁は昨年4月、「開発・配布だけでは違法と言えない」と、違法コピーした利用者とは線引きした。RIAAは昨秋以降、利用者個人の民事責任追及を本格化させている。【柴沼均、ワシントン河野俊史】(毎日新聞)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040601-00000115-mai-soci