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2004年05月20日(木) 00時00分

自衛隊の多重債務救済マニュアル 専門家から高い評価 東京新聞

 防衛庁が自衛隊員向けに今年三月に作った多重債務の対策マニュアルが、多重債務者の救済活動に取り組む弁護士や司法書士、市民団体から「救済に役立つ」と高く評価されている。高利の借金を重ねて多重債務に陥る人は、公務員にも広がっており、専門家からは「民間企業や他の官庁でも同様な取り組みをすべきだ」という声が出ている。 (白井 康彦)

■うつ病、自殺…心情に気配り

 「非常によく練られた内容。多重債務が原因のうつ病に対する配慮も行き届いており、隊員に対する愛情が感じられる」と話すのは栃木県の伊沢正之弁護士。

 多重債務者救済の専門家らによると、自衛隊の基地がある地域では、多重債務の相談機関に隊員からの相談がしばしば寄せられる。訓練に明け暮れる隊員たちはストレスを抱え、多重債務者になった場合も組織内では相談しにくい傾向があるようだという。

 こうした状況の打開策がマニュアル。「借財を持つ隊員への接し方(指導の参考)」と題名が付いている。

 「小隊長等身上把握を担当されている方々の隊員指導の一助になれば、とまとめられた」と作成目的が記され、作成の背景が次のように説明されている。

 「自衛官の自殺事故は二〇〇三年度は借財に関連するものが急激に増えた」「防衛庁は昨年七月に長官政務官を本部長とする自殺対策本部を設置した。その中で、借財と自殺事故との関連が取り上げられた」。つまり、多重債務が原因で自殺する隊員が増えて防衛庁が対策に迫られたのだ。

■構造的な問題も指摘

 市民団体が評価するポイントの一つは、多重債務に陥る原因を隊員の落ち度だけに求めるのではなく、構造的な問題ととらえていること。マニュアルには「消費者金融のマスメディアによる宣伝効果もあり、比較的軽い気持ちで借財を始め、気がつくと借財から逃げ出せない状況となっていることも少なくない」と解説がある。

 その上で「若い隊員の服務指導の際には、どのように借財地獄へと追い込まれるか具体的事例を挙げながら周知させ、借財に対する危機意識を付与することは極めて重要」と説明。カードローンで少額の借り入れや返済を繰り返して自転車操業に入った具体的事例も紹介している。

 ポイントの二つ目は、多重債務者の追いつめられた心情への心配りだ。

 まず、多重債務を抱えていることを当事者が隠そうとする傾向を指摘。「借財の兆候のある者の洗い出しを強化したために、かえって発覚を恐れ自殺するケースもある」と注意を促している。多重債務者だと分かった場合についても「基本的にはさりげないアプローチが必要」と繰り返し強調している。

 うつ状態になりがちなのは、返済に苦しむ多重債務者全般の傾向だ。マニュアルは特にこの問題を重視。うつ病にかかりやすい性格や、うつ病の症状をしっかりと説明して「多重債務に陥った隊員にうつ病の症状があれば、ちゅうちょすることなくカウンセラーや医官に相談するとよい」と教えている。

 多重債務の処理方法の記載についても「おおむね妥当」(「高松あすなろの会」事務局長の鍋谷健一さん)と評価されている。具体的には▽低利の共済組合ローンへの借り換え▽任意整理▽調停▽個人再生手続き▽自己破産−の解説がある。また「別紙」には、各地の弁護士会や司法書士会など相談機関の名称や電話番号も掲載している。

■日弁連 民放や業界に意見書

 日本弁護士連合会は、消費者金融のテレビCMをただちに中止することを求める意見書を、日本民間放送連盟(民放連)と日本広告業協会、全国貸金業協会連合会、東京の民放五社に送った。

 意見書は、破産予備軍の多重債務者が百五十万−二百万人もいる、などと多重債務者問題の深刻さを指摘。消費者金融業界の貸出残高が急激に伸びたことが問題の原因とし「消費者金融のテレビCMの氾濫(はんらん)が残高の増加に直結している」としている。

 また、消費者金融各社が貸出金利を利息制限法の上限金利(融資額により年15−20%)を上回って、出資法上限金利(年29・2%)以下のいわゆるグレーゾーンに設定していることについて「ほとんどの業者が、法律の規定を順守していない以上、CMを流し続けるのは民放連基準に反する」とした。さまざまな広告の中で、テレビCMが受け手に対して最も影響が大きいことも理由に挙げている。

 消費者金融各社と民放各社は、昨年十月から午後五時−同九時の時間帯のCM放送を自粛するなど、自主規制の動きが出てきている。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20040520/ftu_____kur_____001.shtml