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2004年05月31日(月) 01時33分

5月31日付・読売社説(1)読売新聞

 [司法ネット]「円滑な運用へ法曹界が負う責務」

 「総合法律支援法」が成立し「司法ネット」が、二〇〇六年度中にスタートする。

 国民が法律絡みの紛争や問題に直面した場合、全国どこでも情報や支援が受けられるという司法のネットワークだ。

 各都道府県の地裁所在地など五十か所や弁護士のいない“司法過疎地域”に、国の予算で、総合的な法律サービスの拠点を整備することになっている。

 ネットを運営するのは新設される「日本司法支援センター」だ。法務大臣が最高裁の意見を踏まえて監督する、独立行政法人に準ずる機関である。

 消費者金融問題などをはじめ、法律絡みの紛争が急増している。だが、国民が利用できる法律相談の体制は十分整っていない。弁護士会や自治体などに相談窓口があるが、対応もバラバラだ。

 「司法ネット」が、全国で機能するようになれば、半世紀ぶりの司法改革が目指す「身近な司法」の実現への重要な一歩となる。その意義は極めて大きい。

 しかし、その前に、克服すべき多くの課題がある。

 司法改革が遅々として進まなかったのは、法務省・検察、裁判所、日本弁護士連合会の法曹三者が、それぞれ、狭い身内意識にとらわれてきたからだ。

 とくに、刑事裁判の場で対峙(たいじ)する検察と日弁連の間の相互不信、対立は今も根強い。法曹三者が、一致協力しない限り「司法ネット」は画餅(がべい)になる。

 全国の法律拠点の主な業務は、三つある。各種法律相談とともに、国の費用で資力の乏しい人を支援する「民事法律扶助事業」、それに被疑者、被告の国選弁護士を指名する「公的弁護」だ。

 国選弁護士をつけられるのは、これまで起訴後の被告だけだった。総合法律支援法で、起訴前の被疑者にもつけられるようになる。

 従来、刑事専従の弁護士が少なく、刑事弁護体制は手薄だった。国選弁護士の拡充で、体制を強化し、被疑者の人権により配慮する。充実した弁護体制は、国民が刑事裁判に参加する裁判員制度を成り立たせるためにも必要だ。

 公的弁護の運用の仕方で懸念されるのは、日弁連と法務・検察の対立だ。捜査と裁判が直接絡む問題だからだ。

 日弁連と法務・検察は一致協力しなければならない。裁判所は積極的なリード役を果たすべきだ。

 法の成立にあたり、「国は十全の財政措置を講ずる」との付帯決議がつけられた。「司法ネット」のグランドデザインは出来た。その実現は、法曹界全体の司法改革に臨む意思にかかっている。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20040530ig90.htm