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2004年05月02日(日) 01時22分

5月2日付・読売社説(1)読売新聞

 [BSE]「全頭検査を見直す食品安全委」

 内閣府の食品安全委員会が、BSE(牛海綿状脳症=狂牛病)対策として実施中の「全頭検査」見直しに着手した。

 二〇〇一年九月に、国内初のBSE発症が引き起こした危機的な牛肉離れを抑えるため、翌月から厚生労働省が始めたのが全頭検査だ。BSEの国内感染阻止に失敗した農水省の失政に対する反動もあり、異例の厳しい措置が取られた。

 出荷されるすべての牛について、感染の有無を調べ、これまで十一頭の感染牛を見つけ出す成果もあげた。

 だが、検査開始から二年半が過ぎ、国内外から基準の緩和を求める声が高まってきた。BSEの先進国とも言うべき欧州連合(EU)では検査対象を原則、生後三十か月以上の牛に限っている。全頭を検査するのは世界中で日本だけだ。

 消費者の反応を考慮する必要もあろうが、日本も検査対象を一定年齢以上とする国際水準にそろえる方向で、検討すべき時である。

 科学的な見地からも、食品安全委の委員の間では、全頭検査は不要との意見が多い。ほかのBSE専門家も基準見直しを支持している。

 日本のBSE検査は、牛の延髄を取り出し、原因となる異常プリオンの有無を調べるもので、年間に処理される約百二十万頭すべてが対象だ。

 これに対し、年間三千五百万頭を出荷する米国では、足がふらつくなどの症状が見られる牛を中心に、四十六万頭だけを検査する。一方で独、仏などは、対象を生後二十四か月以上と、EU基準より厳しくしている。

 異常プリオンが検出可能になるのは二十四か月以上の牛とされる。それ以下の年齢の牛を調べても、感染を確認できないというのが国際的な認識だ。独、仏はそれに沿った対応をしている。

 各国がBSE対策として、より重視するのは危険部位の除去だ。異常プリオンが蓄積する脳や脊髄(せきずい)などを取り除けば、ほかの肉や内臓は安全だからだ。

 日本は、危険部位についてもすべての牛から除去している。これを徹底すれば検査は不要とする専門家もいる。

 日本は現在、米国でBSEが発症したことを理由に、米国産牛肉の輸入を禁止している。解禁の条件は、全頭検査かそれと同等の措置だ。米国が反発し協議が続いているが、日本の検査基準が緩和されれば、交渉の打開につながろう。

 ただ、食べ物の安全基準を貿易問題に絡めて決定すべきではない。国内の基準を食品安全委が独自に決め、それをもとに輸入解禁の条件を詰めるのが筋だ。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20040501ig90.htm