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2004年05月22日(土) 00時00分

裁判員制度 “主役交代”を明確に 東京新聞

 日本人がお上任せ、専門家頼りの意識から脱却し、国を自ら動かすようになる。こんな期待もかかる裁判員制度を成功させるには、主役交代目指して制度の細部を設計し運用しなければならない。

 殺人など重大な刑事裁判に法律の素人が関与する裁判員制度の法律が成立し、日本でも約六十年ぶりに司法への国民参加が復活する。

 制度を定着させるには、主役となる国民の理解が不可欠だ。「裁判は専門家のもの」という先入観を取り除き、国民参加の意義を理解してもらうために関係者は全力を挙げるべきだ。

 旧陪審制度の開始時(一九二八年)は憲法上、司法権も握っていた天皇が広報に協力した。今回、最高裁長官が先頭に立つのは当然だ。

 実施までの五年間にさらに制度を磨きあげたい。特に、裁判員経験者の守秘義務は法案修正である程度緩和され、「義務の範囲を明確に」という付帯決議もされたが、明確化だけでなく狭くすることが大事だ。国民が制度に親しめるよう、経験者ができるだけ多くの情報を開示することが望ましいからである。

 専門家の意識改革、研鑽(けんさん)、新たな能力習得も求められる。裁判官は裁判員が自由に議論できる雰囲気づくりが仕事と心得て、これまでより一歩下がった姿勢で審理に臨まなければならない。裁判官が審理を先導すると制度の意義が失われる。

 立証活動の合理化も必須だ。微に入り細をうがつような立証で、何年もかかる裁判では、仕事を休んで参加する裁判員が対応できない。起訴を核心的事実に絞り込み、説得力のある直接証拠だけで勝負するよう努めなければならない。

 そのためにも、被疑者の取り調べの透明化が不可欠だ。録音、録画などで自白の任意性、信用性をめぐる法廷での水掛け論をなくしたい。

 裁判官、検察官、弁護士など法律家は自己に対する全面的見直しを迫られる。例えば、従来は法律家仲間だけに通じる言語、文章、会話術でよかったが、今後は法律の素人に理解してもらわなければならない。そうした能力の優劣が被告の運命を左右することを肝に銘じてほしい。

 小さな子のいる裁判員のための託児所、身体に障害がある人のための施設や介助要員、多忙な人でも参加できるような開廷時間の工夫など、市民が参加しやすい支援体制、制度づくりにも知恵を絞りたい。

 司法改革は日本を変える大きなきっかけになる可能性がある。その改革に“命”を吹き込むには古い司法に未練を残してはならない。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20040522/col_____sha_____002.shtml