悪のニュース記事

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2004年05月21日(金) 01時46分

5月21日付・編集手帳読売新聞

 中身がからの時は傾き、水をほどよく入れるとまっすぐに立つ。あふれるほど満たせば、また傾く。古代中国、魯(ろ)の国を治めた桓公(かんこう)の朝廷には不思議な器があったという◆常に傍らに置いて桓公は、謙虚な心を忘れぬ戒めにしたと古書は伝えている。権力者が身辺に置いて自らの戒めとする道具を「宥坐(ゆうざ)の器」という◆仕える主人に慎みのあるふるまいを促し、時に応じて耳の痛い進言をするのは、生ける「宥坐の器」——側近の役目であろう。側近が権力の用い方に慎みを忘れ、おごり高ぶっていては話にならない◆日本テレビによれば、北朝鮮へのコメ支援を巡る報道に抗議し、飯島勲・首相秘書官が平壌同行取材の拒否を通告してきたという。通告は細田官房長官が撤回したが、飯島氏は「取材源を明かせば許可する」と恫喝(どうかつ)まがいの取引まで持ちかけたと報じられている◆細田長官は会見で「私なりの考えもあり、善処する」と述べ、小泉首相は記者団に「知らなかった」と語った。首相が知らず、官房長官の考えとも異なる「通告」は、誰が、どこで決めたものだろう◆「報道の自由」の根幹を力ずくで侵す行為が一秘書官の一存でなされたとすれば、官邸が患う傲慢(ごうまん)病、権力病は重症というほかはない。政権の誕生から三年余り、「宥坐の器」にも修繕が必要なようである。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20040520ig15.htm