悪のニュース記事

悪のニュース記事では、消費者問題、宗教問題、ネット事件に関する記事を収集しています。関連するニュースを見つけた方は、登録してください。

また、記事に対するコメントや追加情報を投稿することが出来ます。

記事登録
2004年05月10日(月) 23時13分

どこまで問えるソフト開発者の責任 ウィニー逮捕の波紋朝日新聞

 ファイル交換ソフトを「開発」したというだけで、法的責任を問えるのか。京都府警が10日、「Winny(ウィニー)」の開発を著作権法違反の幇助(ほうじょ)容疑で逮捕したことが、波紋を広げている。インターネットを介して、気軽に音楽や映像ファイルを取り込める便利なプログラムで、違法コピーの温床ともされてきた。だが、米国ではソフト開発者ではなく、利用者の責任を問うのが主流になりつつある。

 「切れ味のいい包丁を作ったからといって、包丁が悪用された場合、包丁を作った人まで悪いというのはおかしい」。多数のネットワークシステムを開発してきた40代のプログラマーは、今回の逮捕をこう憤る。電子ネットワークは情報の流通手段。それを経由して生じた問題は末端の利用者同士の「自己責任」で解決すべきだ、という。

 ソフトウエア開発大手の広報担当者も、今後のソフト開発全体に与える影響を心配する。「技術者個人は純粋な気持ちで新しいソフトをつくっても、使われ方は予測できないこともある」

 今後の捜査の焦点は、「開発者がウィニーが違法に利用されることをどれだけ認識していたか」になりそうだ。

 京都府警は昨年11月、ウィニーを使った著作権法違反事件を摘発。開発者の東大大学院助手の金子勇容疑者(33)を割り出し、自宅を捜索したほか、任意で調べた。その中で、金子容疑者がウィニーによる著作権侵害が広がっていることを知りながら、236回のバージョンアップを繰り返したことを踏まえ、府警は「違法性の認識はあった」と判断したという。

 だが、デジタル著作権問題に詳しい弁護士は、「ウィニーを裁くのではなく、音楽CDやゲームソフトのメーカー側が、ソフトをコピーされないような技術を導入して対応すべき問題だろう」と指摘し、今回の摘発に首をかしげる。

 社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会は「著作権の権利侵害を防ぐのは難しく、ソフトを利用する人たちに著作権を守る意識を持ってほしい」と求めている。

○匿名性高く悪用も

 インターネットを介して不特定多数の人が映像ファイルなどを交換できるソフトは、米ナップスター社による音楽ファイルの交換サービスで大きな注目を集めた。

 同社のコンピューター(サーバー)は、利用者がそれぞれ持っている曲をリストにして管理。リスト中に欲しい曲を見つけた他の利用者が求めると、曲の所有者のコンピューターから曲のデータ(ファイル)を受け取れる。

 一方ウィニーでは管理サーバーがなく、ファイル検索は利用者間で直接行うため、曲などの提供者や取得者の匿名性が高まり、違法コピーのソフトの交換やウイルスの流布といった悪用も目立つようになった。

 ネット起業家として知られる伊藤穣一さんは「コンピューターを利用して曲や映像をつくるアマチュア制作者が増えている。作品をできるだけ多くの人に見せたい側からすれば、こうした技術は有効。技術は良いことにも悪いことにも使える」と言う。

 摘発後の10日夜もインターネット上には、ウィニーを入手できるホームページが多数あった。データ量の小さなプログラムなので、瞬時に自分のパソコンに取り込める。

 起動した画面で、テレビドラマのタイトルなどを指定してやると、いろんな人が持っている該当のドラマのファイル名の一覧が表示され、選択すればコピーできる。

 そのたび検索しなくても、キーワードを指定して自動的にコピーされるようにも設定できるので、留守中や夜間でも欲しいものが手に入る。見逃したドラマ、新しい曲やゲーム、映画などの取得が多いという。

○米では個人を大量提訴

 インターネット上で、人気曲などが無料でファイル交換されている問題について、米国ではファイルを交換している個人を、業界団体の全米レコード協会(RIAA)などが、著作権違反で民事提訴するケースが多い。

 米国でも、以前はファイル交換ソフトを開発した会社を訴えることは多かった。代表的なのは、ファイル交換ソフトを活用して99年に創業した米ナップスターに対し、CD販売への打撃に危機感を募らせた音楽業界が著作権法違反だとして提訴したことだ。

 裁判所が01年に、交換差し止めの判決を出し、ナップスターはサービス停止に追い込まれた。

 だが、03年4月、ファイル交換ソフト会社グロクスターなどについて米裁判所が、「ビデオデッキやコピー機を販売する会社と大きくは変わらない」として、米レコード・映画業界の訴えを退ける判断を下して、潮目が変わった。

 背景には、ナップスターが同社のサーバーの手助けによって利用者がファイルを交換できる仕組みだったのに対し、それ以降の「グヌーテラ」などの交換ソフトは、サーバーを仲介しないため、会社の責任を問うのが難しくなったことがある。

 こうした流れの中でRIAAは、03年秋から、ファイルの提供を行っている個人に対する大量提訴を開始した。これまでに2400人以上の個人を提訴している。(05/10 22:57)

http://www.asahi.com/national/update/0510/032.html